パロキセチン塩酸塩水和物(パキシルCR)の効能・作用・副作用

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パロキセチン塩酸塩水和物(パキシルCR)についての基本情報

パロキセチン塩酸塩水和物の効能・作用……効能は『うつ病・うつ状態・パニック障害・強迫性障害・社交不安障害(対人恐怖症)・摂食障害・月経前症候群』です。世界的に多く処方されている『SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)』で、抗うつ効果が強いだけではなくセロトニン系神経の異常が関係する幅広い精神疾患にも効果が認められている。

例えば、パロキセチンはパニック障害や強迫性障害、摂食障害、社交不安障害(対人恐怖症)などにも処方することが可能であり(ただし徐放剤であるパキシルCRの場合には、保険診療の上ではうつ病以外の精神疾患は適応外とされている)、うつ病治療薬として以外の用途も幅広いのである。SSRIは三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬の後に開発された『第三世代の抗うつ薬』で、うつ病の薬物療法における中心的な存在として認識されることも多い。

脳内で選択的にセロトニン受容体と結合して再取り込みを阻害することで、気分・感情の安定や意欲の増加と関係する脳内のセロトニン濃度を高めてくれる。結果として、『抑うつ感・不安感・気分の落ち込み・焦燥感・億劫感・無気力』などのうつ病の諸症状を改善する効果が期待できるのである。

パロキセチン(パキシル)のCR錠というのは“controlled-release(放出抑制型)”という意味であり、薬物の溶解・放出の速度が緩徐なものに制御されているので、速効性はないが効果は同等で副作用が弱くなるというメリットがある。一般的なパキシルの速放錠では最高血中濃度到達時間が“約5時間”であるが、パキシルCR錠は“約8~10時間”と緩やかである。最高血中濃度そのものも速放錠の約3分の2に抑えられており、血中濃度の日周変動も少なくなっているので、SSRIに特有の吐き気や悪心、不安感、賦活症候群などの副作用も出にくい。

パキシルは、日本国内で2番目に承認された選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)で、処方されているうつ病患者の症例も非常に多い薬剤である。高用量で服用すると、セロトニン以外にもノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の再取り込み阻害も発揮するので、うつ病に見られる『意欲の減退・無気力・興味と喜びの喪失・抑うつ感』などの症状に対して効果を期待できる面がある。

パキシルは元々、選択的にセロトニン受容体だけを阻害する特性があるので、複数の神経伝達物質の再取り込みを阻害する従来の抗うつ薬と比較すれば、『口渇・便秘・排尿困難・手の振るえ・心毒性』などの抗コリンの副作用が弱めになっているが、このパキシルCR錠では溶解と吸収が緩やかにコントロールされているので更にそれらの副作用が軽減されるメリットがある。

パロキセチンはSSRIの中では最強のセロトニンの再取り込み阻害作用があるので、急な服用中止や自己判断の減薬をすると、『憂鬱感・不安感・焦燥感・衝動性・悪心』などの精神症状が悪化する『SSRI離脱症候群』という副作用が出やすい。そのため、パロキセチンの服用をやめる際には、医師の指示に従って段階的に減薬・中止を注意深く進めていく必要がある(1~2週間ごとに10mg程度ずつ減薬するなど)。

パロキセチンの抗うつ作用は、三環系抗うつ薬とほぼ同等とされるが、抗ヒスタミン作用や抗アドレナリン作用が弱いので、自殺企図で大量服用(オーバードーズ)をしても致死的な作用は得られにくい。しかし、18歳未満のうつ病患者がパロキセチンを服用すると、有意に自殺リスクや攻撃衝動のリスクが高まるという報告もある。

一般的に、脳内におけるノルアドレナリンの増加は『意欲・気力・行動力』を高めて、セロトニンの増加は『抑うつ感・不安感・焦燥感・緊張感』を緩和してマイルドな精神状態を作る効果があると考えられている。

脳内にあるセロトニン(5-HT)の受容体の再取り込みを阻害することで、『抑うつ感(憂鬱感)・意欲減退・興味と喜びの喪失・集中力や思考力の低下・億劫感・無気力・焦燥感・絶望感・悲観』といったうつ病の様々な精神症状を緩和する効果を発現します。

パロキセチンを巡っては、うつ病を『心の風邪』というキャッチフレーズで表現して、抗うつ薬の販売量を急激に増加させようとしたグラクソ・スミスクライン社のマーケティングや臨床研究データの隠蔽などが問題になったこともある。

2008年には、WHO(世界保健機関)とその関連機関が、訴訟の制裁措置によって公開されたパロキセチンに関する未公表の試験データを参照して40回(計3704人)からなる二重盲検比較臨床試験を解析して、パロキセチンの抗うつ薬としての真の効果は効果全体の約17%であると結論づけた。うつ病改善効果の残りの部分は偽薬効果(プラセボ効果)と自然な病状の経過によって説明されたが、他の抗うつ薬もパロキセチンと同じく『本来の薬の効果以外の要因』のほうが大きくなっている。

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パロキセチンの商品名……パキシルCR(グラクソ・スミスクライン)

平均的な用法・用量……うつ病・抑うつ状態に対しては、1日1回夕食後に、25~50mgを服用。12.5mgから服用を開始して、1~2週間ごとに12.5mg/日ずつ増量することができる。通常は1回25mgの服用であるが、1日の用量の上限は50mgまでである。
なお、年齢、症状により適宜減量する。

副作用……口渇・便秘・排尿障害・動悸・頻脈などの末梢性抗コリン作用。眠気、めまい、吐き気・嘔吐、立ちくらみ、起立性低血圧、倦怠感、脱力感など。不安感、焦燥感、イライラ、衝動性などの精神症状の副作用が出ることもある。抗うつ薬は、他の抗精神薬との相互作用を起こしやすいので、医師に今飲んでいる薬についての情報を提示して指導を受けるようにして下さい。

重大な副作用(発症頻度は低い)……悪性症候群(Syndrome malin)、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、肝機能障害、重症の血液成分障害、重い不整脈、妄想・幻覚・けいれん、横紋筋融解症など。

注意・禁忌……『注意を要する人』は、緑内障、てんかん、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症の素因がある人、衝動性の精神症状を持つ人、出血性疾患、妊婦、高齢者、24歳以下の若者(特に10代以下の子供に対しては処方を控えるべきとされる)、希死念慮のある人など。
炭酸リチウム(リーマス等)やセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)、安定薬(ピーゼットシー,リスパダール等)、三環系抗うつ薬(トフラニール等)、アスピリン(バファリン)、ワルファリン(ワーファリン)など飲み合わせに注意が必要な薬がたくさんあるので、医師に服用中の薬を正確に伝えるようにして下さい。

『処方してはいけない禁忌』は、セロトニン症候群を発症する危険性があるので、パーキンソン病治療薬のセレギリン(エフピー)を服用している人は禁忌である。重い不整脈が起こるリスクがあるので、精神安定薬のピモジド(オーラップ)を服用している人も禁忌である。 乳がんの薬のタモキシフェン(ノルバデックス)の効果を低下させるリスクもある。

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