エムトリシタビン・フマル酸テノホビルジソプロキシルの効能・作用・副作用

エムトリシタビン・フマル酸テノホビルジソプロキシルについての基本情報

エムトリシタビン・フマル酸テノホビルジソプロキシルの効能・作用……効能は『HIV(エイズウイルス)の感染症』です。性交渉や血液接触によって感染するリスクがある『HIV(エイズウイルス)感染』に対して処方される薬です。HIVとは『ヒト免疫不全ウイルス』であり、人間の免疫系の細胞(白血球の一種CD4リンパ球)を破壊しながら段階的に増殖していく性質を持っており、免疫機能が大きく低下してあらゆる感染症にかかりやすくなった発症の状態を『エイズ(後天性免疫不全症候群)』といいます。HIVに感染したからといってすぐに発症する病気ではなく、キャリア患者で薬物治療(本剤を含めた多剤併用療法)をしない場合には数年~10数年の期間をかけて発症に至ります。

エムトリシタビン・フマル酸テノホビルジソプロキシルは『FTC(ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬)』に分類される薬剤ですが、抗ウイルス作用を増強するためにテノホビルジソプロキシル(TDF)とエムトリシタビン(FTC)を混ぜ合わせた配合剤になっています。

エイズウイルスの遺伝子RNAをDNAに逆転写する酵素の働きを阻害することでHIVの増殖を抑制します。ウイルスが減少すると免疫力が回復して、エイズの発症時期や病状の進行を遅らせることができますが、エイズウイルスの全てを完全に死滅させるほどの効果はないので、基本的には対症療法の位置づけになります。しかし、HIVの増殖抑制によって死ぬまでエイズが発症しない症例も増えており、実際的にはエイズの症状が出ない可能性が高いので、キャリア患者のQOLは大きく改善しています。HIVの根本治療(原因治療)ではないため、生涯にわたって抗ウイルス薬の服用を続ける必要性がありますので、その点では心理的・時間的に大変な部分はもちろんあります。

エイズ治療薬は単独使用ではなく必ず、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬やプロテアーゼ阻害薬と併用するようになっています。HIV感染の標準療法は、本剤を含む長期的な『多剤併用療法』になります。エイズ治療薬の中では副作用が少なくて服用しやすい薬であり、作用時間も長いので1日1回1カプセルの服用で済む利点があります。最近は『ツルバダ錠(TDF+FTC)』など一つの薬の中に複数の薬剤成分を詰め込んだ利便性の良い配合剤が多く処方されるようになっています。

エイズの治療では『逆転写酵素阻害薬(ヌクレオシド系と非ヌクレオシド系)・プロテアーゼ阻害薬』の中で系統の異なる3種類以上の薬を組み合わせる『多剤併用療法』が標準療法として実施されて予後も改善しています。本剤はB型肝炎ウイルスにも薬効が確認されており、B型肝炎を同時に発症している患者にも有効になっています。

エムトリシタビン・フマル酸テノホビルジソプロキシルの商品名……ツルバタ(日本たばこ‐鳥居)

平均的な用法・用量……1回1日(エムトリシタビンとして200mg及びフマル酸テノホビルジソプロキシルとして300mgを含有している)を、必ず他のHIV治療薬と併用するように処方する。

副作用……発疹、斑状丘疹性皮疹、紅斑、嘔吐、吐き気、めまい、下痢、頭痛、身体の痛み、睡眠障害、インフルエンザ様症候群、過敏症(発疹・かゆみ)、リポジストロフィー(手足が痩せて腹部が太る)など。精神神経系や心臓循環器系、筋骨格系、呼吸器系、皮膚科系、消化器系など各種の副作用が出るリスクはあります。

重大な副作用(発症頻度は低い)……乳酸アシドーシス(呼吸の苦しさ・手足の脱力感やだるさ・動悸・吐き気・腹痛や下痢・急激な体重減少・歩行困難・意識障害など)・腎障害・膵炎。

注意・禁忌……『注意を要する人』は、肝機能障害・腎機能障害がある人、妊婦・授乳婦など。薬の飲み合わせ(相互作用)にも、注意を要する薬剤や禁忌が多くあるので、服用中の薬については全て担当医に報告する必要があります。

『処方してはいけない禁忌』は、本剤で過敏症を起こしたことがある人。『薬の飲み合わせ・今飲んでいる薬』については医師・薬剤師に相談しなければならない。

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