抗精神病薬(メジャートランキライザー)の種類と説明

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抗精神病薬は、メジャートランキライザーとも呼ばれ、向精神薬全体の中でも最も強力な精神安定作用を持つ薬です。

抗精神病薬は、一般的に妄想や幻覚(幻視・幻聴)、作為体験(ある行動を取るように、幻聴により命令を受ける体験)、異常な運動興奮といった陽性症状のある『統合失調症(旧称・精神分裂病)』の薬物治療に用いられる薬で、『定型抗精神病薬』『非定型抗精神病薬』『持効性抗精神病薬』の3タイプに分けられます。

従来の定型抗精神病薬は、陽性症状には高い効果がありましたが、陰性症状(精神的な活力や意欲がなくなり、自閉して感情が平板になり、物事に対する興味関心や社交性を喪失する症状)には殆ど効果がありませんでした。それを補う形で非定型抗精神病薬が開発され、陰性症状に対する一定の効果が確認されているようです。持効性抗精神病薬は、その名称の通り、効果が長期間持続する抗精神病薬で、一回の注射で約2~4週間程度、効果が持続するとされています。

この薬剤の作用機序(メカニズム)は、統合失調症の過剰に興奮した脳内の神経活動を鎮静させる為に、異常な興奮の原因と見られる神経伝達物質ドーパミンのD2受容体を遮断する事にあります。このドーパミンの神経伝達過程を遮断することこそが、抗精神病薬の薬理作用の要諦であり、副作用を生み出す原因でもあるのです。

抗精神病薬は強力な薬ですから、種々の副作用が生じる可能性があります。

もっとも危険な副作用としては、大量の抗精神病薬の投与や静脈注射などによる『悪性症候群』があります。これは、原因不明の高い発熱・大量の発汗・唾液大量分泌・頻脈・全身の筋肉硬直などが起こり、時に死亡する事もあります。非常に重篤な結果を生む副作用ですが、発生率は、抗精神病薬服用者全体の0.07~0.4%とかなり低く、医師の指示に従って、適切な用法用量を守って服用すれば必要以上の心配は要らないと思われます。

代表的な副作用として、『錐体外路症状』という幾つかの症状から成り立つ副作用があります。

まず、薬理作用であるドーパミンの神経伝達過程の遮断によって、脳内の黒質線条体のドーパミン不足によって発症するパーキンソン病に似た『薬剤性パーキンソニズム』の症状が出ることがあります。手や足が震えたり、痙攣したりして自分の意志で止めることが出来ないといった副作用です。

他の錐体外路症状として、身体や足がむずむずしたりソワソワしたりして、落ち着いて静止する事が出来ないアカシジア(静座不能)、舌が自然に出たままになるジストニアや目が上を向いてしまう眼球上方運動の症状があります。

長期間の服用の際に発症する事のある『遅発性ジスキネジア』という副作用は、自らの意志とは無関係に口をモグモグと動かしたり、舌を動かしたりしてしまう状態の事です。頭や全身をフラフラと揺らすといった形で出てくる事もあります。

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女性の場合には、ドーパミンの神経伝達によって抑制されている母乳を出すホルモンであるプロラクチンの働きが活発になって、乳汁分泌が副作用として起こったり、生理不順が起こる事があります。また、男女共にホルモン分泌への影響により性欲が減退したり、亢進したりといった作用が出る事もあります。

その他の副作用としては、抗コリン作用として自律神経系の働きを障害する事によって起こる口渇・便秘・目のかすみ・唾液過多などの自律神経症状があります。
興奮状態を鎮静する作用が効き過ぎて、ボーとして眠気を感じたり、全身がだるくて脱力感や倦怠感を感じる場合がありますが、これは皮膚疾患のかゆみを抑える為に使われる抗ヒスタミン剤の副作用と類似のものです。眠気を感じて、意識状態がぼんやりしている時などは車の運転や危険のある機械の作業は行わないように気をつけましょう。

抗精神病薬の一覧表
グループ一般名商品名
定型抗精神病薬
クロカプラミンクロフェクトン
クロルプロマジンコントミン、ウインタミン
スルピリドドグマチール、アビリット、ミラドール
チオリダジンメレリル
チミペロントロペロン
トリフロペラジントリフロペラジン
ネモナプリドエミレース
ハロペリドールセレネース、ハロステン、ケセラン、ブロトポン、リントン
ピモジドオーラップ
フルフェナジンフルメジン、フルデカシン
ペルフェナジンPZC、トリラホン、トリオミン
プロクロルペラジンノバミン、パソトミン
モサプラミンクレミン
レボメプロマジンヒルナミン、ソフミン、レボトミン
持効性抗精神病薬
エナント酸フルフェナジンアナテンゾールデポー
デカン酸フルフェナジンフルデカシン
デカン酸ハロペリドールネオペリドール、ハロマンス
非定型抗精神病薬
ゾテピン(SDA)ロドピン、メジャピン
リスペリドン(SDA)リスパダール
塩酸ペロスピロン(SDA)ルーラン
フマル酸クエチアピン(SDA)セロクエル
オランザピン(SDA)ジプレキサ
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