RSウイルス感染症の症状・原因・治療

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RSウイルス感染症の症状と特徴


RSウイルスの感染経路と予防対策


RSウイルス感染症の治療法


RSウイルス感染症の症状と特徴

RSウイルス感染症(Respiratory Syncytial Virus:RSV)は、9~1月頃の秋・冬の季節に流行しやすいRSウイルスの感染症で、特に1歳未満の新生児・乳幼児が気をつけるべき感染症の一つとされます。乳幼児が感染する代表的な呼吸器疾患の一つが『RSウイルス感染症(Respiratory syncytial virus infection)』なのです。

RSウイルス感染症は、『大人・2歳児以上の子供』が感染しても鼻風邪やのどが痛くなる風邪程度で重症化するケースは少ないのですが、母体からの免疫機能(移行抗体)が残っているとされる『生後1ヶ月未満の赤ちゃん(新生児)』でも感染して重症化する恐れのある感染症なので、警戒が必要になってきます。RSウイルスに感染した場合の潜伏期間は『約4~6日(約2~8日)』です。

産まれたばかりの新生児や0~1歳児は、RSウイルスに感染すると『細気管支炎・肺炎の悪化』で呼吸困難・無呼吸の状態などに陥って重症化する可能性があります。周囲の大人・2歳以上の子供は新生児・乳幼児にRSウイルスをできるだけ感染させないように注意すべきですが、RSウイルスはどこにでもいる風邪の原因になるウイルスで、家族間の感染力も強いため、2~3歳までにほぼ100%の幼児が一度は感染して抗体(免疫)を作るとされています。

生後1歳までにほぼ半数の乳児が一度は感染を経験し、2~3歳頃までにほぼ全ての乳幼児が感染することになります。風邪のウイルスなので、大人も何度も再感染を繰り返すことになりますが、大人は症状が軽く収まりやすいという特徴があります。低出生体重児(未熟児)や心肺系に先天的な基礎疾患がある乳幼児は呼吸器症状が重症化しやすいので、生後数ヶ月以内のRSウイルス感染に十分な警戒をすべきです。

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RSウイルス感染症の症状は、一般的な『風邪症候群(風邪)』と一致しています。重症化しなければ風邪と同じで『発熱・のどの痛み・咳・くしゃみ・鼻づまり・鼻水』などの症状がでてきますが、重症化してくると『細気管支炎・肺炎』などの症状に移行してきます。乳幼児が初めてRSウイルスに感染すると、約25~40%の確率で『細気管支炎・肺炎』を発症するとされているので、乳幼児にとってはたかが風邪という感覚で甘く見ることはできないのです。

乳幼児の風邪が悪化した時に見られやすい『細気管支炎』とは、非常に細い気管支の先端部分が炎症を起こしている状態のことであり、息を吐く時に『ゼーゼー・ヒューヒュー・キュルキュル』などの異常な呼吸音がする特徴があります。RSウイルス感染症は乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の原因の約50~90%という研究調査報告があり、『乳幼児が感染する代表的な呼吸器疾患』として認知されています。

RSウイルス感染症はほとんどのケースでは、『約1~2週間』で自己免疫力によって徐々に回復して治りますが、肺炎・気管支炎が重症化して呼吸困難などが出た時には病院での入院治療になる場合もあります。RSウイルス感染症の全患者に対する重症化リスクは約1~3%とされていて、重症化する患者の大半は免疫力の低い小さな子供か高齢者になっています。

RSウイルスの感染経路と予防対策

RSウイルスの感染経路は『飛沫感染・接触感染』であり、『咳・くしゃみ・鼻水』などの飛沫(ひまつ)で撒き散らされたRSウイルスによって感染するか、RSウイルスが付着したドアノブやおもちゃ、物に触れることによって感染することになります。

RSウイルス感染であること自体に気づかない軽症例(鼻風邪・のどの痛い風邪)も多いことから、『家族間の感染』や『保育所・幼稚園(乳幼児の集団生活施設)での集団感染』の流行を事前に抑制することは現実にはかなり困難です。

RSウイルスの重症化しやすい合併症として指摘されているものとして、『ADH分泌異常症候群・無呼吸の症状・急性脳症』などがあります。日本国内でのRSウイルス感染症による年間平均死亡者数は『約30人前後』となっていて、このRSウイルス感染症の死亡者数はアメリカやEU諸国など他の先進国と比較してもかなり低い水準とされています。

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RSウイルスの感染予防対策としては、一般的な風邪と同じく飛沫感染や接触感染によって感染するので、感染者の気道分泌物(唾液・鼻水)が付着した物に触らないように気をつけて、こまめに物を消毒することが大切です。外から帰ってきたら、『手洗い・うがい・消毒』をこまめに行うこともRSウイルス感染症の予防に役立ちます。

RSウイルスは手の指やおもちゃ(物)を介して感染することが多いので、物品(子どもがよく触るおもちゃなど)と身の回りの消毒をこまめに行うことが予防対策として効果的なのです。RSウイルスそのものは各種の消毒剤に対する抵抗性が弱いので、消毒液で手や物を清拭(せいしょく)すれば簡単に死滅します。RSウイルスに有効な消毒剤には、消毒用エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨードなどの一般的な消毒液があります。

RSウイルス感染症の基本的な予防対策をまとめると以下のようになります。

早産の低体重児(未熟児)や慢性的・先天的な肺疾患児、先天性心疾患児に対しては、医学的な予防対策として『抗RSウイルス単クローン抗体(パリビズマブ,Palivizumab)』が投与されることもありますが、一般的にはそこまでの予防をする必要はありません。

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RSウイルス感染症の治療法

一般の風邪症候群と同じくRSウイルスだけに効く特効薬のようなものはありません。RSウイルス感染症の治療法は、『対症療法』が中心になります。

発熱があれば、アイスノンなどで冷却して、アセトアミノフェン(カロナール)など解熱剤を処方します。ゼーゼーという喘鳴を伴う呼吸器症状には、鎮咳去痰薬(ちんがいきょたんやく)や気管支拡張薬などを処方しますが、RSウイルス感染症に対しては気管支拡張剤の効果は限定的かほとんどないとされています。

合併症として細菌感染症が疑われるケースでは、抗生物質が使われることもありますが、RSウイルスそのものには効果がありません。発熱・脱水がある症状では、子供は痰(たん)に粘り気がでて吐き出しにくくなるので『水分補給・輸液』も重要になってきます。

RSウイルス感染症の治療法の基本は『酸素投与・輸液・呼吸管理』などの支持療法主体の対症療法であり、風邪と同じように患者が自己免疫と自然治癒力によって治していかなければならない病気です。気管支拡張剤やステロイド剤の効果についても、臨床研究では否定的なもの(ほとんど効かないとするもの)が多くなっています。

アメリカではRSウイルス感染症の唯一の治療薬として『リバビリン』が認可されており、微小粒子のエアロゾルとして吸入方式で投与されていますが、日本では一般的な治療法としては採用されていません。数十年以上にわたって、RSウイルスワクチンも開発研究が進められているのですが、ワクチンの毒性の強さは上手く希釈できないなどの問題があり、現状ではRSウイルスのワクチン開発は失敗に終わっています。

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