ADHD(注意欠如・多動性障害)のDSM-5の診断基準

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DSM-5のADHD(注意欠如・多動性障害)の診断基準と発達障害としての分類

日本の精神医学や精神発達臨床の活動では、ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は1990年代後半から『発達障害の亜型(一種)』として治療・教育の方針が立てられていた。しかし、DSM-Ⅳではアメリカ精神医学会(APA)はADHD(注意欠如・多動性障害)を発達障害の現れであるとは考えておらず、DSM-Ⅳで子供の問題行動・不適応行動を分類している『ADHDと破壊的行動障害』の中にADHDを分類していたのである。

日本では2005年に『発達障害者支援法』が成立して、法律的・公的にもADHDが『発達障害モデル』で理解され治療されるようになったが、これはADHDを神経発達障害(neurodevelopmental disorder)のカテゴリーに分類した『DSM-5における変更点(ADHDの発達障害としての認定)』を歴史的に先取りする動きでもあった。DSM-Ⅳでは、ADHDは子供の反社会的・非適応的な問題行動を指示する『破壊的行動障害の一種』とされていたが、DSM-5では、『脳の機能障害を前提とする発達障害の一種』として認定されることになった。

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の日本語訳は今まで『注意欠陥・多動性障害』とされることが多かったが、近年は“欠陥”というネガティブな意味合いのある語感を嫌ってということもあり、『注意欠如・多動性障害』という訳語が定着してきているようである。

DSM-ⅣとDSM-5の診断基準の項目には目立った変更はないが、DSM-5では『子供の発達障害としてのADHD』の印象を弱めて、『青年・成人でも発症することがあるADHD』という“年齢にとらわれない障害(どの年代の人でもなり得る障害であること)”を強調している。ADHDの症状の発現年齢は、7歳以下から12歳以下へと引き上げられており、17歳以上の人の診断基準が緩和されて『下位項目を5つ満たせば良い』になっている。

ADHDの重症度の区分として、『軽度(mild)・中等度(moderate)・重度(severe)』の区別も設定されている。

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DSM-5における注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の診断基準

A1:以下の不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。

a.細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。

b.注意を持続することが困難。

c.上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。

d.指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。

e.課題や活動を整理することができない。

f.精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。

g.課題や活動に必要なものを忘れがちである。

h.外部からの刺激で注意散漫となりやすい。

i.日々の活動を忘れがちである。

A2:以下の多動性/衝動性の症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。

a.着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。

b.着席が期待されている場面で離席する。

c.不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする。

d.静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。

e.衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。

f.しゃべりすぎる。

g.質問が終わる前にうっかり答え始める。

h.順番待ちが苦手である。

i.他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。

B:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは12歳までに存在していた。

C:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは2つ以上の環境(家庭・学校・職場・社交場面など)で存在している。

D:症状が社会・学業・職業機能を損ねている明らかな証拠がある。

E:統合失調症や他の精神障害の経過で生じたのではなく、それらで説明することもできない。

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