美人でも悪い印象を持たれることはある:美人を避ける心理とマッチング仮説(社会的バランス理論)

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美人からの評価を気にする男:美人のネガティブなステレオタイプ

美人を避ける男の心理とマッチング仮説(釣り合い理論)


美人からの評価を気にする男:美人のネガティブなステレオタイプ

“美人は恋愛や結婚で得をするのか?”のページでは、美人には『女性的な優しい性格・社会的に望ましい性格=平均的な容姿の人よりも性格・内面が良く見える』という“ステレオタイプ(典型的・固定観念的なイメージ)”があるということを説明しました。この先入観を生むステレオタイプのことを、英語では“beauty is good(美は良)”という簡潔な文で表現しています。

容姿の美しさの水準が高いほど、『温かい・優しい・明るい・おとなしい・温和・親切・まじめ・協調性がある』といった社会的に望ましい性格のイメージや女性的な優しい性格のイメージを持たれやすいことを“beauty is good”を示しているので、これだけを聞くと『美人は得をする・美人は性格が多少悪くても良いように見てもらえるので得』と思うかもしれません。

しかし、美人にも実際よりも悪い印象を持たれてしまう“beauty is bad(美は悪・美は冷たい)”というようなネガティブなステレオタイプも存在することが分かっています。結論だけを分かりやすく言ってしまうと、美人はちょっとした笑顔や共感、賛成だけで非常に高く評価されやすい一方で、ちょっと無愛想にしたり否定・反対したりするだけで普通の人よりも更に低く評価されやすい(冷たくて人間的魅力や内面の価値がない嫌な人に見られやすい)という傾向があるのです。

テキサス大学の男子大学生48人を被験者として実施された『女性実験者(女性のテスト結果の報告者)による性格テスト実験』では、性格テストの『プラスのポジティブな結果』と『マイナスのネガティブな結果』をそれぞれ“美人から聞いた場合”と“不美人から聞いた場合”で、男子大学生の受け取り方(女性の印象)がどのように変わるかが調べられました。この性格テスト実験は、1969年に社会心理学者のシーガルとアロンソンによって行われました。

プラスのポジティブな結果は『明るくて社交的・真面目で誠実・協調性や自立心がある・創造性や内省に優れている』などで、マイナスのネガティブな結果は『暗くて非社交的・怠惰で嘘つき・協調性や自立心が乏しい・凡庸で内省ができない』などですが、これらは実際のテスト結果とは関係がなく、あらかじめ被験者の半分ずつに適当に割り当てられたものです。美人か不美人かも実際には『同一人物の美人な女性』であり、不美人から結果を聞いた場合では、その美人がわざと不美人に見えるようにメイクや髪型、服装、雰囲気を崩したものでした。

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その結果は、“美人からポジティブな結果を聞いた場合”で、男子大学生の好印象・好意度は最も高くなり、“不美人からポジティブな結果を聞いた場合”にはそれほど好印象・好意度は上がりませんでした。しかし、大きな差とまでは言えないのですが、“美人からネガティブな結果を聞いた場合”には“不美人からネガティブな結果を聞いた場合”よりも有意に好印象・好意度が下がったのです。

このことから、美人な女性が、男性に愛想を使って共感・賞賛・評価をすれば、その好印象はめざましいほどにすぐにアップするが、反対に美人な女性が、男性に無愛想にして否定・反論・無視をすれば、その印象は一般の女性よりも有意に悪いものになってしまう(少し無表情で適当に対応しただけでも実際以上に人間性がダメな人のように見られてしまう)可能性が想定されるわけです。

大まかにいってしまえば、『男性は美人の評価・意見に敏感に反応しやすい+美人にダメだしされたり否定されると実際以上に傷ついたり、その反動で美人の人間性の評価を下げやすい』という傾向があると考えられます。『美人は絶対に性格が悪いに決まっている』とまで断言してしまうタイプの男性(女性)もいますが、その心理の根底には『過去に美人な女性から冷たくあしらわれたり、強い否定やダメだしを受けたりして男性的な自尊心が傷ついたトラウマ』があるのかもしれません。

『美人のネガティブなステレオタイプ(美人の性格・印象・人間性が悪いと思い込むステレオタイプ)』を整理すれば、以下のようになるでしょう。美人にはたくさんのポジティブなステレオタイプがある一方で、人によっては以下のようなネガティブなステレオタイプを通して、美人な女性を否定的・嫌悪的に見ていることもある(嫉妬・逆恨みの感情なども含め)ということなのです。

『自己評価の低い男性』で、実際に美人にアプローチしたりコミュニケーションしたことがない人ほど、自分に近寄ってきてくれない(愛想良く接してくれない)美人に対して一方的にネガティブなステレオタイプを抱きやすいという傾向も見られます。これは欲しいもの(美人の女性)がどうしても手に入らないから、その欲しいもの(美人の女性)の価値がなかったことにしてしまおうという、イソップ童話の『狐と葡萄(すっぱいぶどう)』に見る“認知的不協和”の現れとして解釈することもできるでしょう。

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美人を避ける男の心理とマッチング仮説(釣り合い理論)

1985年に日本の心理学者の松井・山本が行った実験では、『男性の自己評価の高さと女性の写真(容姿)に対する印象との相関』が調べられました。男子大学生99名の被験者に対して『自己評価の高さを調べる心理テスト』を実施して、その後に『10人の女子大学生の写真呈示とそれぞれの印象を評価する心理テスト』が行われました。

女子大学生の写真の印象評価では、『デートに誘いたいか・好意を持ったか・恋人にしたいと思うか・自分がデートに誘えばOKしてくれそうか』などの女性の性的魅力の印象や自己評価に関する直接的な質問項目が織り込まれています。そして、実験の最後に10人の中から1人だけを選ぶ『本当にデートに誘うとすればどの女性を誘いますか』という質問をするようになっていました。

女子大学生の魅力的な特徴は因子分析によって、『美しさ・家庭的・活発さ・しっかりさ・受容の可能性(断られにくそうな感じ)』の5つの因子に絞り込まれましたが、“自己評価の高い男子学生”“自己評価の低い男子学生”とではどの因子を女性の魅力として重視するかに微妙な違いが見られたのです。

自己評価の高い男子学生も低い男子学生も、どちらも『美しさ』を最も重視して、続いて『家庭的』を重視するというのは同じでしたが、自己評価の高い男子が『活発さ』を重視するのに対して、自己評価の低い男子は『しっかりさ・受容の可能性(断られにくそうな感じ)』を重視したのでした。

自己評価の高低に関係なくほとんどの男性は『容姿が美しかったり可愛かったりする女性で、家庭的で優しい雰囲気のある女性を好む傾向』が顕著にあり、その反対に『家庭的ではない遊び人風の女性(色々な男性と遊んでいそうな女性)で、冷たく厳しい雰囲気のある女性を避ける傾向』があると言えます。

自己評価の高い男性は、スポーツやアウトドアが好きだったり、友人が多くて積極的に行動していたりする『活発さ』を評価しましたが、低い男性はそういったスポーツやアウトドアの活動についていけないと思ったり、大勢の仲間の輪に入ってわいわいやるのが苦手と感じたりするのか『活発さ』についてはあまり評価しないようです。一方、自己評価の高い男性は、頭の良さや責任感、生き方が定まっているといった『しっかりさ』については殆ど評価しませんが、低い男性は、自分をリードして欲しいとかしっかりした女性についていて貰った方が安心と考えるのか『しっかりさ』を高く評価しました。

男性の自己評価の高低ともっとも分かりやすく相関しているのが『受容の可能性(断られにくそうな感じ)』であり、自己評価の高い男性は自分がデートを申し込んで断りそうな女性かどうかを殆ど気にしないのに対して、低い男性は自分がデートを申し込んでも断らなさそうな女性(自分との魅力がほぼ釣り合っているか優しくて大人しそうか、自分よりも魅力がやや低いくらいの女性)を高く評価したのでした。

実際のアプローチのレベルで『美人を避ける男の心理』は、自分が声をかけても相手にしてもらえなさそう(冷たく拒絶されたりバカにされたりして傷つけられそう)という『自己評価・自信の低さ』によって引き起こされるもので、それは同時に上に書いたような『美人のネガティブなステレオタイプ』を生み出す動因にもなることがあるものです。

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恋愛心理学の分野では、『自分の魅力・価値』『相手(異性)の魅力・価値』がほぼ釣り合う時にカップリング(恋人・配偶者の選択)が成立するという『マッチング仮説(釣り合い仮説)』あるいは『社会的バランス理論』が提唱されています。

男性は確かに一般的に『美人な女性(可愛い女性も含め)』がそうではない女性よりも好きなのですが、実際の恋愛・結婚においては美人であればあるほど良いというわけではなく、自分の身のほどをわきまえる形で『自己評価と見合った釣り合う異性』や『自分を受け入れてくれそうな異性=断られにくそうな異性』を選んでアプローチする傾向があるというのです。

そして、その方が実際にも相手(異性)からOKを貰って受け入れられやすいという仮説であり、『美女と野獣・イケメンと不美人のカップリング』は容姿以外の何らかの魅力(地位・経済力・財産・性格など)が抜きん出ていない限りは確率的にかなり低いということになります。

『マッチング仮説(釣り合い仮説)』に関しては、日本国内でも奥田(1990年)の膨大なマッチング(男女のカップルの魅力の釣り合い度)のデータを整理した研究などがありますが、『実際に交際したり結婚したりする相手との総合的魅力のバランス』についてはほぼ釣り合っているという結果が得られています。

結婚の配偶者選択では、『男性の平均以上の職業・地位・経済力・将来性』『女性の外見・容姿の魅力度との差』を埋め合わせて補償してくれるカップリングも多く見られますが、男女の性別を逆転させた場合には『女性の職業・経済力が男性の外見の魅力度との差』を埋め合わせて補償するカップリングは殆どない(男性は女性の経済力の抜きん出た高さを殆ど求めない)とされます。学生など若い時期の恋愛段階や女性側が経済生活の豊かさに頓着しないカップル(男性の経済力への依存度が低いカップル)では、外見の魅力度は釣り合いやすい傾向があります。

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『マッチング仮説(釣り合い仮説)』は、『最終的に実際に交際あるいは結婚する異性』は、自分と概ね釣り合う程度の総合的魅力を持っていることを示唆する仮説ですが、『似たもの夫婦・破れ鍋に綴じ蓋』などの格言の実態をある程度まで実証データに基づいた研究で明らかにした側面はあります。しかし、『実際に付き合う前にどんな相手と付き合いたいか(どんな相手が自分に合うか)の希望の段階』と『複数の女性(女性の写真)を前にした時のどの女性が良いと思うかの仮想的選択の段階』では、マッチング仮説が成り立つかどうかに違いもあると言われています。

『実際に付き合う前にどんな相手と付き合いたいか(どんな相手が自分に合うか)の希望の段階』では、自己評価に見合った選択で、自分の客観的魅力のレベルを踏まえた相手の希望が述べられるので、マッチング仮説が当てはまります。しかし、『複数の女性(女性の写真)を前にした時のどの女性が良いと思うかの仮想的選択の段階』では、自分とは釣り合わないような容姿の美しい女性をほとんどの人が良いと思うと答えます。

これは『相手が無条件に受け容れてくれる・自由に選べて自分が拒絶されて傷つくリスクがない』という条件つきであれば、自分と相手との外見的魅力の釣り合いを無視してマッチング仮説が崩れることを意味します。経済的・社会的に成功して自己評価が極端に高くなっている人が、並みの人ではとても釣り合わないような高嶺の花の美人に、自分の外見との釣り合いを気にせずにアプローチできること(自分の圧倒的な経済力・社会的ステータス等があれば美人がOKする可能性も十分にあると思えること)の裏付けにもなっている解釈でしょう。

しかし、『(大学生・既婚者などで)最終的に恋愛・結婚の相手として選択した異性』を調査してみると、やはり極端に外見的魅力がかけ離れているカップルの組み合わせは少なく、概ね客観的に見た場合の外見的魅力のレベルは概ね釣り合っているという結果になっています。

正規・非正規の雇用格差は別として、多くの人は平均所得前後を稼ぐ普通のサラリーマンなので経済力による外見的魅力の補償の効果はそれほど大きくないのでしょう。家庭を維持できるだけの安定所得が保障されているイメージが強い“大企業の正社員(公務員の男性)”と“アルバイト・無職の女性”などの組み合わせでは、美女と野獣まではかけ離れていないとしても、ある程度の補償(経済的魅力・家の格式等によって、結婚・育児のコストを意識したある程度美人な相手からOKを貰いやすくなる)が起こる可能性はあるかもしれません。

美人にも『性格・人間性・生き方が悪い』と思われる、様々なネガティブなステレオタイプの偏見があるということを説明しましたが、美人の外見的魅力を相殺して悪印象だけを強めてしまう行為としては、『外見の美しさを利用した犯罪・結婚詐欺・不正行為に手を染める(外見の美貌を悪用した犯罪の場合、アメリカの陪審制では美人ほど重い刑罰を科せられる傾向があります)』『自分に惚れた男性を思い通りに動かして大金を得たり便宜を図って貰ったりする(妻のいる夫を誘惑して愛人になったり経済的に庇護させたりする)』もあります。

また、美人は対外的には『自分の容姿・外見の美しさ』を自認することがなく(同性異性からの嫉妬・逆恨みを回避するために外見について謙遜するという説もあるが)、他人から『自分の容姿・外見を褒められること』を本心ではあまり喜ばない傾向があると言われます。

美人は人生の中で常に『目立つ外見・容姿の美しさ』ばかりに注目されたり言及されたりしてきた人が多いですが、逆に『自分の内面・趣味・性格・価値観・能力』などについて他人からまともに見てもらえないことが多くなります。他人から目立つ外見だけにしか興味をもってもらえず、他の自分の性格や内面、趣味に対しては『どうでもいいこと』のように軽く扱われたり、『そんなことより外見が綺麗だからいいね・美人なんだからとにかく一緒に写真を撮ろうよ・どうやったらそんなに可愛くなれるの』という中身のない会話ばかりをされたりする問題もあるのです。

自分が趣味・学問の話題や各種の能力の発揮で自己アピールをしたくても、周囲が勝手に外見が美人だとか可愛いだとかいう話題に持っていってしまうので、『本当に見て欲しい自分の一面』をなかなか見てもらえず認めてもらえないというフラストレーションが溜まっていきます。あるいは、どんなに性格や知性、趣味をアピールしても誰もまともにその分野で深くコミットしてくれないので、『どうせ自分には外見・顔の良さしか魅力がないから仕方ない』と思ってしまい、余計に不本意な形で外見を磨くことだけしかしない『無趣味で本質的価値のない人生(外見を飾ること・色恋の話題ばかりの仲間関係への埋没)』になってしまうこともあります。

美人は常に自分の外見的魅力を『鏡像』によって知覚しているために、『自分に対して美しいとはあまり思えなくなる(まだまだ美しくなれるはずというナルシシズム・整形願望の強化に陥るケースもある)』一方で、『他人の外見的な美しさを認めにくい傾向(他人の美しさをやや低めに評価する傾向)』があるために、他人を本心から好きになるきっかけ(特に外見の第一印象で惚れ込むようなきっかけは少ない)が一般の人よりも掴みにくいデメリットも指摘されることがあります。

人気のある芸能人や誰もが憧れる高嶺の花な美人になると、『先天的・遺伝的な容姿の美しさ,顔立ちの良さ』が大きく関係してきますが、一般女性のレベルでは生まれ持っての遺伝的な顔立ち・容姿の整い具合以上に『化粧・服装・表情の工夫や努力』によって、『他人から見た場合の客観的な外見・容姿の魅力』を数段階は引き上げられることが分かっています。

化粧が映える顔立ちでメイクアップ技術の高い女性だと、『化粧前の顔』と『化粧後の顔』は別人に見えるほど違っていることも多く、ばっちりメイクして髪型や服装もおしゃれをし、美肌など各種修正モードのあるスマホの写真アプリで写真撮影したりすれば、平均程度の美しさの女性が相当な美人に見えるということは珍しいことではありません。

確かに、生まれ持った顔立ちも影響する美貌のレベルを自由自在にコントロールできるわけではありませんが、『化粧もしないおしゃれもしない女性』がきちんとメイクをしておしゃれをすれば、何もしないよりかは数段は美しく可愛く見えるというのは事実です。

その意味では、ある程度まで『美人(可愛い)は作れる』と言えるでしょうし、『顔の輪郭線は整っている・顔のパーツの細部の形は気に入らないが配置は良い・肌は綺麗』などの条件がある普通っぽい女性であれば、何もしない状態で不美人といわれていても、化粧のメイクアップと自分に似合うファッション次第で相当に容姿の印象を良くすること(化粧もスキンケアもしない高校生より化粧が上手くなってくる大学生・20代社会人のほうが同じ女性でも外見の印象が格段に良くなることは多いのです)は可能でしょう。

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