アスペルガー症候群のこだわり行動の悩み

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知覚・感覚の過敏性と身体接触の不安

アスペルガー症候群(Asperger syndrome:AS)では、光や音の刺激に過剰に反応して驚くという『知覚(感覚)の過敏性』が見られることが多いのですが、音に関してはただ大きい音を怖がるという事もあれば、特定のメロディ(音楽)や機械音だけを嫌がるという事もあります。知覚・感覚の中では『視覚・聴覚・触覚の過敏性』によって日常生活に支障がでてくることもありますが、それらの感覚を不快に強く刺激されると耳を塞いでしゃがみ込んだり、大声を上げてパニックに陥ってしまいやすくなるのです。

ASの子どもは一般的に、『自分の身体』に触られることも『他人の身体』を触ることも嫌う傾向が強く見られ、他人に触られた場合は特に不安になったりパニック(恐慌発作)を起こしやすくなったりします。普段から慣れ親しんでいる家族であれば触られても大丈夫なことが多いのですが、家族でさえも触られるのを嫌がったり拒絶したりするASの子どももいて、入浴や洗髪を酷く嫌がることも多いのです。朝起きて顔を洗うのが気持ち悪いと感じたり、夜にお風呂に入ることも感覚的に嫌だと感じるASの子どももいて、『洗顔・入浴の習慣化(身体を清潔に保つための行動の習慣化)』が成立するまではなかなか大変だったりもします。

視覚・聴覚の過敏性だけではなくて、『特定の匂い』を酷く嫌がって騒ぐという嗅覚の過敏性、あるいは『特定の食べ物』だけしか食べなかったり逆にその食べ物だけを嫌ったりという味覚の過敏性(好き嫌いの極端な激しさ)が見られたりすることもあります。人間は誰でも快感と不快感に関係する『自分独自の感覚』を持っており、その感覚・知覚のニュアンスの個人差は大きくて、ある人にとっては心地よい感覚が別の人にとっては不快な感覚だったりもします。アスペルガー症候群ではその感覚(知覚)が極端に過敏であり、日常生活や親子の自然なスキンシップ(世話)の障害になることもあるのですが、本人にも『どうしてそんなに嫌なのか、不快なのかの原因』が良く分かっていないことが多いのです。

感覚(知覚)の過敏性の問題に対しては、それぞれのASの子どもの感覚を尊重しながら、『嫌がる行為・拒絶する接触』を無理強いすることなく、子どもへの触れ方をトラブルが起こらないように工夫していく必要があります。実際の日常生活では入浴の世話にせよ自然なスキンシップにせよ、親が子どもの身体に全く触れないで生活することは困難ですので、『突然触れて驚かせるようなこと』は避けながら、段階的に触覚の過敏性に慣れさせていくことになります。

子どもを驚かせないように、身体に触れる時にはその前に一言を掛けてから触ること、子どもの見える位置から触ろうとすることを意識するようにすると上手くいきやすくなります。抵抗の少ない短時間のちょっとした接触から慣れさせていき、最終的には『自分ひとりで身体を洗う・洗髪をする・洗顔をする』といった動作ができるようにしていけば、触覚の過敏性の実際的な問題は減ってくるでしょう。

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特定の同じ順番・方法(やり方)への強いこだわり

アスペルガー症候群(AS)では、強迫性パーソナリティ障害にも類似した強迫的な観念や儀式的な行動が見られることがありますが、ASの場合には『いつもと同じ順番・方法』を強く好んで、『いつもとは違う順番・方法』を異常なまでに拒絶するという特徴が見られることがあります。ASの子どもでは特に『道順(いつもと同じ道を通って目的地に行くこと)』に対する強いこだわりが見られやすく、普段とは違う道を辿って学校(目的地)に行こうとすると泣いたり騒いだりしてパニックを起こしてしまうのです。

ASの子どもは毎日繰り返される日常生活を通して、『生活ルーチン』という決まりきった生活のスケジュールや行動様式を身に付けていき、その生活ルーチンから少しでも外れる想定外の行動を取ると、泣いたり不安になったりパニックを起こしやすくなったりすると考えられています。

朝7時30分に家を出て8時に学校に着き、時間割通りの授業を受けて、夕方4時にはいつもと同じ道を通って帰宅するといったことが『生活ルーチン』であり、ASの子どもはその生活ルーチンに従って順調に行動している限りは安心感を感じることができるのです。反対に『いつもとは道順での通学・急な予定の変更』に対しては柔軟に対応することができず、激しい戸惑いや混乱、不安を感じてしまい、自分が次にどうすれば良いのかが分からなくなってパニックに陥ってしまうというわけです。

生活ルーチンから外れる予定外の行動・順番(いつもと違う行動・順番)に、ASの子どもが不安感や混乱を感じる原因は、『想像力の欠如・状況認知の偏り』があるからであり、予定外のことが起こった時に次に何が起こるのかを上手く想像できないことで不安感が強まっていくのです。

また、一つの確固としたルールに従って生活している限りは安心という『認知の偏り』もあり、その決まりきったルールが通用しない状況になった時には、自分がどういった行動を選択すれば良いのかが分からなくなってしまいます。そういったASに特有の『いつもと違う状況・順番』に対するパニックや不安感を和らげるためには、『いつもの予定の変更・順番の変化・時間の変更』などがある時には、どんなに些細な変更であっても事前に子どもに丁寧に分かりやすく説明して伝えておくことが大切になります。

『一日の行動スケジュール(予定表)』を紙に書き出してASの子どもに渡しておくことも有効ですが、その際には『急な変更があれば予定表も変わるかもしれないこと』『予定の変更があったらこういう風に行動すればいいという指示』を合わせて伝えておくと良いでしょう。一日の行動スケジュールを紙に書く時には、イラストや文字、数字を効果的に用いることでASの子どもの理解を助けることができますが、『道順の変更』をする時などには時間を取って、子どもが安心して納得できるまで『今度はどの道を通るのか』を図を用いたりしながら説明します。

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