『竹取物語』の原文・現代語訳22

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『竹取物語』は平安時代(9~10世紀頃)に成立したと推定されている日本最古の物語文学であり、子ども向けの童話である『かぐや姫』の原型となっている古典でもあります。『竹取物語』は、『竹取翁の物語』『かぐや姫の物語』と呼ばれることもあります。竹から生まれた月の世界の美しいお姫様である“かぐや姫”が人間の世界へとやって来て、次々と魅力的な青年からの求婚を退けるものの、遂には帝(みかど)の目にも留まるという想像力を駆使したファンタジックな作品になっています。

『竹取物語』は作者不詳であり成立年代も不明です。しかし、10世紀の『大和物語』『うつほ物語』『源氏物語』、11世紀の『栄花物語』『狭衣物語』などに『竹取物語』への言及が見られることから、10世紀頃までには既に物語が作られていたと考えられます。このウェブページでは、『竹取心惑ひて泣き伏せる所に寄りて、かぐや姫言ふ。~』の部分の原文・現代語訳(意訳)を記しています。

参考文献
『竹取物語(全)』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),室伏信助『新装・竹取物語』(角川ソフィア文庫),阪倉篤義 『竹取物語』(岩波文庫)

[古文・原文]

竹取心惑ひて泣き伏せる所に寄りて、かぐや姫言ふ。『ここにも心にもあらでかくまかるに、昇らむをだに見送り給へ』と言へども、『何しに悲しきに見送り奉らむ。我を如何にせよとて、棄てては昇り給ふぞ。具して率ておはせね』と泣きて伏せれば、御心惑ひぬ。

『文を書き置きてまからむ。恋しからむ折々、取り出でて見給へ』とて、うち泣きて書く詞(ことば)は、

この国に生まれぬるとならば、嘆かせ奉らぬほどまで侍らで過ぎ別れぬること、返す返す本意なくこそおぼえ侍れ。脱ぎ置く衣を、形見と見給へ。月の出でたらむ夜は、見おこせ給へ。見棄て奉りてまかる、空よりも落ちぬべき心地する。

と書き置く。

[現代語訳]

竹取の翁が取り乱して泣いている所に、かぐや姫は近寄って言った。『このように帰りたくないのに帰っていくのですから、せめて私が天に昇っていくのを見送って下さい。』と言ったが、『どうしてこんなに悲しいのに見送りができるのですか。私をどうしようと思って、私たちのことを捨てて天に昇っていくのですか。一緒に連れていっておくれ。』と泣いて伏せってしまうので、かぐや姫の心は乱れてしまう。

『手紙を書き置きしてから行くことにしますね。私を恋しいと思う時には、この手紙を取り出して見て下さい。』と言って、泣きながら書いた手紙の言葉には、

私がこの国に生まれたのであれば、あなたたちを嘆かせることもなく、ずっとお側で過ごすことができたのですが、それができずに別れなければならないことを本当に残念に思います。脱いで置いていく衣を、私の形見と思って下さい。月の出ている夜は、私の帰った月を見てみて下さい。あなたたちを見捨てて帰ることは、帰る途中の空から落ちてしまうほどにつらいことですよ。

と書き残してあった。

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[古文・原文]

天人の中に持たせたる箱あり。天の羽衣入れり。又、あるは不死の薬入れり。

一人の天人言ふ。『壺なる御薬奉れ。きたなき所のものきこしめしたれば、御心地悪しからむものぞ』とて、持て寄りたれば、いささかなめ給ひて、少し形見とて、脱ぎ置く衣に包まむとすれば、ある天人包ませず。御衣取り出でて着せむとす。

その時にかぐや姫、『しばし待て』と言ふ。『衣着せつる人は心異(こと)になるなりと言ふ。もの一言いひおくべき事ありけり』と言ひて文書く。天人、『遅し』と心もとながり給ふ。かぐや姫、『もの知らぬことなのたまひそ』とて、いみじく静かに、朝廷(おほやけ)に御文奉り給ふ。あわてぬさまなり。

[現代語訳]

天人のうちの一人に持たせている箱があった。その箱には天の羽衣(あまのはごろも)が入っている。もう一つの箱には不死の薬が入っていた。

一人の天人が、『壺に入っている薬をお飲み下さい。汚れた地上の国のものを召し上がっていたので、ご気分が悪いでしょうね。』と言って箱を持ってきたが、かぐや姫は不死の薬をちょっと舐めてから、その薬を少し形見として脱いで置いていく衣の中に包もうとしたが、天人が包むことを許さなかった。そして、天の羽衣を取り出して、かぐや姫に着せようとする。

その時にかぐや姫は、『暫く待ちなさい』と言った。『天の羽衣を来た人は、心がすっかり天人のものへと変わってしまうといいます。その前に、一言、言い残しておきたいことがあるのです。』と言って手紙を書いた。天人は、『遅い』と言って落ち着かない様子である。かぐや姫は、『そんな薄情なことを言わないで下さい。』と言って、とても冷静な態度で帝に宛てた手紙を書いた。落ち着いた様子である。

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