『枕草子』の現代語訳:32

清少納言(康保3年頃(966年頃)~万寿2年頃(1025年頃))が平安時代中期に書いた『枕草子(まくらのそうし)』の古文と現代語訳(意訳)を掲載していきます。『枕草子』は中宮定子に仕えていた女房・清少納言が書いたとされる日本最古の女流随筆文学(エッセイ文学)で、清少納言の自然や生活、人間関係、文化様式に対する繊細で鋭い観察眼・発想力が反映された作品になっています。

『枕草子』は池田亀鑑(いけだきかん)の書いた『全講枕草子(1957年)』の解説書では、多種多様な物事の定義について記した“ものづくし”の『類聚章段(るいじゅうしょうだん)』、四季の自然や日常生活の事柄を観察して感想を記した『随想章段』、中宮定子と関係する宮廷社会の出来事を思い出して書いた『回想章段(日記章段)』の3つの部分に大きく分けられています。紫式部が『源氏物語』で書いた情緒的な深みのある『もののあはれ』の世界観に対し、清少納言は『枕草子』の中で明るい知性を活かして、『をかし』の美しい世界観を表現したと言われます。

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石田穣二『枕草子 上・下巻』(角川ソフィア文庫),『枕草子』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),上坂信男,神作光一など『枕草子 上・中・下巻』(講談社学術文庫)

[古文・原文]

49段

猫は、上の限り黒くて、腹いと白き。

50段

雑色(ぞうしき)、随身(ずいじん)は、すこしやせて細やかなる。よき男も、なほ若きほどは、さる方なるぞ、よき。いたく肥えたるは、寝(い)ねぶたからむと見ゆ。

[現代語訳]

49段

猫は、背中の全体が黒くて、お腹が白いのが良い。

50段

雑色・随身は少し痩せていて、ほっそりとしている人が良い。身分の高貴な男も、やはり若いうちは、そういった感じの細身の方が良い。とても太っている男は、いつも眠たそうに見えてしまい良くない。

[古文・原文]

51段

小舎人童(こどねりわらわ)は、小さくて、髪いとうるはしきが、裾さはらかに、すこし色なるが、声をかしうて、かしこまりてものなど言ひたるぞ、らうらうじき。

52段

牛飼は、大きにて、髪あららかなるが、顔赤みて、かどかどしげなる。

[現代語訳]

51段

小舎人童は、ちいさくて髪がとても立派な子供が良い。髪の先がさっぱりとしていて少し青みがかっている子供が、声が綺麗で、畏まった態度で話している姿は、賢そうに見えるものだ。

52段

牛飼いは、大きな身体をしていて、髪の毛がバサバサに荒れており、赤ら顔で仕事を的確にこなしているようなのが良い。

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