『枕草子』の現代語訳:90

清少納言(康保3年頃(966年頃)~万寿2年頃(1025年頃))が平安時代中期に書いた『枕草子(まくらのそうし)』の古文と現代語訳(意訳)を掲載していきます。『枕草子』は中宮定子に仕えていた女房・清少納言が書いたとされる日本最古の女流随筆文学(エッセイ文学)で、清少納言の自然や生活、人間関係、文化様式に対する繊細で鋭い観察眼・発想力が反映された作品になっています。

このウェブページでは、『枕草子』の『名恐ろしきもの 青淵。谷の洞。鰭板。鉄。土塊。~』の部分の原文・現代語訳を紹介します。

参考文献
石田穣二『枕草子 上・下巻』(角川ソフィア文庫),『枕草子』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),上坂信男,神作光一など『枕草子 上・中・下巻』(講談社学術文庫)

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[古文・原文]

148段

名恐ろしきもの

青淵(あおぶち)。谷の洞(ほら)。鰭板(はたいた)。鉄(くろがね)。土塊(つちくれ)。雷は、名のみにもあらず、いみじう恐ろし。暴風(はやち)。不祥雲(ふしょうぐも)。ほこ星。肱笠雨(ひじかさあめ)。荒野(あらの)ら。

強盗、またよろづに恐ろし。らんそう、おほかた恐ろし。かなもち、またよろづに恐ろし。生霊(いきすだま)。蛇いちご(くちはないちご)。鬼蕨(おにわらび)。鬼ところ。荊(むばら)。枳殻(からたち)。いり炭。牛鬼(うしおに)。碇(いかり)、名よりも、見るは恐ろし。

149段

見るに異なることなきものの、文字に書きてことことしきもの。

覆盆子(いちご)。鴨頭草(つゆくさ)。みづぶき。蜘蛛。胡桃(くるみ)。文章博士。得業生(とくごうのしょう)。皇太后宮権大夫(こうたいごうくうのごんのだいふ)。楊梅(やまもも)。虎杖(いたどり)は、まいて虎の杖と書きたるとか。杖なくともありぬべき顔つきを。

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[現代語訳]

148段

名前が怖い感じのもの。

青淵(あおぶち)。谷の洞(ほら)。鰭板(はたいた)。鉄(くろがね)。土塊(つちくれ)。雷は、名前だけでもなく、とても恐ろしい。暴風(はやち)。不祥雲(ふしょうぐも)。ほこ星。肱笠雨(ひじかさあめ)。荒野(あらの)ら。

強盗、これはどの部分から見ても恐ろしい。らんそう、ほとんどの人が恐ろしい。かなもち、これもまたどこから見ても恐ろしい。生霊(いきすだま)。蛇いちご(くちはないちご)。鬼蕨(おにわらび)。鬼ところ。荊(むばら)。枳殻(からたち)。いり炭。牛鬼(うしおに)。碇(いかり)、名前よりも、見た形が怖い。

149段

見た感じは大したことがないが、漢字で書くと大仰なもの。

覆盆子(いちご)。鴨頭草(つゆくさ)。みづぶき。蜘蛛。胡桃(くるみ)。文章博士。得業生(とくごうのしょう)。皇太后宮権大夫(こうたいごうくうのごんのだいふ)。楊梅(やまもも)。虎杖(いたどり)は、まして虎の杖と書くのだという。虎は杖などなくても大丈夫という顔つきをしているのに。

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[古文・原文]

150段

むつかしげなるもの

繍物(ぬいもの)の裏。鼠の子の毛もまだ生ひぬ(おいぬ)を、巣の中よりまろばし出でたる。裏まだ付けぬ裘(かはぎぬ)の縫目(ぬいめ)。猫の耳の中。殊に清げならぬ所の、暗き。

ことなる事なき人の、子などあまた持てあつかひたる。いと深うしも心ざしなき妻(め)の、心地あしうして久しう悩みたるも、夫(をとこ)の心地はむつかしかるべし。

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[現代語訳]

150段

むさくるしいもの。

繍物(ぬいもの)の裏。鼠の子の毛もまだ生えていない赤ちゃんを、巣の中から転がし出したもの。裏地をまだ付けていない裘(かはぎぬ)の縫目(ぬいめ)。猫の耳の中。特別に綺麗ではない所の、暗い所。

大したことがない人が(大して美しくもない人が)、大勢の子を持って世話をしているの。それほど深く愛しているわけでもない妻が、具合が悪くなって長く臥せっているのも、夫の気持ちとしては嫌なもの(わずらわしいもの)だろう。

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