『枕草子』の現代語訳:126

清少納言(康保3年頃(966年頃)~万寿2年頃(1025年頃))が平安時代中期に書いた『枕草子(まくらのそうし)』の古文と現代語訳(意訳)を掲載していきます。『枕草子』は中宮定子に仕えていた女房・清少納言が書いたとされる日本最古の女流随筆文学(エッセイ文学)で、清少納言の自然や生活、人間関係、文化様式に対する繊細で鋭い観察眼・発想力が反映された作品になっています。

このウェブページでは、『枕草子』の『岡は船岡。片岡。鞆岡は、笹の生ひたるがをかしきなり。かたらひの岡。人見の岡。~』の部分の原文・現代語訳を紹介します。

参考文献
石田穣二『枕草子 上・下巻』(角川ソフィア文庫),『枕草子』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),上坂信男,神作光一など『枕草子 上・中・下巻』(講談社学術文庫)

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[古文・原文]

234段

岡は船岡(ふなおか)。片岡。鞆岡(ともおか)は、笹の生ひたるがをかしきなり。かたらひの岡。人見の岡。

235段

降るものは雪。霰(あられ)。霙(みぞれ)は、にくけれど、白き雪のまじりて降る、をかし。

236段

雪は檜皮葺(ひわだぶき)、いとめでたし。少し消えがたになりたるほど、また、いと多うも降らぬが、瓦の目ごとに入りて、黒う丸(まろ)に見えたる、いとをかし。

時雨(しぐれ)、霰は、板屋。霜も、板屋、庭。

237段

日は入日(いりひ)。入り果てぬる山の端(は)に、光なほとまりて、赤う見ゆるに、薄(うす)黄(き)ばみたる雲の、たなびきわたりたる、いとあはれなり。

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[現代語訳]

234段

岡は船岡(ふなおか)。片岡。鞆岡(ともおか)は、笹が生えている風景が面白いのである。仲良しの岡。人見の岡。

235段

降るものは雪。霰(あられ)。霙(みぞれ)は嫌なものだけれど、白い雪が混じって降る時には、面白い。

236段

雪は、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根をとても素晴らしく見せてくれる。少し雪が消えかかっている頃、また、あまり多くも降らない時には、瓦の目に雪が詰まって、、黒く丸く見えていたのが、とても面白い。

時雨(しぐれ)、霰は、板葺き。霜も、板葺き、庭。

237段

日は入日(いりひ)。日が入っていて沈んだ山の頂上に、光がなお留まっていて、赤く見えているのに、薄黄ばんだ雲が長くたなびいている情景は、とてもしみじみとした風情がある。

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[古文・原文]

238段

月は有明(ありあけ)の、東の山際(やまぎわ)に細くて出づるほど、いとあはれなり。

239段

星は昂星(すばる)。彦星(ひこぼし)。夕づつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて。

240段

雲は白き。紫。黒きも、をかし。風吹くをりの雨雲(あまぐも)。明け離るるほどの、黒き雲のやうやう消えて、白うなりゆくも、いとをかし。「朝(あした)に去る色」とかや、詩(ふみ)にも作りたなる。月のいと明き面(おもて)に、薄き雲、あはれなり。

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[現代語訳]

238段

月は有明(ありあけ)が、東の山の上に細い形で出て来る頃が、とてもしみじみとした趣きがある。

239段

星は昂星(すばる)。彦星(ひこぼし)。夕づつ。よばひ星(流れ星)は、少し面白い。しっぽさえなかったならば、もっと良いのだが。

240段

雲は、白いもの。紫。黒いものも風情がある。風の吹く時の雨雲の動き。夜が明け離れてくる頃の、黒い雲がようやく消えて、周囲が白んでいく様子も、とても情趣がある。「朝(あした)に去る色」とか、漢詩でも詠んでいるようである。月がとても明るい面に、薄い雲がかかるというのも、しみじみとしている。

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