浅漬け・浅漬け大根(べったら)

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浅漬け(あさづけ)は、大根漬け(だいこんづけ)の一種であり、『浅漬け大根』を略したものとされる。現代では野菜を塩で揉んで、短期間浅めに漬けただけの漬物全般を『浅漬け』と呼ぶこともあるので、必ずしもここでいう大根の粕漬け(べったら漬け)の浅漬けを指しているとは限らない。スーパーマーケットなどで売られている典型的な浅漬けは『白菜・大根の浅漬け』であり、日本の食文化においてご飯(白米)に合う代表的なおかずである。

浅漬け大根の略である浅漬けの最大の特徴は、酒糟(さけかす)がべったりとついていることであり、東京をはじめとする関東圏では『べったら(べったら漬け)』と呼んでいる。大阪をはじめとする関西県では『あっさり(あっさり漬け)』と呼ばれることも多く、呼び方に地域差があることも特徴である。宮中の女房言葉では『あさあさ』とも呼ばれていたようである。

大根の美味しい季節である秋から冬にかけて良く作られた漬物であり、生干しダイコンを薄塩(うすしお)と麹(こうじ)で揉み込んで、約30~50日間ほど漬け込んで作られる。べったらと呼ばれた大根の粕漬けの浅漬けは、江戸時代から盛んに作られていて庶民の食べ物として人気を得ていた。

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江戸の日本橋の小伝馬・大伝馬(こでんま・だいでんま)の町では、毎年陰暦の10月19日の『えびす講(えびすこう)』の宵宮(よみや)で、べったら(大根の浅漬け)を販売する『べったら市』が開かれていた。えびす講のべったら市の元々の原型は、臭気の強い鯛の塩漬けである掛鯛(かけだい)を売る『腐市(くされいち)』であったという。

『腐市』という名前の由来は、遠く離れた伊勢国(現在の三重県)から運ばれてくる掛鯛(塩漬けの鯛)が発する独特の生臭い臭気にあったが、この腐市で盛んに大根の浅漬けのべったらが売られるようになって『べったら市』へと変わっていった。えびす講の市場では、元々、えびす講の開催・祭祀に必要な恵比寿大黒(えびすだいこく)の像、打出の小槌と並んで、当時の縁起物とされていた伊勢国の掛鯛(塩鯛)が売られていたのだが、その掛鯛がべったら(大根の浅漬け)に取って代わられたのである。

江戸中期の料理書である『増補江戸年中記(享和3年・1803年)』には、そのえびす講について『十月十九日の夜、小伝馬町の二丁目に、さかな・青果市立つ。二十日町方えびす講を祝ふ』とあり、『守貞漫稿(しゅていまんこう,嘉永6年・1853年)』には、『エビス神を祭り、新漬大根を売る。干し大根を塩糠をもって漬けたる。蓋しコウジを加えたるを良しとす』とべったらの品質についての説明が書かれている。

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