登山ウェアのアンダーウェア(ベースレイヤー)


アンダーウェア(ベースレイヤー)とレイヤリングの説明

登山時の服装は複数のウェアを重ね着する『レイヤリング(layering)』が基本になりますが、『アンダーウェア(ベースレイヤー)』はどんな時でも必ず着ている行動着になるレイヤーです。暑い夏場に標高1000m台くらいの低山に登山に行く時であれば、『半袖のアンダーウェア(ベースレイヤー)』を一枚だけ着て歩き、日が落ちたり高度が高くなってきたりして寒くなれば『化繊の長袖シャツ・薄手のウインドブレイカー(ウインドブラスト)』を羽織ればいいでしょう。

アンダーウェアというと『下着のイメージ』で地味に感じる人も多いかもしれませんが、『肌に直接身に着けるウェア(汗を吸い込んだり乾かしたりするウェア)』という意味ではかなり重要度の高いウェアです。春・秋の短時間の登山であればアンダーウェアの機能差を実感することは少ないかもしれませんが、『真夏の登山』ではびっしょりと汗をかいた後の不快感・服の重たさが変わってきますし、『冬場の登山』では汗をかいた後の“汗冷え”の寒さ(低体温症になる危険性)が全く違ってきます。

登山では一般的な『コットン(綿)のアンダーウェア』だけは避けるというのが原則で、特に真冬の登山では、コットンのシャツや下着を着ていると発汗の後に急激に身体が冷えてしまい危険なことがあります。『登山専用のアンダーウェア』は高いからなかなか手が出ないという場合には、安くても良いので『ポリエステルなどの化繊のアンダーウェア』を必ず買うようにして下さい。スポーツショップには、ランニング用(スポーツ用)の化繊のアンダーウェアが1000円くらいからの価格帯で売っていますが、ポリエステルは生地を触ると少しパサついた感じがあり、明らかにコットン(綿)とは違うことが分かります。

アンダーウェア(ベースレイヤー)を選ぶ基準は、『素材(着心地・吸汗速乾性)・厚み(保温性)・デザイン・襟の形状(着やすさ)・ジッパーの有無(体温調節のしやすさ)』などにあります。生地の素材には化学技術の進歩と各企業の開発によって『様々な種類』がありますが、機能性として注目すべきなのは『着心地の良さ・動きやすさ(伸縮性)・汗の吸いやすさ(吸汗性)・乾きやすさ(速乾性)・保温性』などです。

生地の厚みが保温性に大きく関わってきますが、モンベルをはじめとして、生地の厚みには『LW(薄手のライトウェイト)・MW(中厚手のミッドウェイト)・EXP(厚手のエクスペディション)』などの区別があるので、季節や体質に合わせて選んでください。基本的には夏場はLW、秋〜初冬はMW、真冬はEXPという使い分けで良いですが、メーカーによって生地の厚みの表記は異なるので、どの季節に適した生地なのかを見極めて買ったほうが良いと思います。

生地の素材は大きく分けると、以下のように『化学繊維(シンセティック)・ウール(羊毛など)・ハイブリッド(化繊とウールの混合)』に分けることができますが、一般的に化繊のアンダーウェアは『吸汗速乾性』に優れており、ウールのものは『保温性・着心地』に優れています。価格は天然素材であるウールのほうが若干高めですが、繰り返し着ていると毛玉がつきやすいなどの欠点もあります。ハイブリッドは化繊とウールの長所をそれぞれ取り入れるような形で、『新素材』として開発されたものになります。

アンダーウェア(ベースレイヤー)の商品の紹介

“機能性・デザイン・価格”に着目して、アンダーウェア(ベースレイヤー)の商品をいくつか紹介します。

モンベル(mont-bell)の“クール ハーフスリーブジップシャツ”は、夏山登山の定番アイテムとも言えるベースレイヤーで、外からの熱をシャットアウトして中からの熱を逃がす『ウィックロン・クール』という新素材が使われています。化繊なのに涼しくて柔らかな着心地であり、毛玉ができにくく擦れにくい『耐久性』に優れたアンダーシャツになっています。ジッパーがついているので、真夏の暑い時にはジッパーを開けることで更に涼しく着こなすことができます。ジッパーが直接、あごや胸に当たるのを防ぐ作りになっていますので着心地も良いと思います。

モンベル(mont-bell)の“スーパーメリノウールM.W.ラウンドネックシャツ”は、ウール全体が汗の水蒸気によって発熱して、更にスケール(鱗状組織)がその発熱を持続させるという非常に『保温性』に優れたアンダーウェアです。スーパーメリノウールは、上質な羊毛(ニュージーランド産)の天然素材を使用しており、シルクのようにチクチク感のない滑らかな肌ざわりを実現しているという特長もあります。汗を吸い取る吸湿性にも優れており、汗の水蒸気を緩やかに外部に放出するため『汗冷え』を防ぐ構造になっています。M.W.の『中厚手のアンダーウェア』は、秋〜冬の季節の一般的な登山に適しています。

HAGLOFS(ホグロフス)はスウェーデンのアウトドアブランドで、スマートなデザインと機能性の高さで人気です。ホグロフス(HAGLOFS)の“Actives Cool Zip Top”は、暑い季節の登山であればこれ一枚だけでも活動できる速乾性と肌触りに優れた軽量のジップトップになっています。吸汗性と通気性(速乾性)に優れているので、汗をかいていても不快感を最小限に抑えることができます。UPF40+で紫外線の防御もでき、銀塩テクノロジーの利用で消臭の効果も付け加えられています。

パタゴニア(PATAGONIA)の“Merino 3 Midweight Crew”は、メリノウールとポリエステルの混紡素材で作られており、汗・雨で濡れても体をドライに快適に保ってくれる速乾性を持っています。ウール100%の天然素材よりも耐久性と強度で優っていますが、メリノウールの肌触りのやわらかさと保温性、天然素材の防臭効果、汗の吸湿発散性能などの特長も併せ持っています。

マウンテンハードウェアの“ハーフジップロングスリーブT”は、異素材を組み合わせた吸汗速乾性のウェアで、通気性の高さと適度な保温性を兼ね備えています。UPF50で紫外線を防御する光遮断効果もあり、ザックの摩擦で生地が擦れにくいようにステッチにも工夫が凝らされています。ボルトをモチーフにしたマウンテンハードウェアのロゴデザインも、ちょうど良いインパクトになっていると思います。

ファイントラックの“メリノスピン サーモクルーネック”は、メリノウールとポリエステルのハイブリッド素材で作られたバランスの良いアンダーウエアです。優れた保温性と速乾性を持つ素材に抗菌防臭性をプラスしており、清潔かつ快適に着こなすことができます。メリノウールにポリエステルを加えることで強度が格段に上がっており、この『メリノスピン糸』は袋編み構造の生地を使用することで、保温性と吸汗拡散性能を高めているのです。立体裁断のデザインであり、非常に着心地が良くて動きやすいのも特長になっています。

ミズノの“バイオギア ゼロ ブレスサーモハイネック”は、ミズノが開発したブレスサーモのハイブリッド素材を使用した『秋冬用のアンダーウェア』です。ブレスサーモは人体から発生する水蒸気を吸収して発熱する『保温性素材』ですが、このアンダーウェアは『2WAYストレッチ素材+立体裁断』で非常に動きやすい作りになっていて、登山以外の運動にも応用することができます。

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