登山靴(トレッキングブーツ)


登山靴(トレッキングブーツ)の種類と選び方の説明

登山に絶対に携行しなければならない三種の神器といえば、『登山靴・ザック(リュックサック)・レインウェア』のことです。登山は険しい山道(非舗装の自然の道)を長い時間をかけて歩くことが基本ですから、登山を安全かつ快適に楽しむためには“目的・山・季節に合った登山靴”を適切に選ぶことが大切になってきます。登山靴には多種多様な種類がありますが、『足首を覆う部分の高さ』に注目すると、大きく以下の3種類に分けることができます。

ハイカット……靴が踝(くるぶし)を含む足首全体を覆っているもので、登山靴の中で最もスタンダードであり安全性の高いモデルです。足首の部分の高さがあるので足首を捻挫しにくく、ソール(靴底)も固くてしっかりしたものが多いので『岩場・ガレ場(石の多い道)・ザレ場(小石の多い道)・泥土の多い悪路・雪道』にも適応しやすい造りになっています。欠点は、大きくて重たいことであり、夏場は内部が蒸れやすいことです。最近は足首を覆う部分の高さが低い登山靴も増えてきていますが、それらは主に春~秋の季節にかけての低山向きの靴であり、一般的な登山靴といえばこのハイカットのモデルのことを指してます。

ミドルカット……靴が踝(くるぶし)のやや上の部分まで覆っているもので、ハイカットよりもやや足首を覆う部分が短くなっているモデルです。普通の靴と同じ足首の部分の高さしかないローカットのモデルよりは、足首を捻挫しにくくなっていますが、中途半端な高さなので人によってはハイカットやローカットよりも履きにくいと感じる事があります。ミドルカットのほうがハイカットよりも軽くて見た目もカジュアルというのが利点ですが、欠点としては足首のフィット感が合わないとローカットよりも足首を痛めやすくなることがあります。

ローカット……靴が踝(踝)を軽く覆うくらいのもので、一般的な靴(スニーカーなど)と同じような登山靴のモデルです。足首の全体が露出する形になるので、一般的な靴と全く同じ感覚で履きこなすことができるのが利点ですが、逆に言えば『登山靴(山靴)としての安全性・防御性・走破性のメリット』のすべてを享受することができない短所があります。登り慣れた無雪期の低山、山の中を走り抜けることを目的にしたトレイルランニング、ロッククライミングでの岩場までのアプローチなどに適したモデルと言えます。

足首を覆う部分の高さに注目した場合の登山靴の選び方は、厳冬期・積雪期を除いてどの山に登る時にも使える『ハイカット(ハイネック)の登山靴』をファーストチョイス(第一選択)にしておけば間違いがありません。夏場にいつも登っている慣れた低山を登る人だとか、登山経験があってトレイルランニングを始めようとする人だとかであれば、ミドルカットやローカットの登山靴を目的・快適さに合わせて選べば良いと思います。

厳冬期・積雪期に中級山岳以上の高山に登山をする場合には、必ず『冬山専用の厚手の登山靴・ウィンターブーツ』を別途購入するようにして下さい。春~秋・初冬の季節に履いている一般的な登山靴で、降雪のある雪山・冬山に登ろうとすると、いくら靴下を重ね履きしていても足先が冷えたり雪が侵入したりして『凍傷』に罹る恐れがあるからです。一般的なスポーツショップには『冬山専用の登山靴』は高額過ぎることもありほとんど置いていませんが、登山専門店でどの山に冬季に登りたいのかを伝えて、適切な冬山専用の登山靴を選んで貰うことをお勧めします。

厚手の生地で作製された剛堅な造りの冬山専用の登山靴(厚手の生地でインサレートの保温材が入っている登山靴)の価格帯は、概ね“4~5万円以上”くらいが相場であり、“1~2万円台の価格帯の登山靴”は冬山・雪山に対応したものではないと考えてほぼ間違いないでしょう。しかし厳冬期の高山になると更に保温性の高い登山靴でないと凍傷の危険性が生じることがあるので、経験者・専門スタッフに登山靴の疑問点を質問してからの購入のほうが間違いがないです。3000m級以上の厳しい冬山に初めて入る時(特に登頂を目的として冬の高山に入る時)には、冬山に慣れた経験者や山岳ガイドに同行して貰う必要があります。未経験者が安易な考えや未熟な知識・技術で『冬山(厳冬期の高山)』に出たとこ勝負で登ろうとすれば、幾ら各種の装備が冬山に適応したものであっても想定外の『遭難リスク』は高くなります。

身近な低山にまず登ってみようという登山の初心者だと、ローカットのほうがいつもと同じ靴みたいで履きやすそうだし、軽くて楽チン(しかも価格も安いものが多い)と思いがちですが、いずれ『1000~2000m程度の中級山岳』にも登りたくなってくると思いますから、『登山靴の重さ・感覚・底の硬さ・足首の固定感』に徐々に慣れていくという意味でも初めからベーシックなハイカットの登山靴を購入することがお勧めです。

ハイカットの登山靴は重たくて歩きにくそうという先入観が持たれがちですが、現在では昔のようなフルレザー(全部が本革製)のトレッキングブーツは減っていて、ナイロンと革を組み合わせたコンビネーション(シンセティック)の軽いモデルが増えていますから、1~2ヶ月も頻繁に履いて歩いていれば十分に履きこなせるようになります。登山靴はそのアッパー(靴の上部)の素材に注目すると、主に以下の2種類に分けられます。

コンビネーション(シンセティック)……ナイロンの化学繊維素材と本革・合皮などを組み合わせたモデルで、ゴアテックスのフィルムなどで防水透湿性能を加えている。長所は何より軽いこと、メンテナンスや靴洗いが簡単なこと、レザーよりも価格が安いことであり、現在は大半の登山靴がこのコンビネーションのモデルになっている。

レザー(本革)……靴のアッパー全体を本革で作製した職人の技術力を感じられるモデルで、ゴアテックスよりも強力な自然の防水性能を備えているが、内部からの水蒸気を逃がしにくいのでやや蒸れやすい。長所は何よりも本革の本格的な味わい・風格があること、使い込むほどに愛着が湧くこと、防水性能が非常に高いことである。短所は重たいこと、水濡れ・泥汚れの後などのメンテナンスが大変なこと、価格が高いことである。登山愛好家の中には、現在でもレザーの登山靴をソール(靴底)やインナーソール(中敷)を張り替えながら、大切に履き続けている人も多いが、適切な管理をすればコンビネーションよりも長持ちする利点もある。

登山靴を『山行の目的別』に分類すると、以下のような種類があります。

トレイルランニング用……山の中を走り抜けて登っていくトレイルランニングのために設計されたローカットで軽量の登山靴。トレイルランニング用の靴は、軽さと動きやすさを重要視した造りになっており、滑りにくいパターンのソールを採用しているが、一般的なランニングシューズよりも頑丈な造りにはなっている。

クライミングのアプローチシューズ……岩登りをするクライマーが、岩登りのポイントにまで山中を移動する時に履くやや軽量の滑りにくい登山靴。一般的な登山靴だと重量があって嵩張りやすいので、こういった専用の軽量なアプローチシューズの需要が生まれる。ソールには滑りにくい粘りのあるゴム素材が使われている。

沢登り用……川(沢)を遡行する形で山を登っていく沢登りのために設計された特殊な登山靴。沢登りは水の中を歩いて、水で濡れたりコケが生えたりしている岩場の上に立ったりする登山なので、『滑りにくいフェルト製のソール(靴底)』が採用されており、内部に溜まった水を出すための『水抜き穴』が備えられている。

フリークライミング用……垂直に近い角度でそそり立つような岩壁を素手で登るフリークライミング(ロッククライミング)のために設計された特殊な登山靴。岩にしっかりと吸い付くようにグリップして滑ることがないように、特殊なゴム製のソールが採用されている。

雪山用……厚手の生地で作製され、保温材(インサレート)が封入されている冬山専用の登山靴。堅牢な造りで重厚感のある登山靴で、冬山の厳しい寒さに耐えられるような設計が為されている。氷雪で滑らないようにするアイゼン(クランポン)をしっかりと取り付けるために『固めのソール』が採用されている。

エクスペディション……ヒマラヤやヨーロッパアルプスをはじめとする厳冬期の高山(マイナス20度を超えるような極限の寒冷環境)に適応する最高の保温性・防御性を備えた世界の高峰に挑戦する登山家が履くような登山靴。靴全体を覆って厳しい寒さを防御するための『オーバーブーツ』が付属している。

登山靴・トレッキングシューズの商品の紹介

“機能性・デザイン・価格”に着目して、登山靴・トレッキングシューズの商品をいくつか紹介します。

モンベル(mont-bell)の“ツオロミーブーツ”は、全天候型の汎用性のあるハイカットブーツで、冬季以外の季節にはこれ一足で殆ど全ての登山に対応することができるベーシックな登山靴です。アッパーの素材は耐摩耗性に優れたポリエステルと剛性の高い2.2mm厚の高品質ヌバックレザーを組み合わせた『コンビネーション』であり、ソールには幅広のモンベルオリジナルのビブラムソールを採用しています。価格と性能のバランスの良い一足になっています。

モンベル(mont-bell)の“アルパインクルーザー 2500”は、1000~2000m程度の冬山に対応する登山靴で迷っている人にお勧めできるモデルであり、もっと高い冬山に対応可能なより上位のバージョンもあるので合わせてチェックしてみて下さい。春から秋の山岳縦走、1000~2000m程度の冬山など季節を問わずにオールラウンドに使用可能な堅牢なトレッキングブーツです。アッパーは2.5mm厚ヌバックレザーに、ゴアテックスファブリックを組み合わせて、前部を継ぎ目のない一枚革で包み込んでいる造りなので、抜群のホールド感と耐久性、防水透湿性を備えています。デザインも極めてベーシックなものなので、好き嫌いを問わずに履きこなしやすい一足でもあります。

グランドキング(キャラバン)の“GK79”は、キャラバンのポピュラーな登山靴シリーズの頂点に立つ堅牢なフラッグシップモデルであり、厳冬期以外のあらゆる登山シーンに対応できる使い勝手の良い登山靴です。アッパー素材には上質なヌバックレザーを使用していて抜群の防水性を実現しており、シュータンは雪・冷気の浸入を防ぐ一体成型となっており、初冬期の登山にもこの一足で対応することができます。ソールにはどんな悪路にもグリップ力を発揮するビブラムTSVO(Mont)を採用しています。

ザンバランの“ヴィオーザ・プラスGT”は、イタリアメイドの味わいと本革の風格に優れた重厚なオールレザーのトレッキングブーツです。吊り込み製法で作り上げられた美しい曲線の仕上がりは、全体的に足を包み込むようにホールドするので、歩行中の足をしなやかに安定させてくれます。厳冬期以外であればオールラウンドに使える一足です。

シリオの“P.F.662-GTX 662”は、日本人の足型にフィットした幅広のデザインを採用しており、足の窮屈さを感じることのない自然なホールド感と安定した歩行スタイルを実現しています。アシメトリック・アッパーを採用したシリオのフラッグシップモデルであり、外見的にも風格を感じさせる重厚感があり、履けば履くほどに味わい・愛着の増してくる一足になっています。

メレルの“MERRELL Chameleon 5 Mid Ventilator GORE-TEX”は、ファッショナブルで機能性にも優れたカメレオンシリーズの5代目となるモデルです。グリップ性の高いパターンのアウトソールやホールド性を高めたオム二フィットレーシングシステム、防水透湿性のゴアテックスが採用されていますが、短所としては登山靴としてはやや『耐久性・頑強さ』に劣るということがあります。一般的な登山には十分に使うことができ、ローカットのカメレオンシリーズも低山登山やアウトドア活動には最適なモデルとなっています。

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