ナイロンとデニール

ナイロンとは何か?

ナイロンは、1935年にアメリカ・デュポン社の研究員ウォーレス・カロザースが初めて合成に成功したポリアミド系の化学繊維である。1938年に、デュポン社によって『ナイロン』は商品化されたが、ナイロンは元々は特定の商品名のブランドでした。インビスタ社(旧デュポン・テキスタイル・アンド・インテリア社)の商品名として出発したナイロンだが、現在ではもっとも汎用的かつ一般的なポリアミド系繊維の総称として使われている。

石炭と空気と水を材料にして作られたデュポン社のナイロンは、当時『蜘蛛の糸より細く、絹より美しく、鋼鉄より強い』というキャッチフレーズで売り出されたが、日本ではデュポンから技術導入した東洋レーヨン(東レ)が1941年にナイロンの製造に成功、1951年から工業的な大量生産が可能となった。『ポリアミド系』というのは、単量体がアミド結合によって長く連続した鎖状の合成高分子のことである。

衣料用に用いられる代表的なナイロンとして、“ナイロン6”“ナイロン66”が知られているが、ナイロンは軽量で耐久性が強いという特長があり、登山用品などの衣料だけではなく釣り糸やカーペット、自動車のシート、テント、シュラフカバー、スポーツ用バッグなど様々なものに素材として使われている。しかし現在では、ナイロンよりも応用範囲の広いポリエステルのほうが素材としては多く使われるようになっている。

引き裂き強度が強く、耐屈曲性にも優れており、重さも軽量(比重1.14)で着やすくて持ち運びやすい。耐摩擦性に関しては、綿の約10倍の強度を持っていて、様々な色合いに染めやすいという染色性の良さがスポーティーなファッション面での優位性にもつながっている。ナイロン66の融点は約265℃、ナイロン6は約215℃であり、ナイロン66のほうが耐熱性においては優れている。

ナイロンの特徴は以下のようなものである。

1.強度・耐摩擦性が強く簡単には破れない。

2.汚れが落ちやすく洗いやすい、速乾性に優れている。

3.酸・アルカリ・カビ(細菌)・虫などの侵食作用に対する抵抗力が強い。

4.生地に張りやコシはなく、ふにゃふにゃとした触感だが、他の繊維と混紡したり撚り合わせればある程度の張り・コシを出せる。

5.耐熱性が弱く、熱を加えると変形したり燃えやすい。

6.染色しやすく、いろいろな色に染めやすい。

デニールとは何か?

デニールとは、生地の素材として使われるナイロンの糸の太さを表す単位である。1デニールとは長さ9000メートルで1グラムになる糸の太さのことであり、1デニールのナイロン糸は重さが0.05gで、長さが450メートルにもなる。デニールという糸の太さの単位は、ナイロンだけではなく、アラミド繊維や化合繊フィラメント(合成繊維全般)でも使われている。

登山用のアウタージャケットやハードシェルでは、30D(30デニール)から70D(70デニール)くらいのナイロン糸が採用されていることが多いが、デニールの数字が小さくなるほど細くしなやかな糸になり、大きくなるほど太くて耐久性に優れた糸になる。冬山用のアウタージャケットとしては、最低30~40D以上くらいの太さのナイロン糸で作られたものが耐久性・耐摩耗性の面で望ましいと言えるだろう。レインウェアにも30Dくらいの太さのナイロン糸が用いられることが多いが、薄さや軽さが重要になってくるインナーダウンの表地のナイロン糸は20D程度であることが多い。

ナイロン糸に似たフィラメント糸というのは、連続した長い繊維(フィラメント)から作られた糸であり、太さが均一の糸である。フィラメント糸の特徴は、毛羽立ちが少なくて平滑であり光沢があること、ふくらみの少ない細い糸で冷たい感触を持っていることなどがある。

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