ランチェスター戦略

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ランチェスター戦略とは何か?

強者の戦略と弱者の戦略

ランチェスター戦略とは何か?

敵との戦いに勝利するための効果的な方法論(経験則)をまとめた軍事理論や兵法は、自社と他社との間で売上・利益を『市場』で競い合う『経済競争・経営戦略』にも応用することが可能である。

紀元前5~6世紀の古代中国の『孫子の兵法』や18世紀のドイツ(プロシア)の軍事参謀だったカール・フォン・クラウゼヴィッツ『戦争論』などは有名であるが、これらの軍事理論はまだ定性的・哲学的で科学的・数理的(統計的)なものではなかった。

軍事理論を初めて定量的に分析する科学的・数理的(統計的)な理論に仕上げたのが、第一次世界大戦の戦闘経験を実践的・科学的に分析したイギリスの航空工学のエンジニアのF.W.ランチェスター(F.W.Lanchester, 1868-1946)であった。

『ランチェスターの法則(Lanchester's laws)』は1914年にF.W.ランチェスターが発表した『オペレーションズ・リサーチ』の戦闘の数理モデルであり、以下の第一法則と第二法則から成り立っている。

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『ランチェスターの第一法則』……兵士間の1対1の戦いを前提としているため、『一騎討ちの法則』と呼ばれることもある。性能が同じ刀・槍・ピストルなどで戦う時には、単純に兵士の数が多い勢力の側が勝つというものである。勝った側の『兵士の損傷数』は負けた側の『兵士の損傷数』と等しく、勝った側は味方の兵士の数が多かった分(味方が50、敵が30であれば20の兵士が残る)だけ残ったのである。

『ランチェスターの第二法則』……『確率戦闘の法則』や『集中効果の法則』と呼ばれることがあるものである。機関銃、火砲、戦闘機など一人が多数に対して攻撃可能な戦闘を前提としており、敵と味方の戦闘力を二乗した上で戦闘力が優勢な方が勝利するというものである。同じ近代兵器を所持する兵士が戦った場合には、第1法則よりも兵員数の優位性(兵員数が多い側の有利性)が高くなるのである。

F.W.ランチェスターが発見したこの二つの法則は、第二次世界大戦中にアメリカの数学者たちの研究でより精緻化・実用化されていったが、戦後には『企業の経営戦略・マーケティング戦略』にも積極的に応用されるようになった。

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強者の戦略と弱者の戦略

第二次世界大戦中のアメリカでは、理論化された軍事理論の『ランチェスター戦略モデル式』が対日戦争・対独戦争などで実戦展開されたが、戦後になると『企業の経営戦略・マーケティング戦略』として応用された。ドイツのVW社(フォルクスワーゲン社)がカナダ市場へ進出するに当たっても、このランチェスター戦略が使われたと言われている。

日本でも経営コンサルタントの田岡信夫氏が、ランチェスター戦略を導入して営業・販売における競争戦略の強化に成功した事例がある。更にトヨタやパナソニック、ブリジストンなどの大手企業も、『市場競争における優位性』を確立するためにこのランチェスター戦略を参考にしたとされているが、ランチェスター戦略の特長として注目されるのは『強者の戦略』にも『弱者の戦略』にもどちらの立場でも応用が可能であるということだろう。

日本では戦後の1955年に『オペレーションズ・リサーチの方法』が翻訳・出版されているが、ランチェスターの理論の中でも特に『弱者の戦略』が注目されて、大企業に対して中小企業が採用可能な効果的な経営戦略(営業戦略)のことを『ランチェスター経営』と呼んだりもしている。

ランチェスターの法則では、初期の兵員数を変更できないという条件だと、勝つためには『性能のよい武器を使うこと(Eの数値を増やすこと)』が重要になってくる。更に、製品ライフサイクルの段階によって、第1法則と第2法則のどちらを使って戦闘(市場競争)を行うべきかを考えて使い分けるが、これをじゃんけんになぞらえて『グー・チョキ・パー理論』と呼ぶこともある。

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ランチェスターの軍事理論をマーケティングにあてはめる場合には『戦闘力=営業力・兵員数=量・武器性能=質』となるが、マーケティングは軍事競争とは異なり『潜在顧客の認知(情報の受け取り方・解釈の仕方)』が関係してくるので、量・質のぶつかり合いの軍事問題よりも複雑な戦略性や心理学的な視点が要求されやすいという違いはある。

ランチェスター戦略に基づく『強者の戦略』と『弱者の戦略』の基本原則をまとめると以下のようになる。

強者の戦略

1.広域的な総合戦で優位に立てる。

2.集団型の戦闘・競争で優位に立てる。

3.間接的・遠隔的な戦闘・競争で優位に立てる。

4.誘導して敵を分散させれば優位に立てる。

5.圧倒的な物量(兵員)を大量投入して短期決戦に持ち込めば優位に立てる。

弱者の戦略

1.狭い範囲での局地戦で優位に立てる。

2.一騎討ち型の戦闘・競争で優位に立てる。

3.接近戦的・白兵戦的な戦闘・競争で優位に立てる。

4.陽動作戦で本来の目標を隠して競えば優位に立てる。

5.一点だけに集中攻撃を加えれば(ニッチ市場におけるシェアを固めれば)優位に立てる。

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