企業価値を高めるコーポレート・ガバナンス

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株式会社は、資本が巨大になり事業規模が拡大してくると、多くの従業員が入社してきて部署も多様化してきます。会社の規模拡大に伴って事業の形態も複雑化し、一人一人の従業員の行動にも目を行き届かせることが難しくなっていきます。しかし、大企業の経営者は、会社の健全性と成長性を実現する効率的な企業統治のシステムを構築する社会的責任があり、この社会的責任に応答する企業統治のことを『コーポレート・ガバナンス』といいます。

一定の社会的責任を負った株式会社の経営陣や従業員が不祥事(法令違反・モラルハザード)を起こすと、その会社の社会的信任は低下し、株式市場での企業評価も急落することになります。ライブドアショックと呼ばれる株価操作や粉飾決算、過去に起きた雪印食品の衛星管理上の不祥事、三菱自動車のリコール隠蔽問題などは記憶に新しいところですが、大企業の不祥事は一夜にしてその企業の企業価値を低落させ、最悪の場合、経営破綻の結末を引き起こしてしまうこともあります。

コーポレート・ガバナンスの基盤にあるコンプライアンス(法令遵守)

企業価値の下落から企業の存続の危機に至る原因を作る不祥事は、多くの場合、商法や刑法、証券取引法などに関する法律違反から立ち上がってくるので、企業の健全性や信頼性を維持するコーポレート・ガバナンス(企業統治)の基本は、『コンプライアンス(法令遵守)』にあると言われます。

会社の組織運営に関する基本的な法規は、従来、商法の「第2編 会社」の項目や有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)などに記されていました。しかし、2005年7月26日に公布された会社法(株式会社と有限会社の一本化などの改正点あり)が、2006年中にも施行される予定ですので、それ以後は、会社法に準拠した会社の組織作りや経営事業が求められるようになります。

会社法は、商法や有限会社法など別々の法律に分離していた会社の組織運営に関する取り決めを分かりやすいように再編制したもので、最近の社会経済情勢や国際経済活動の変化に対応できる会社法制の確立を目指したものとされます。その改正点は非常に多岐にわたり専門的になるので詳細を全て語ることは難しいのですが、全体的に欧米型の機動的で柔軟性のある企業活動が出来るようにすることを目的とした法改正となっています。株式・新株予約権・社債制度などの株式会社の資金調達法も規制緩和され、株主への利益還元方法にも各企業の柔軟性が認められるような内容となっています。

「企業の健全性・信頼性・成長力・市場評価」といった企業価値を高める為には、効率的でありながらも社会的責任を果たすコンプライアンスと誠実さを忘れないコーポレート・ガバナンスのシステムが必要となります。消費者や株主、債権者、従業員、地域社会といった利害関係者(ステークホルダー)への誠実さは、適切なアカウンタビリティ(説明責任)に基づく情報公開によって示されます。

コーポレート・ガバナンスが関係する企業分野は、『株主総会・取締役・監査役など経営組織分野』『新株発行・社債発行など資金調達分野』『貸借対照表・損益計算書・資産評価・利益配当に関係する金融分野と財務会計』『企業の合併買収(M&A)・株式交換・株式移転など企業の組織再編分野』などおよそ株式会社の経営と事業に関する全ての分野が含まれます。

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国際経済情勢と株式会社の効率経営からのコーポレート・ガバナンスの要請

上記した内容で、社会的影響力の大きな大企業の不祥事を受けて、コーポレート・ガバナンスの必要性が叫ばれてきたということを書きましたが、それ以外にも、企業間の国際競争が激化していて、社会的評価を高めないと競争に立ち遅れるといった現実的な問題も関係しています。つまり、株式市場で高い評価を受け続けないと、大きな資金を調達することが出来なくなり、競争で勝ち残れないという状況が生まれてくるということです。「経済競争のグローバリゼーション」と「資金調達のための健全経営の必要性」が、コーポレート・ガバナンスの要請を生み出す原因となっています。

株式会社の所有者は、法律的には株券の所有者である株主であり、経営陣や社員は、株主に利益を還元する為の株式会社の運営者となります。『お金を持っている人がお金を出し、仕事のアイデアや能力を持っている人がそのお金を預かって仕事をする』というのが株式会社のシステムですが、資本を株主から出資して貰っている経営者は、企業価値と業績を上げる為に効率的で健全なコーポレート・ガバナンスを誠実に行っていかなければなりません。

ただ、日本の伝統的な企業観と会社を株主が所有する概念とは折り合わない部分があり、実際には株式会社は経営者と従業員の利益拡大の為に業務を遂行している部分も大きいのです。具体的には、以下のようなポイントで、コーポレート・ガバナンスを充実させていく事になります。

コーポレート・ガバナンスの要素

1.株式会社の事業活動や金融投資を適切に監視できる経営管理機構の整備。

2.株式会社の健全性・効率性・信頼性を毀損する経営者へのサンクション(制裁)の設定。株主代表訴訟と取締役の株主への責任。

3.株式会社の事業活動の理念と目的の確認とインセンティブ(報酬・誘引)の確保。株主利益と従業員利益、利益の社会還元の実現。

コーポレート・ガバナンスの徹底を会社(株主・社員)が意識しだすと、企業活動の理念や目的を逸脱した経営者の独裁的経営は許されなくなります。会社全体が、健全な経営を誠実に行う事で、コンプライアンスが達成されて財務・金融の透明性も保たれてきます。また、経営者陣には、明確な責任規定が示されるので違法行為や不正行為を行うと、その悪性に応じたサンクションを株主や市場からダイレクトに受けてしまう恐れが高くなります。その結果、経営者が違法行為を犯そうとするリスクは低くなります。

コーポレート・ガバナンス充実の為の企業対応

1.外部から有能で実績のある社外取締役・社外監査役を採用して、企業の自浄能力を強化する。

2.不公正な取引や違法性の恐れのある行為については積極的に情報開示して専門家の判断を仰ぐ。

3.企業倫理を明文化して社員に周知し、会社全体の倫理風土や規範体系を明確にする。

4.大企業の命脈を握るコンプライアンス強化の為、法務部門を拡張・充実させる。

5.大企業の趨勢を左右する金融財務部門の不正・粉飾を未然に防止する為、内部監査室などを設けるなど監査体制を強化する。

6.実権のある経営者の独断だけで経営判断がなされないよう、重要事項の決定に際しては必ず会議を開き他の経営陣の意見も聴くようにする。

コーポレート・ガバナンスを弱体化させて、コンプライアンスの放棄や情報公開の不足、顧客満足度の低下を招く要因には、次のようなものがあります。

企業の健全性・透明性・成長性を阻害するガバナンス低下の危険要因

1.独断専行の経営者による利己的な企業運営。

2.企業内部での情報の疎通性の低下。情報開示の消極化による不正隠蔽。

3.コンプライアンスを維持する順法精神の全体的低下。

4.利益至上主義による企業の社会性の喪失。

5.上司・同僚・部下の悪事に対してオープンにモノを言えない全体の隠蔽体質の拡大。

6.企業倫理や経営理念を無視した欺瞞的な経営。
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