PER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)・ROE(株主資本利益率)の分かりやすい説明

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株式投資をする場合に参考になる指標に『PER(株価収益率)』がある。PERは“Price Earnings Ratio”の略称である。PER(Price Earnings Ratio)を求める数式は『株価÷1株当たり純利益』であり、PERの数字が高いほど良くも悪くも株価が上がりすぎている状態を意味する。実際の純利益よりも、投資家の夢や期待ばかりが膨らんでいる時にPERは加熱して上がりやすく、企業価値が過剰評価されていたり利益が暴落していたりする可能性があるわけである。

PER(株価収益率)は、現在の株価が『1年分の利益』の何倍の値段になっているかを示している。PER17倍というのは、現在の株価に相当する金額(利益の積み重ね)を稼ぎ出すためには、『約17年間の時間』がかかるということを意味しているのである。

PERが高すぎるというのは、企業価値が実際よりも過剰評価されている可能性があり、その時には株価が上がりすぎていて『割高な銘柄』になっているリスクがある。あるいはPERを求める数式の分母である『1株当たり純利益』が小さくなっている時にも、PERの数字は大きくなるので『純利益の大幅な減少』が起こっているリスクもある。ただし将来の業績が急上昇しそうだったり、これから急成長が期待できるテーマ性・技術力・新規市場があったりすると、人気銘柄のPERは20~40倍以上の高い数字を示すことも珍しくはない。

だからといってPERが低い銘柄のほうが『割安な銘柄・安全な株』とも断言できず、現時点で利益がでているのに株価がほとんど上がっていないという状態は、『将来の成長性がない・今の数字に出てない潜在的リスクがある』という可能性もある。日本の株式市場のPERの適正値は『約14~18倍』とされており、PERがこの範囲内にあれば、将来の成長可能性も織り込まれた(実際に成長するかは誰にも分からないが)標準的な株価水準だと推測される。

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株式投資の安全度や企業経営の安定度と関連する指標として『PBR(株価純資産倍率)』があるが、PBRを算出するためにはまず『BPS(1株当たり純資産)』を出さなければならない。BPS(1株当たり純資産)を出す数式は『純資産÷発行株式数』である。BPSは“Book-value Per Share”の略称である。

BPS(1株当たり純資産)は、その会社が今すぐに事業をやめて解散(清算)した場合に、株主に対して1人当たりいくらの現金を返せるかという指標になっており、BPSが大きいほど企業経営が安定していて、現時点で清算した場合に株主にお金が戻ってきやすいということを意味する。あくまで現時点での経営の安定度の指標なので、短期間で経営状況が悪化して倒産に近づいていったような場合には、急速にBPSも低下してしまう恐れはある。

PBR(株価純資産倍率)というのは、『株価÷BPS(1株当たり純資産)』で求められる数字であり、PBRが1倍というのはその会社が解散した時に、株主に対して株価と同額のお金を返金できるということを意味している。PBRが1倍よりも小さくなるほど会社解散時に多くのお金を返すことができるが、裏返せばPBRが小さすぎる会社は資産を利益を上げるために有効活用できていないとも言える。PBRが2倍になればその会社が解散した時に、株主に対して株価の半額のお金しか返金できない状態にあるということである。

PBR(株価純資産倍率)は相場・景気が悪い時に注目されやすい指標で、株価下落局面でも『PBR1倍以下』になれば、その会社が解散した時に投資している株価以上のお金が理論的には戻ってくる(実際には解散時の経営・資産の状態やコストによって目減りするだろうが)ということだから、『割安な株価水準にある』という判断をしやすくなるわけである。

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ROE(株主資本利益率)は海外の機関投資家も重視する指標と言われることがあるが、株主から集めた資本に対して1年で何%の利益を出せたかを意味している。株価が割安かどうかを判断する指標ではなく、その会社の事業の効率性、資本活用の適切さを判断するための指標になっている。ROEは“Return On Equity”の略称であり、『経営の効率性=運用利回りの高低』を知ることができる指標になっている。

ROEを計算する数式は『当期純利益÷自己資本』または『EPS(一株当たり利益)÷BPS(一株当たり純資産)』である。ROEを計算するためには『株価』は必要ではない。人為的にコントロールできず、一日で大きく上下することもある株価を計算に入れないことによって、ROEは『経営の効率性=運用利回りの高低』をより中立的に判断しやすい指標になっているのである。

日本企業は生産性が低いと言われることも多いが、その生産性の指標としてこのROE(株主資本利益率)が用いられていることも多い。日本の上場企業のROEの平均は約9.0%で、先進国の平均ROEの約12.1%と比較してかなり低くなっているが、その理由として『人件費や法人税の高さ・エネルギーコストの高さ・地価の高さ・環境保護規制の厳しさ・企業数の多さによる競争の激しさ』などが挙げられる。為替相場で円高に振れれば、輸出企業の大半はROEが低下することにもなる。

ROE(株主資本利益率)は株主や経営者にとっては『生産性・効率性』を図るための重要な指標であるが、一般のサラリーマン(労働者)や国民にとっては『とにかくROEさえ上げれば良い』とならないのは自明でもある。人件費を大幅に下げて長時間働かせればROEは上がるかもしれないが、社員が心身の健康を崩したりブラック企業として訴えられる訴訟問題が起こったりする。法人税を安くしすぎれば、十分な税収が集まらずに国家財政によって運営される社会インフラや社会保障・医療制度・公教育などが先細りしていくリスクが出る。環境保護規制を甘くしすぎれば大気・海洋・土壌の汚染が再び深刻化して公害が起こるリスクもあるからである。

ROE(株主資本利益率)は『分子の利益を上げる方法』『分母の資本を小さくする方法』かで上げることができるので、巨大な施設・設備・機械装置や大勢の従業員などを持つ重厚長大産業の会社はどうしてもROEが低くなりがちという問題もある。『借金』が多くて『自己資本比率』が低い新興企業が一定以上のリスクを出せば、経営の実態以上にROEの数字は大きくなりやすい。しかしだからといって、その借金経営の新興企業が、歴史の長い重厚長大産業の会社よりも安定している(この先も利益を出して成長を続けられる)とまでは断言できないのである。

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