太陽神ルーフ、海の守護神マナナン・マクリア

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太陽神ルーフ

アイルランドのケルト神話に登場する太陽神ルーフは、『光・輝き』を意味する言葉を名前に持つ、美しくて勇敢な英雄王であった。容姿端麗な美男子の太陽神ですが、勇敢さと強さだけではなくて、賢さと知性も併せ持つ神であり、あらゆる技芸・能力に秀でているという万能に近い属性を持っていました。

太陽神ルーフの血統はその輝かしい容貌や能力からすると異端なものであり、ルーフはダーナ神族と争った魔族フォモールの怪物バロルの孫だったのです。バロルは相手を見つめるだけで瞬時に殺すことができるという『恐ろしい目』を持つ怪物であり、その見つめるだけで死をもたらす攻撃力の高さによってダーナ神族の神々を苦しめていました。

バロルはケルトの聖職者であるドルイド僧から『いつか孫息子に殺されるであろう』という予言を受けていたので、孫が産まれないように一人娘のエスリンを無人の孤島に監禁することにしました。しかしダーナ神族の神キアンが、無人島の監獄の中へと侵入して、エスリンを身ごもらせることになります。この父キアンと母エスリンの間に生まれた男の子が、後に勇敢な太陽神として成長するルーフでした。

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ルーフは父方のダーナ神族の勇敢な戦士たちの手によって養育されることになり、何者をも恐れない強力な戦士として逞しく成長していきました。ダーナ神族と魔族フォモールとの戦争に、ルーフはダーナ神族の一員として参加し、見るだけで敵を殺せる恐ろしい目を持つ祖父バロルを『投石』によって打ち倒すことに成功しました。ルーフが投げた鋭い石の一撃が、恐ろしい力を持つ祖父バロルの目を破壊してしまったのです。バロルはドルイド僧の予言の通りに、孫息子のルーフから殺されることになりました。

魔族フォモールとの戦争に勝利したダーナ神族は『アイルランドの覇者』として君臨することになり、ルーフは英雄王ヌアザの後を継いで、若くて美しい王としてアイルランドを統治することになったのでした。太陽神かつ英雄王でもあるルーフは、魔法の槍である『ブリューナグ』を力強く投げつけて、獅子奮迅の活躍をしたと伝えられています。太陽神・光の神であるルーフには、それ以外にも『医術・知識・技能・魔術・発明』など様々な属性が当てはめられていました。

魔法の槍のブリューナグは、一度投げつけると次々に自動的に敵を薙ぎ倒していく強力な魔法の武器であり、ブリューナグを持つルーフの姿が自分の腕がまるで武器になっているようにも見えたので『長腕のルーフ』という異名がつけられるようにもなりました。ルーフの息子のクーフリンも父の後を継いで英雄として多くの功績を残した戦いの神でしたが、息子のクーフリンを心配する父ルーフは度々戦場に姿を現して、戦いの疲れ・傷を癒してあげるなど子煩悩な一面も持っていました。

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海の守護神マナナン・マクリア

海の守護神マナナン・マクリアは漁師や水夫たちの信仰を集めた海の神であり、海の彼方にあるとされた楽園ティル・ナ・ノーグの王でもありました。ケルト神話に登場するマナナン・マクリアは、古代ギリシア神話におけるポセイドン(ネプチューン)の位置づけとなる神でもあります。

楽園ティル・ナ・ノーグは、あらゆる欲望が満たされる平和で豊かな楽園であり、そこにはいくら食べても尽きることのない二頭の豚がいて、いつでも大量の実がなっている林檎の木があり、いくら飲んでも決して無くなることのないエール酒がありました。

楽園ティル・ナ・ノーグにまつわるエピソードには、日本の昔話の『浦島太郎』に似た『冒険者ブランの物語』が残されています。冒険者ブランは美しい乙女に誘われて、ある日マナナン・マクリアの支配する『海の国』を訪問して、『海の国・楽園』でこれ以上ないというほどの享楽的な歓待と最高級のもてなしを受けることになりました。

この世の最高の快楽を味わって、楽園における至福の時間を満喫した冒険者ブランが、故郷のアイルランドに帰ってみると、何といつの間にか『数百年以上もの時間』が経過していて、自分を知っている者は誰も生き残っていなかったのでした。この冒険者ブランの物語は、竜宮城で至福の時間を過ごした浦島太郎が、村に戻って『玉手箱』を開けると数百年以上の時間があっという間に経過してしまったというお話に似ています。

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海の神マナナン・マクリアという名前は『マン島』に由来するともされますが、マン島にはマナナン・マクリアの玉座があって彼は魔法の剣・船・馬などを持っていて、親しくて仲の良かった太陽神ルーフにそれらの魔法の道具を貸し与えていたという逸話が残されています。

マナナン・マクリアは海に当たる太陽の光の反射によって色が変わる魔法のマントを羽織っており、海の王者の貫禄と威厳を漂わせながら、海を走る魔法の馬車に乗って海上を駆け回っているのです。海の気象を自由自在にコントロールできる『魔法の杖』も持っており、この魔法の杖をひと振りするだけで波を荒げて嵐を引き起こしたり、逆に波や風を弱めて穏やかな海にしたりすることができました。

マナナン・マクリアの妻は絶世の美人とされたファンズでしたが、マナナン・マクリアは妻ファンズと英雄クーフリン(太陽神ルーフの息子)との不倫に長く悩まされたので、妻ファンズが二度と英雄クーフリンと密会できないように『魔法のマント』を振って二人の関係を永遠に引き裂いたと伝えられています。海と楽園の支配者で万能に近いマナナン・マクリアであっても、美しい妻ファンズの浮気・不倫に対する嫉妬心は抑えられなかったようなのです。

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