血清乳酸脱水素酵素(LDH)・尿酸(UR)・クレアチニン(Cre)

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5種類のアイソザイムをもつ血清乳酸脱水素酵素(LDH)

血清乳酸脱水素酵素(LDH)とは、ブドウ糖を分解してエネルギーを得る酵素であり、身体各部の細胞組織にLDHは存在しています。LDHは肝臓・腎臓・心臓・筋などに多く存在するので、肝機能障害・心筋梗塞・腎障害・筋炎などの診断に用いられることがあり、正常な基準値は『210~420IU/l』となっています。LDHは全身の細胞に存在しているので、LDHの異常値だけから確定診断を行うことはできず、疾患を特定するためには他の血液検査や精密検査と組み合わせて総合的に診断しなければなりません。

また、病気でなくても妊娠中の女性や産まれたばかりの赤ちゃんでは、血清乳酸脱水素酵素(LDH)の分量が増加しますし、激しいスポーツ(運動)によってもLDHの数値が一時的に上昇します。LDHは、高い数値を取った場合に病気の疑いを示すことになりますが、異常値が見られた場合には『LDHアイソザイム検査』を行って『病気の部位』を特定していくことができます。アイソザイムとは『酵素としての活性が同じで、アミノ酸配列が異なる酵素』のことで、LDHには『LDH1・LDH2・LDH3・LDH4・LDH5』の5種類のアイソザイムが確認されています。LDH1~LDH5までのアイソザイムはそれぞれ存在する器官(臓器)が異なっているので、どのアイソザイムの数値が高くなっているのかを見ることで、どの器官に異常(疾患)が発生しているのかを大まかに特定していくことができます。

LDH1とLDH2は『心臓・赤血球・腎臓』に多く存在し、LDH2とLDH3は『脳・肺・白血球・大腸・リンパ節』、LDH4は『肺・膵臓・脾臓・皮膚』、LDH4とLDH5は『肝臓・骨格筋』に多く存在しています。LDHアイソザイムの分量を調べることで『どこの器官の異常・病気』があるのかを大雑把に特定することができ、『心筋梗塞・急性肝炎・肝臓がん・すい臓がん・胃がん・白血病・筋ジストロフィー・腎障害』などさまざまな疾患の早期発見の参考にすることができるのです。

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尿酸(UA)・血清尿素窒素(BUN)

尿酸(UA)は、細胞の核内部にある核酸(DNA・RNA)の構成成分であるプリン体が分解されてできる物質で、つらい疼痛に悩まされる『痛風』の原因物質として知られています。尿酸は有害な代謝物質なので腎臓で濾過されて尿として排泄されますが、腎機能に障害があったり尿酸の産生が多すぎたりすると尿酸を処理し切れなくなり『痛風』という病気が発症します。

尿酸の元になる『プリン体』は、高カロリーの食事やエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の代謝、核酸の代謝によってつくり出されますが、1日に約700mgの尿酸が作り出されるとされています。しかし、つくり出された尿酸とほぼ同量の尿酸が、腎臓や腸から排泄されるので、健康な状態であれば尿酸値が過度に高まる危険はありません。尿酸の基準値は『3~7mg/dl』であり、7.1mg/dl以上で高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症になると、血液中で尿酸とナトリウムが結合して『尿酸塩』を産生し、この尿酸塩が手や足の指先に蓄積したり関節に溜まったりすると、強烈な痛みを感じる『痛風』が発症します。痛風は生活習慣病の一種とされており、『メタボリックシンドローム・飲酒・精神的ストレス』などがリスクファクターになりますが、生活習慣病以外にも『降圧利尿剤の服用(腎機能に影響する薬剤服用)・腎障害・血液疾患(白血病・悪性リンパ腫・溶血性貧血』などの二次的要因によって尿酸値が高まっていくことがあります。

高尿酸血症になると、痛風以外にも糖尿病や高血圧、高脂血症、心筋梗塞(動脈硬化)などの合併症を起こすリスクが高くなるので、薬物療法だけでなく食事療法と運動療法を適切に組み合わせていくことが必要です。反対に、尿酸値が低くなりすぎる低尿酸血症の場合には、アルコール性肝炎、ウィルソン病、ホジキン病、キサンチン血症、PRPP合成酵素欠損症、ヘモクロマトーシスなどの恐れがあります。

血清尿素窒素(BUN)とは、肝臓でアンモニアと二酸化炭素から作られる物質で、タンパク質の代謝産物として排出される物質のことです。肝臓で生成された尿素窒素(BUN)は、最終的には腎臓の糸球体で濾過されて尿中へと排泄されることになりますが、腎機能が低下すると血中濃度が高くなります。そのため、血清尿素窒素(BUN)は腎機能の障害を調べる検査に用いられ、年齢・性別・食事傾向によって若干の違いが出ますが基準値は『8~21mg/dl』となっています。40~50mg/dl以上になると、何らかの腎機能障害が想定されますが、血清尿素窒素の数値が高い場合には『尿素窒素の排泄障害』『尿素窒素の過剰産生』の二つのケースを考えることができます。

『尿素窒素の排泄障害』では、腎不全・慢性腎炎・尿路関連疾患を考えることができ、『尿素窒素の過剰産生』では、食習慣の問題(高カロリー・高たんぱくの食事)・糖尿病・甲状腺機能亢進症・がんなどを考えることができます。逆に、血清尿素窒素の数値が低くなり過ぎている場合には、『尿素窒素の産生機能の低下』を引き起こす重症度の高い肝機能障害(肝硬変・劇症肝炎)の恐れがあります。『尿素窒素の過剰排泄』を引き起こすマニトール利尿・尿崩症によっても、血清尿素窒素の数値は過度に低くなってしまいます。有害物質の排泄機能が低下してしまう腎障害が発症した場合には、激しい運動を避けて『低たんぱくの食事療法』を心がける必要があります。

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クレアチニン(Cre)

クレアチニン(Cre)はタンパク質代謝の最終産物であり、筋肉においてエネルギー代謝が行われた時に排出されます。クレアチニンは老廃物を濾過する腎臓(糸球体)へと送られて処理されますが、筋肉でのエネルギー代謝によってクレアチニンは産生されるので筋肉量が多い人ほどクレアチニンの量が多くなり、男性のほうが女性よりもクレアチニンが多くなります。腎機能が低下しているとクレアチニンを尿中に十分に排泄できなくなり、クレアチニンの数値は高くなります。クレアチニンの濃度は腎機能にほとんどすべてを依存しているので、クレアチニン検査は『腎機能(糸球体機能)の健康度を測定するスクリーニング』として実施されています。

クレアチニンの正常な基準値は、『男性:0.7~1.1mg/dl,女性:0.5~0.8mg/dl』となっていて、クレアチニンの数値が高くなると腎機能障害が疑われることになります。男性では1.4mg/dl以上、女性では1.1mg/dl以上で腎障害の可能性が高くなり、更に詳しい精密検査(クレアチニン・クリアランス,CTスキャン,腎生検)を受ける必要性が出てきます。クレアチニン検査の数値が高くなったときには、腎実質障害(急性腎炎・慢性腎炎)の可能性があり、腎障害が深刻になって10mg/dl以上になると、重症例の腎不全や尿毒症になります。腎障害以外にも、腎臓結石や腎盂腎炎のような尿路閉塞疾患でもクレアチニンの数値は高くなります。腎障害が重症化して尿毒症を起こすような場合には、人工透析による治療が必要になってきます。筋肉量が低下するとクレアチニンの数値も低下するので、その場合には筋肉関連の疾患を疑う必要もでてきます。

ビリルビン(Bil)

ビリルビン(Bil)は、皮膚の色を黄色くする黄疸(おうだん)の原因物質であり、胆汁に多く含まれることで胆汁色素とも言われます。ビリルビンは赤血球のヘモグロビンが破壊される時に作られる黄色の色素であり、ビリルビンには肝臓で産生される水溶性の『直接型ビリルビン』と血中のアルブミンと結合する『間接型ビリルビン』があります。胆嚢で生産される胆汁とは、ビリルビンと胆汁酸・レシチンが結合したものです。直接型ビリルビンが多いか間接型ビリルビンが多いのかによって、予測される診断の可能性が変わってきます。

ビリルビンの正常な基準値は、総ビリルビンが『0.2~1.2mg/dl』であり、直接型ビリルビンが『0.4mg/dl以下』、間接型ビリルビンが『0.8mg/dl以下』となっています。2.0mg/dl以上までビリルビン量が増えてくると、白目が黄色く濁ってくるなどの外観的な所見が顕著になってきます。高ビリルビン血症による黄疸が表れる場合に、直接型ビリルビンが多ければ『肝細胞性黄疸(肝炎・肝硬変・アルコール性肝炎・肝がん・胆石症)』の可能性が考えられ、間接型ビリルビンが多ければ『溶血性黄疸(溶血性貧血・悪性貧血・敗血症・甲状腺機能低下症など)』の可能性が考えられます。

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