中国(中華人民共和国)の憲法 第五条~第八条

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中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。

社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。

中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。

ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。

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初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)

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第五条(法治)

1.中華人民共和国は、法により国を治めることを実行し、社会主義法治国家を建設する。

2.国家は社会主義法制の統一及び尊厳を護る。

3.一切の法律、行政法規及び地方の法規は、すべて憲法に抵触してはならない。

4.一切の国家機関及び武装力量、各政党及び各社会団体、各企業事業組織は、すべて憲法及び法律を必ずや遵守しなければならない。憲法及び法律に違反する一切の行為は、すべて追及しなければならない。

5.いかなる組織または個人も憲法及び法律を超越する特権を有してはならない。

[解釈]

中国は核心的利益に基づく海洋進出、対日本の尖閣諸島(魚釣島)侵犯などによって、国際社会から『法秩序を守らない国』として批判されることも多いが、憲法上は中国は憲法と法律に従って運営される『法治国家』として定義されている。

中国も憲法に抵触しない法律しか有効にならないという『立憲主義』の仕組みに言及しており、あらゆる個人と組織は憲法及び法律を超越する特権を持つことができないとされているが、現実的には『中国共産党(民主集中制に依拠した社会主義の実践主体)』は憲法の規範を超えた規制や処罰をする潜在的可能性を保持している。

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第六条(社会主義経済制度)

1.中華人民共和国の社会主義経済制度の基礎は、生産手段の社会主義公有制、即ち、全人民所有制及び勤労大衆集団所有制である。社会主義公有制は、人が人を搾取する制度を消滅させ、能力に応じて働き、労働に応じて分配するという原則を実行する。

2.国家は社会主義初級段階においては、公有制が主体となり、多種の所有制経済が共同で発展するという基本経済制度を堅持し、労働に応じた分配が主体となり、多種の分配方式が併存する分配制度を堅持する。

[解釈]

中華人民共和国はトウ小平の改革開放路線以後は、実質的に他の資本主義国と類似した経済体制で運営されているが、憲法が定める経済制度の原則は生産手段を公有化・国有化する『社会主義経済制度』である。

共産主義社会の実現を目指すマルクス主義や毛沢東思想のテーゼである『能力に応じて働き、労働(必要)に応じて分配するという原則』が掲げられており、人間の私利私欲に基づく階級主義的な搾取を戒める経済的規範が示されている。格差が拡大を続けている現実の中国とは異なる『平等かつ公正な社会主義的分配の理想論』が語られている。

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第七条(国有企業)

国有企業は、即ち社会主義全人民所有制経済であって、国民経済における主導力量(国民経済を牽引する主導力)である。国家は国有企業の強化及び発展を保障する。

[解釈]

中国は社会主義国家としての建前を取り、社会主義経済制度によって経済活動を運営することになっているので、利潤追求を目的とする私企業(民間企業)は存在しないということになっている。実際には、中国にも国有企業とは名ばかりの実質的な株式会社・大富豪が所有する財閥が多く存在しており、海外投資家・投機機関(ファンド)の投資対象となっていて景気がバブル的に過熱していたりもする。

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第八条(集団経済組織)

1.農村集団経済組織は、家庭請負経営が基礎となり、統一と分割とが結合する二層経営体制を実行する。農村における生産、供給・販売、信用、消費等の各種形式の協同組合経済は、社会主義勤労大衆集団所有制経済である。農村集団経済組織に参加する勤労者は、法律が定める範囲内において自留地(一時的な私有地)、自留山(一時的な私有山)、家庭副業を経営し、自留畜(一時的な私有の家畜)を飼う権利を有する。

2.都市部における手工業、工業、建築業、運輸業、商業、サービス業等の業種の各種形式の協同組合経済は、すべて社会主義勤労大衆集団所有制経済である。

3.国家は、都市・農村の集団経済組織の合法的権利及び利益を保護し、集団経済の発展を奨励し、指導し、及び援助する。

[解釈]

中国の社会主義的な経済制度のことを『社会主義勤労大衆集団所有制経済』と呼んでいるが、これは労働者階級を社会の中心的階級と定義して、その集団労働の成果を平等に分配すべきとする社会主義経済の実践形態のことなのである。

中国では都市部においても農村部においても、個人の私的利益を追求する経済活動は否定されており、労働者の集団単位で経済活動を実践してその成果を平等に分配することが奨励されていて、国家もそういった集団経済組織の合法的な権利・利益を保護すると宣言している。

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