中国(中華人民共和国)の憲法 第一三条~第一六条

スポンサーリンク

中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。

社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。

中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。

ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。

参考文献(ページ末尾のAmazonアソシエイトからご購入頂けます)
初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)

楽天AD

第一三条(私有財産)

1.市民の合法的私有財産は、侵すことはできない。

2.国家は、法律の定めに従って市民の私有財産権及び相続権を保護する。

3.国家は、公共の利益の必要のために、法律の定めに従って市民の私有財産に対して収用または徴用を実行し、かつ、補償を与えることができる。

[解釈]

中国における『限定的な私有財産・私的所有権』について定めた条文である。中国でも人民・市民の私有財産は『法律に従った範囲内(合法性の範囲内)』で保護されているのだが、その私有財産の保護のレベルは不可侵や強い保護ではなく、中国共産党の定める法の方針転換によっては私有財産が没収されてしまうようなリスクもないとは言えないのである。

第13条3項では、中国が国家として『公共の利益』のために、法律に従って人民・市民の私有財産を収用(活用)したり徴用(没収)したりできると明言されている。

楽天AD

第一四条(経済・社会政策)

1.国家は、勤労者の積極性及び技術水準を向上させ、先進的な科学技術を普及させ、経済管理体制及び企業経営管理制度を完全なものとし、各種の形式の社会主義責任制度を実行し、労働組織を改進することを通して、以て労働生産性及び経済効率を向上させ、社会的生産力を発展させる。

2.国家は、節約を励行し、浪費に反対する。

3.国家は、蓄積及び消費を合理的に均衡させ、国家、集団及び個人の利益にすべて配慮し、生産を発展させるという基礎の上に、人民の物質生活及び文化生活を徐々に改善させる。

4.国家は、経済発展水準と健全に相応する社会保障制度を確立する。

[解釈]

中華人民共和国の社会主義経済制度を前提とした『経済政策・社会政策・社会保障の目標設定』を定めた条文である。中国も他の先進国と同様に近代国家の経済制度の目標として、『労働者の労働意欲の向上+科学技術水準の向上』を掲げているが、自由市場の開放や市場原理の支配は警戒しており、中央政府による経済と企業の管理体制についても言及している。

膨大な人口が存在する中国の全人民の生活水準を向上させていくということは簡単な目標ではないが、憲法では人民の物質生活と文化的生活を段階的に徐々に改善していくという現実的目標が定められている。人民の老後・障害・病気などを保障するための『社会保障制度』についても、中国の経済発展のレベルに合わせた制度を段階的に整備していくといった姿勢である。

スポンサーリンク

第一五条(社会主義市場経済)

1.国家は、社会主義市場経済を実行する。

2.国家は、経済立法を強化し、マクロコントロールを完全なものとする。

3.国家は、法により、いかなる組織または個人にも社会経済秩序を擾乱することを禁じる。

[解釈]

中国が市場と金融(為替)を開放する『改革開放路線』を保障した条文である。中国では社会主義体制における部分的かつ実験的な市場経済(資本主義)の導入のことを、『社会主義市場経済』と呼んで国家が主導してこれを実行すると宣言している。

中国は法律に従って、中国共産党が主体となって確立し維持している『社会的・経済的・法的な現行秩序』を乱したり破壊したりする行為の一切を禁止しているのである。

楽天AD

第一六条(国有企業自主権)

1.国有企業は、法律の定めの範囲内において、自主経営の権利を有する。

2.国有企業は、法律の定めに従って、従業員代表大会及びその他の形式を通して、民主的管理を実行する。

[解釈]

国有企業は一方的に国家の指導・命令に従って機械的に運営される企業体ではなく、中国共産党・全人代が承認する法律の定めの範囲内ではあるが、『自主経営の権利』が保障されている。

国有企業は中国の全国人民代表大会と同じように、『従業員代表大会』というような民主的な経営方針や従業員(社員)の福利厚生のための全体会議を開催しなければならず、国有企業もまた民主的管理によってその従業員の給与・生活・福利の向上に努めなければならないのである。

スポンサーリンク
Amazon
Copyright(C) 2015- Es Discovery All Rights Reserved