中国(中華人民共和国)の憲法 第二一条~第二四条

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中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。

社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。

中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。

ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。

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初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)

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第二一条(医療・衛生・体育)

1.国家は、医療衛生事業を発展させ、現代医療及び我が国の伝統医薬を発展させ、農村集団経済組織、国家企業事業組織及び街道組織が興す各種医療衛生施設を奨励し、及び支援し、大衆的衛生活動を展開させ、人民の健康を保護させる。

2.国家は、体育事業を発展させ、大衆的体育活動を展開し、人民の身体の質を強める。

[解釈]

『健全な肉体に健全な精神が宿る』というわけではないが、近代国家は国民の健康・体力・医療の水準を高めることを国家的課題として掲げてきた。中国もまた『医療・衛生・薬』の発展と向上を国家的課題として掲げており、漢方医学(中医学の漢方薬を利用した伝統医療)などの再興にも力を入れる姿勢を示しているのである。

国家の国力や防衛力(軍事力)の基本として『国民の健康・身体能力』があり、中国を含む近代国家の多くは、『国民の体力増進のための体育事業』を推進することが多い。

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第二二条(文化事業)

1.国家は、人民に奉仕し、社会主義に奉仕する文学芸術事業、報道・放送・テレビジョン事業、出版・発行事業、図書館・博物館・文化館及びその他の文化事業を発展させ、大衆的文化事業を展開する。

2.国家は、名勝旧跡、稀少貴重文化財及びその他の重要歴史文化遺産を保護する。

[解釈]

中国は、人民に奉仕するための『文学芸術事業・報道や出版・テレビやラジオなどメディア事業・図書館や博物館などの文化振興施設』を発展させることを国家的目標として掲げているが、それらは人民の文化や教養、娯楽のためだけに発展させられるのではなく『社会主義的なシステム・体制』を維持するために発展させられるという制限がついている。

現在の中国は、万里の長城や天安門広場、紫禁城など歴史的建造物などを鑑賞するための観光事業にも非常に力を入れているが、憲法においても名勝旧跡をはじめとする重要歴史文化遺産の保護が謳われている。

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第二三条(専門家・知識人)

国家は、社会主義に奉仕する各種の専門的人材を養成し、知識分子の隊伍を拡大し、その条件を創出し、社会主義現代化建設における彼らの働きを充分に発揮させる。

[解釈]

同じ社会主義でも『素朴な原始共産制(農業中心の協働的・平等分配的な共同体)』を目指したカンボジアのポルポト政権などは、知識人・文化人を反社会主義的な危険分子として敵視して処刑したりもしたが、中国は『社会主義体制の維持・強化』に役立つ知識人・文化人の専門化を積極的に育成するという姿勢を示している。

無論、社会主義に奉仕する役割を持った専門化や知識人が求められているという条件つきなので、『社会主義に反対する思想・価値観・国家理念』などの提唱をする知識人はその存在を許されにくい。そのため、中国共産党批判に当たる過剰な啓蒙活動や宣伝行為を行えば逮捕・処罰を受ける可能性もあるので、完全に言論・思想信条の自由や知性の発揮が認められているとは言い難い。

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第二四条(社会主義精神文明)

1.国家は、理想教育、道徳教育、文化教育、紀律及び法制教育を普及させることを通し、都市・農村の様々な範囲の大衆において各種の守則、公共の約束を制定及び執行することを通して、社会主義精神文明の建設を強める。

2.国家は、祖国を愛し、人民を愛し、労働を愛し、科学を愛し、社会主義の公共道徳を愛することを提唱し、人民において愛国主義、集団主義及び国際主義、共産主義の教育を行い、弁証法に基づく唯物論及び史的唯物論の教育を行い、資本主義、封建主義及びその他の堕落した思想に反対する。

[解釈]

社会主義国家(共産主義国家)としての中華人民共和国の『思想教育・価値観教育』の方向性が明確かつ強烈に打ち出されている条文である。中国では、日本で『国家による特定の価値観や生き方の押し付け』として批判・非難されることも多い道徳教育や愛国心教育が大々的に承認されて推進されているのが特徴である。

中国の教育政策の中心にあるのは『マルクス・レーニン主義+毛沢東思想の社会主義』と『協働意識・労働賛美・平等配分の社会主義精神文明』である。そして、中国の理想教育と道徳教育は、この『社会主義精神文明(中国共産党が主導する精神文明)』を支持して推進する人民の育成を目指していると言えるのだろう。

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