中国(中華人民共和国)の憲法 第四一条~第四四条

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中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。

社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。

中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。

ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。

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初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)

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第四一条(国家及び国家任務遂行要員に対する批判・建議,国家賠償)

1.中華人民共和国市民は、いかなる国家機関及び国家任務遂行要員に対しても、批判・建議を提出する権利を有する。いかなる国家機関及び国家任務遂行要員の違法な職務失当行為に対しても、関係国家機関に不服申し立て、告訴または告発を提出する権利を有する。但し、事実を捏造し、または歪曲して誣告(ぶこく)を行ってはならない。

2.市民の不服申し立て、告訴または告発に対しては、関係国家機関は事実を調査して明らかにし、処理に責任を負わなければならない。いかなる人も抑圧及び報復してはならない。

3.国家機関及び国家任務遂行要員が市民の権利を侵犯したために損失を受けた人は、法律の定めに従って賠償を得る権利を有する。

[解釈]

中華人民共和国が『人民(市民)の批判・不服・抗弁・建議』を受け容れないような独裁国家ではないと宣言している条文であり、人民は国家機関や公務員に対して『国家損害賠償請求訴訟』を提訴することも可能であると定められている。

現実の中国には言論の弾圧や政治的な独裁による人権侵害の問題が少なからず残されているが、憲法の規定としては市民は国家に対して『不服申し立て・告訴・告発』をすることができる国家と対等な関係であるとされ、実際に国家によって市民の権利が侵害されてしまった時には『賠償を要求して受け取る権利』を持っているとされる。

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第四二条(労働の権利及び義務)

1.中華人民共和国市民は、労働の権利及び義務を有する。

2.国家は、各種の手段を通して、労働就業条件を創造し、労働者保護を強め、労働条件を改善し、かつ生産を発展させるという基礎において、労働報酬及び福利待遇を向上させる。

3.労働は、労働能力を有する一切の市民の光栄ある職責である。国有企業及び都市・農村集団経済組織の労働者は、すべて国家の主人公の態度を以て、自己の労働に対さなければならない。国家は、社会主義的労働競争を提唱し、模範勤労者及び先進的な任務遂行者を奨励する。国家は、市民が奉仕的無報酬労働に従事することを提唱する。

4.国家は就業前の市民に対して必要な労働就業訓練を行う。

[解釈]

中華人民共和国の憲法では日本国憲法と同じく『労働の義務及び権利』が定められており、共産主義国家(プロレタリアート独裁国家)のテーゼとして『労働者こそが国家の主人公であるという前提』を高らかに宣言している。

利益追求の経済至上主義を否定して、『労働者の労働報酬および福利待遇の向上』が目標に掲げられており、労働者保護のために労働条件の改善に努め、すべての労働者が就業できるように国家が必要に応じた就業訓練を行えるともしている。

『国家は、市民が奉仕的無報酬労働に従事することを提唱する』という部分は、大規模な国家事業や国防政策などに関連して、報酬のない強制労働(ボランティア的な労働力の徴発)の可能性について示唆しているようにも読める。

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第四三条(労働者の休息の権利)

1.中華人民共和国の勤労者は、休息の権利を有する。

2.国家は勤労者が休息・休養する施設を発展させ、従業員の勤務時間及び休暇制度を定める。

[解釈]

中華人民共和国市民の勤労者(労働者)には、『休息の権利(休日を取る権利)』があるという項目である。

日本でもブラック企業・ブラック労働の労働基準法違反(休みが異常に少ない長時間労働)などが問題になっているが、中国も憲法規定の上では、それらのブラックな労働環境をなくすために『労働法制の整備・勤労者の勤務時間や休暇制度の法規制』を進めていくとされている。

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第四四条(退職休養制度)

国家は、法律の定めに従って、企業事業組織の従業員及び国家機関任務遂行要員の退職休養制度を実行する。退職休養人員の生活は、国家及び社会の保障を受ける。

[解釈]

中華人民共和国における社会保障制度の整備に関する項目である。国家は退職休養後(退職後・老後)の民間企業の従業員及び公務員に対して、生活保障のための一定水準の給付を行うような社会保障制度を整えていくことを掲げている。

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