中国(中華人民共和国)の憲法 第六五条~第六八条

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中国憲法の『序言』では、中国が1840年以後の帝国主義列強による半植民地化の屈辱の歴史を、孫文の『辛亥革命(1911年)』と毛沢東・中国共産党の『共産主義革命(1949年)』によって乗り越え、中国人民が国家主権を取り戻したことが宣言されている。1949年の毛沢東の共産主義革命によって、中国人民が国家権力を掌握したとされる『中華人民共和国』が成立することになった。

社会主義によって運営される中華人民共和国では、資本家階級による労働者階級の搾取が消滅したと宣言され、人民を平等にするプロレタリアート独裁(労働者階級の独裁)が確立して生産手段が国有化された。共産主義革命は『帝国主義・封建主義・官僚主義の統治』を転覆させ、中国人民と人民解放軍は『帝国主義と覇権主義の侵略・破壊・挑発』に勝利するところとなった。

中国の全人民は社会主義と人民民主独裁制を堅持し、『マルクス・レーニン主義・毛沢東思想・トウ小平理論』を手引きとして、中国共産党の領導に従うものとする。台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部であり、祖国統一は中国人民の職責である。中国は全国の各民族人民が共同して創建された統一的な多民族国家である。本憲法は国家の根本法であり、最高の法的効力を有している。

ここでは、『中華人民共和国憲法(中国憲法)』の条文と解釈を示していく。

参考文献(ページ末尾のAmazonアソシエイトからご購入頂けます)
初宿正典, 辻村 みよ子『新解説世界憲法集 第2版』(三省堂),高橋和之『世界憲法集』(岩波文庫),阿部照哉, 畑博行『世界の憲法集』(有信堂)

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第六五条(全国人民代表大会常務委員会の構成)

1.全国人民代表大会常務委員会は、以下の要員が構成する。

委員長

副委員長 若干名

秘書長

委員 若干名

2.全国人民代表大会常務委員会構成員のうちには、適切な数の少数民族代議員がなければならない。

3.全国人民代表大会は、全国人民代表大会常務委員会の構成員を選挙し、かつ、罷免する権利を有する。

4.全国人民代表大会常務委員会の構成員は、国家行政機関、裁判機関および検察機関の職務を担任してはならない。

[解釈]

中国の最高国権機関である『全国人民代表大会(全人代)』を召集する権限を持つのが、全国人民代表大会常務委員会である。全国人民代表大会常務委員会の構成員は全人代によって選挙されたり罷免されたりする。

中国は広大な国土と多くの少数民族を抱える多民族国家であるから、『少数民族の存続・権利・要請』を代表するために、全国人民代表大会常務委員会の中に適切な数の少数民族の代表者である代議員が含まれていなければならないとしている。中国のアファーマティブ・アクション(積極的差別是正策)の一環である。

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第六六条(全国人民代表大会常務委員会の任期)

1.全国人民代表大会常務委員会の毎期の任期は、全国人民代表大会の毎期の任期と同じであり、それが職権を行使するのは、次期の全国人民代表大会代議員が新たな常務委員会を選挙するまでである。

2.委員長、副委員長が連続して職に任ずるのは、二期を超えてはならない。

[解釈]

全国人民代表大会の常務委員会の任期は、『全人代と同じ1年間』が原則とされており、次の全人代において新たな常務委員会を選出するための選挙が行われることになる。基本的には同一人物が長く延々と常務委員会に居座って権力を握り続けることの防波堤として、常務委員会の任期が定められていると考えられる。

特に全国人民代表大会常務委員会の中で大きな権限を得ることになる『委員長・副委員長』については、『三選(三期連続の就任)』が明確に禁止されている。

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第六七条(全国人民代表大会常務委員会の職権)

1.憲法を解釈し、憲法の施行を監督する。

2.全国人民代表大会が制定しなければならない法律以外のその他の法律を制定し、および、改正する。

3.全国人民代表大会閉会期間において、全国人民代表大会が制定した法律に対して部分的に補充し、および、改正する。ただし、当該法律の基本原則と抵触してはならない。

4.法律を解釈する。

5.全国人民代表大会閉会期間において、国民経済および社会発展計画、国家予算の執行過程において行わなければならない部分的調整プログラムを審査し、および、承認する。

6.国務院、中央軍事委員会、最高人民法院および最高人民検察院の任務遂行を監督する。

7.憲法、法律と抵触する国務院が制定する行政法規、決定、命令を取り消す。

8.省、自治区、直轄市の国家権力機関が制定する憲法、法律および行政法規と抵触する地方性法規および決議を取り消す。

9.全国人民代表大会閉会期間において、国務院総理の指名に基づいて、部長、委員会主任、監査長、秘書長の人選を決定する。

10.全国人民代表大会閉会期間において、中央軍事委員会主席の指名に基づいて、中央軍事委員会のその他の要員の人選を決定する。

11.最高人民法院院長の提案に基づき、最高人民法院副院長、裁判員、裁判委員会委員および軍事法院院長を任免する。

12.最高人民検察院検察長の提案に基づき、最高人民検察院副検察長、検察員、検察委員会委員および軍事検察院検察長を任免し、かつ、省、自治区、直轄市の人民検察院検察長の任免を承認する。

13.駐外全権代表の任免を決定する。

14.外国と締結する条約および重要な協定の承認および廃棄を決定する。

15.軍人および外交要員の官等制度およびその他の専門官等制度を定める。

16.国家の勲章および栄誉称号を定め、および、授与を決定する。

17.特赦を決定する。

18.全国人民代表大会閉会期間において、国家が武力侵犯を受け、または国際的に共同して侵略を防止する条約を履行しなければならない情況にある場合には、戦争状態を宣布する。

19.全国総動員または局部動員を決定する。

20.全国または個別の省、自治区、直轄市が緊急状態に入ったことを決定する。

21.全国人民代表大会が授与するその他の職権。

[解釈]

中華人民共和国の最高の国権機関・立法機関である『全国人民代表大会(全人代)』は、更に元老院のような執行部としての『常務委員会』を選出する。第67条では全人代の常務委員会の広範な職権が一覧表として示されている。

全国人民代表大会の常務委員会は、憲法と法律を解釈する権限を持ち、閉会中には独自の法律も制定することが可能なことから、『準立法機関』としての非常に強い影響力を持っているといえる。全国人民代表大会が閉会している期間においては、この常務委員会が実質的な国家権力を保有しており、国務院や中央軍事委員会、最高法院などの人事権も代理的に行使することが可能な規定になっている。

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第六八条(全国人民代表大会常務委員会の委員長・副委員長・秘書長)

1.全国人民代表大会常務委員会委員長は、全国人民代表大会常務委員会の任務遂行を主催し、全国人民代表大会常務委員会会議を召集する。副委員長、秘書長は、委員長の任務遂行を助ける。

2.委員長・副委員長・秘書長は委員長会議を構成し、全国人民代表大会常務委員会の重要な日常的任務遂行を処理する。

[解釈]

中国の立法機関である『全国人民代表大会(全人代)』には、執行部としての常務委員会があり、その常務委員会では『委員長・副委員長・秘書長』が選任されることになる。

全人代の常務委員会の代表である委員長・副委員長・秘書長は『委員長会議』を構成して、常務委員会の職権・任務の遂行を主導・補佐して処理していくことになる。

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