「アイディアライズド・セルフ(idealized self)」,「Identified Patient」

このウェブページでは、「アイディアライズド・セルフ(idealized self)」と「Identified Patient」の用語解説をしています。


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アイディアライズド・セルフ(idealized self)

客観的な事実や自己の感情体験との矛盾が生じやすい『観念的な自己概念(自己認知)』のことをアイディアライズド・セルフと呼ぶ。融通の利かない硬直したアイディアライズド・セルフのままに行動し続けていると、環境不適応や情緒不安定といったマイナスの状況に自分を追い込んでしまうこともある。

不適応なアイディアライズド・セルフの形成は、認知理論でいう『自己否定的で強迫的な認知の歪み』とも密接に関わっている。自己概念とは、『私は○○のような人間である』『私は○○といった特徴や理想を持っている』といった自己に対するイメージや認識のことである。理想的な自己の生活状態や対人関係のイメージとして、アイディアライズド・セルフをうまく用いれば、自己啓発的な効果を期待できることもある。

強い義務感に縛られて仕事一筋で頑張り続けた人が、燃え尽き症候群のような抑うつ感と無気力がのしかかってくるような疲憊状態に陥ることがある。『自分を心身の限界状況まで追い込むような仕事への過度な責任感と自己の安楽の放棄』は、固定観念にも似たアイディアライズド・セルフから生まれてくる。そういった時には、周囲の人たちの期待や評価を取り入れすぎて、自分で自分の欲求や感情に気付き難くなっていることが多い。

過度な責任感によるプレッシャーと極度の疲労感を感じているときには、『自分が本当にやりたいことは何か?』『自分に今、必要な行動は何か?』を自省してみると良い。『~しなければならない』という自分だけのルールに束縛されすぎずに、適度な休息や娯楽を取り入れながら仕事や課題をこなすようにしよう。

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Identified Patient

アイデンティファイド・ペイシエントとは、家族療法や家族システム論において用いられる概念で、『患者とみなされた者・不適応の指標となる者』といった意味である。基本的に、家族療法では、家族の訴えで問題があるとみなされているクライアントのみが、病的であるとか異常であるとは考えない。家族は、相互に作用し合う家族成員から構成される機能的で統合的なシステムであるから、家族の一人に問題行動や精神症状が起こった場合にも、彼(彼女)一人に問題や原因があるわけではないことが多い。

家族システム論を前提とした家族療法を行う場合には、不登校や家庭内暴力、児童虐待、嗜癖(依存症)、抑うつ感などの不適応行動や精神症状の原因を抱えた人をとりあえず患者(来談者)と見なして『アイデンティファイド・ペイシエント』と呼ぶのである。そして、家族構成や家庭の生活状況、家族成員それぞれの性格や行動の特徴、家族成員の社会的属性と家庭内での役割などを綿密に聴取しながら、個人に様々な問題が起きている原因を家族全体のシステム的な原因として捉えていく。

家族のメンバーに起こってくる心理的問題や暴力、依存症、摂食障害、ひきこもり、不登校などの症状には、多くの場合、家族相互の人間関係や感情的葛藤が関与している。つまり、IP(患者とみなされた者)だけに問題や悩みがあるわけではなく、家族の行動、発言、振る舞いに対する反応としてその症状や問題行動が維持されているという見方を家族療法は取るのである。家族のメンバーに何らかの心理的問題や行動の異常が現れた場合には、その人だけを治療したりカウンセリングしても十分な効果を得ることが難しい。

家族は相互作用して機能するシステムであるから、IPに相互的な影響を与える家族一人一人が自分自身の行動や性格を振り返り、IPの問題を解決していく方向へと自分自身の行動や考え方を変容させていかなければならない。家族のIPに対する対応が適応的に変容すれば、本人も良い方向に変化するし、本人が回復してくれば、家族のシステムも正常に機能し始めるのである。

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