このウェブページでは、『自己呈示行動』の用語解説をしています。
人間は古代ギリシアのアリストテレスが指摘したように、他者との関わり合いの中で生きる『社会的な動物』であるため、自分が帰属する社会・共同体の中で他人から自分がどのように見られているかを気にする。自己呈示行動(self-presentation)とは、自分が他人からどのように見られているかという自己イメージを意識的あるいは戦略的にコントロールしようとする行動であり、分かりやすく言えば『自分の見え方』についての行動である。
日本文化においては『世間体・見栄・体裁』といった他者に対する自分の見え方(社会・他人に対して恥ずかしくないような自分や家族の見え方)をコントロールしようとする行動が見られたりもするが、これも文化結合型の自己呈示行動の一種と考えることができる。典型的な自己呈示行動には以下のようなものがある。
自己呈示行動は『他者に対する自分の見え方』を管理・制御しようとする行動であるが、自己呈示行動をすることによって『自分にとっての自分の見え方・自分に対する自己定義(自己概念)』も同時に変化してくることがある。
自己呈示を繰り返し行うことによって、『自分にとっての自分の見え方・自分に対する自己定義(自己概念)』も合わせて変化することがある。『自己呈示している自己イメージ』に従う方向で、自分の自己概念(自分がどのような人間であるかという自己認識)まで変化することを『自己呈示の内在化(internalization)』という。自己呈示の内在化のプロセスには『動機的プロセス』と『認知的プロセス』があると考えられている。
モチベーション(動機づけ)と関係する『動機的プロセス』では、自己呈示行動が自己概念と大きく異なっている時に『不快な認知的不協和』の感情が発生して、その認知的不協和を緩和するために自己呈示行動にふさわしい行動をしようとするモチベーションが高まりやすくなる。つまり、元々の自己概念が自己呈示行動とかけ離れている時のほうが、認知的不協和をベースにした『自己呈示の内在化の動機的プロセス』が活発に働きやすくなる。
モデリング(観察学習)と関係する『認知的プロセス』では、自己呈示をしている自分の行動を自分で見ることによって自然に自己概念が修正されてくるというプロセスが想定されている。そのモデリング(観察学習)の影響以外にも、自己呈示行動と関係した過去の記憶をサーチ(検索)することによって、自己呈示と一致する自己概念が選択的に選ばれやすくなるという『バイアスド・スキャニング過程』が指摘されている。元々の自己概念と自己呈示行動に『一致する要素』が多いほど、上記した『自己呈示の内在化の認知的プロセス』が活発に働きやすくなる。
自己呈示の内在化プロセスは、社会的・対人的な相互作用の影響を受けて『自己概念の変容』を進めていくプロセスであるが、自己呈示の内在化のレベル(程度)に影響を与える要因には以下のようなものが知られている。