運動視・色覚の知覚研究

スポンサーリンク

このウェブページでは、「運動視・色覚の知覚研究」の用語解説をしています。


色覚に関するグラスマンの法則

知覚心理学(perceptual psychology)では、感覚器官と脳を介して外界の事物を認識する『知覚のメカニズム』を研究している。知覚研究では『視覚・嗅覚・聴覚・味覚・触覚』の五感が研究対象となるが、『色覚(色を見分ける感覚)』に関する生理学的研究では色の種類と強度を区別する三色説・四色説の仮説が出されている。『色』とは何であるのかという本質を探究するのは困難だが、科学的な色覚現象は『(可視光線である)光の波長』の知覚によって色の違いが生まれると考えられている。太陽光線や電灯の光線をプリズムに通すと、虹のようなさまざまな『色光(しょくこう)』に分光(ぶんこう, =分散)する現象が見られるが、分光した各色の帯のことを『スペクトル』と呼ぶ。

スペクトルに含まれる色光は混ぜ合わせることができ、『混色(こんしょく)』によって元の色とは異なる色を作り出すことができるが、これは絵の具を混ぜ合わせて異なる色を作り出せるのと同じ原理である。分光分布特性が異なる色光でも、混色することで同じ色光に見えることがあるが、この混色による現象を『条件等色・メタメリズム(metamerism)』という。ある色と同じように見えるように複数の色を混色することを『メタメリック・マッチ(metameric match)』というが、分光分布そのものを一致させる作業は『アイソメリック・マッチ(isomeric match)』といわれる。スペクトラムに含まれる色のほとんどは、『赤・緑・青の三色』の条件等色によって表現することが可能であり、この三色説(三原色説)は『C=rR+gG+bB(R=赤,G=緑,B=青,r・g・bは色の強度)』の等色式(とうしょくしき, color equation)で示される。

独立した3つの色があって上記の等色式が成り立つことを『グラスマンの第一法則』といい、等色式の左辺と右辺が比例することを『グラスマンの第二法則』、原色の分光分布特性と混色の結果の分光分布特性が等しいということを『グラスマンの第三法則』、混色に用いられる各色の輝度の総和が「できあがる色の輝度」に等しいということを『グラスマンの第四法則』としている。RGBの三色光によってすべての色を表現する場合には、すべてのスペクトル光の色に対応する条件等色をする必要があるが、そのためにRGB三色の混色比についてグラフ化した『RGB等色関数』というものがある。色を表現するコンピュータの規格でも、RGB値を使って『色』を指定するための原理が使われており、RGB等色関数がその基盤になっている。

スポンサーリンク
楽天AD

運動視と知覚研究

『色』は網膜の光受容体細胞(視細胞)である錐体細胞(すいたいさいぼう)で認識されるが、複雑な色覚現象を理解するための仮説にはヤング=ヘルムホルツの三原色説で知られる『三色説(trichromatic theory)』と4種類の神経細胞を仮定する『四色説・反対色説』とがある。三色説は『赤・緑・青』の3色を伝達する神経細胞の種類を仮定するものであり、反対色説と呼ばれる四色説は『赤・緑・青・黄』の4色を伝達する神経細胞の種類を仮定するものである。現在では微小分光光度計による測定結果や電気生理学的な細胞研究によって、三色説と四色説の双方が大脳における視覚処理系統の異なる位相で成立しているとする『段階説(stage theory)』が強く支持されている。

三色説は上記したRGB等色関数に見られる混合の原理によって支持されているが、四色説は現象としての色の見え方によって支持されている。四色説は『赤-緑』『黄-青』という2つの反対色の組み合わせによって色の見え方が決まるということから『反対色説(opponent-colors theory)』と呼ばれることも多い。色の現象的な見え方に焦点を当てたK.E.K.ヘリングが、『赤・緑・青』の三原色以外に『黄』を他の色の混色では作れないユニークな色と認定したのが四原色説であるが、『黄』は実際には赤と緑の混色によって作ることもできるので『心理的四原色』と呼ばれることがある。しかし、K.E.K.ヘリングの四原色説の要点は4つの色のオリジナリティにあるのではなく、『反対色説』と呼ばれるように『赤と緑・青と黄』の拮抗的(正反対)な視覚反応のプロセスを発見したことにあるのである。

ヘリングは、『緑赤物質・青黄物質・白黒物質』という3つの物質の同化(合成)と異化(分解)によって現象的な色が知覚されると考え、明るさ知覚については『白黒物質の同化-異化の比率』に明るさが依存するというユニークな仮説を出している。これらの仮説は実証的レベルでは確認されておらず、網膜細胞よりも更に先の段階にある脳内の情報処理過程において色・明るさの知覚が生まれるのではないかと推定されている。

人間の視覚系の特徴の多くは、『色覚に関係する錐体の視細胞が赤・緑・青に反応する三種類しかない』という事実に立脚しているが、そのため厳密な分光分布が異なる色でも同じ色(条件等色された色)として知覚することができるのである。つまり、『自然界や物理世界にある色光』と『コンピュータ・携帯電話・液晶テレビのディスプレイにある色光』は、光学的には異なるスペクトルであるが人間の眼に映る『色』としては全く同じ色であるように見えるのである。文明社会にある色を表現するための技術の多くは三色説に基づいて開発されており、印刷技術においてもシアン・マジェンタ・黄色の三色のインクが利用されている。

運動している対象(物体)を知覚する人間の視覚機能のことを『運動視・運動知覚』と呼ぶが、最も単純な運動視はパラパラ漫画のような仮現運動の原理に基づいている。ゲシュタルト心理学で研究された仮現運動とは、実際には対象は動いていないのに人間の眼には動いているように見える現象のことであり、映画やアニメーション、テレビ番組で『動いているシーン(動画映像)』を運動視できるのはこの仮現運動の影響である。

『静止した画像』を滑らかに連続的に視覚に呈示することによって、人間は仮現運動を運動視することが可能になるが、この原理を応用したテレビ・映画では現在、『24コマ/秒(高度なNTSC方式では30コマ/秒)』で画像を視聴者に呈示している。人間が自然界の情報をありのままに(完全に)知覚できないというのは他の感覚器官でも同じであり、聴覚においても人間は20~2万Hzの周波数の音しか知覚することができない。こういった人間の知覚特性を生かして、可聴範囲以外の音を圧縮したMP3などの新規格が作られ、今までのCDよりも小さな記憶容量で、ほぼ同じ音質の楽曲をデジタル録音したりネット配信することが可能になったのである。

スポンサーリンク
楽天AD
Copyright(C) 2004- Es Discovery All Rights Reserved