嘘発見検査・ポリグラフ検査

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このウェブページでは、『嘘発見検査・ポリグラフ検査』の用語解説をしています。

ポリグラフ(嘘発見器)の歴史と原理


ポリグラフはどこまで正確に嘘を見破れるか


ポリグラフ(嘘発見器)の歴史と原理

『嘘』は、偶然の記憶違い(思い違い)や言い間違えではない意識的な虚言のことである。人は些細な悪意のない嘘まで含めれば、誰もが一日のうちに相当に多くの嘘をついているが、人はなぜ嘘を吐くのだろうか。嘘は自分の言っていることが『客観的な事実・現実』とは異なると知っていながら、『間違っている内容・情報』を相手に信じ込ませる虚言であり、何らかの利益を得たり責任を回避しようとしたり、誰かを悪者に仕立てたりしようとする目的を持っている。

相手が話している内容が、『嘘(虚偽)』なのか『真実(本当)』なのか知りたいという人間の欲求は強く、古来から相手の瞳や口の動き、言葉の選び方などで嘘をついている人の緊張を見破ることができるとも言われてきた。実験・観察によって事実(仮説)を検証しようとする近代科学の発達によって、嘘を合理的かつ確実に見破ろうとする研究が進められ、『嘘を吐こうとする時に起こる情動的緊張・生理的反応』を確認するための“嘘発見器(ポリグラフ)”が20世紀前半に開発された。ポリグラフが『嘘発見器』の意味で用いられ始めたのは1921年とされている。

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ポリグラフ(polygraph)の語源は、ギリシャ語の“polygraphos(多く書くこと)”にあるとされるが、嘘発見器としてのポリグラフは複数(poly)の自律神経系の生理的反応を同時に記録する(書き込む)器械装置という意味で用いられている。『身体の複数の生理的指標の計測を行う器械装置』という意味でポリグラフが使い始められたのは1871年であり、『皮膚電気反応・呼吸・心拍(脈拍)・血圧』が連続的な時間軸で同時測定された。睡眠時無呼吸症候群の検査に用いられる『ポリソムノグラフィ(睡眠ポリグラフ)』も、ポリグラフの一種である。

嘘をついている人は情動的緊張が起こって自律神経系(交感神経)がそれに連動して興奮するので、汗腺からの発汗で『皮膚電気反応の変化』が見られたり、呼吸が浅くゆっくりめになる『呼吸(特に呼気)の変化』が起こったり、心拍が不自然に速くなったり遅くなったりする『心拍の変化』が見られる。嘘をつくと一般的には心拍が速くなり心拍数が多くなると思われがちである。だが、実験室(取調室)でポリグラフを用いる時には、嘘をついていない人でも若干の緊張が生じて心拍が速くなることが多く、嘘をついた後には逆に瞬間的な安堵が起こって心拍が遅くなることもある。

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ポリグラフはどこまで正確に嘘を見破れるか

ポリグラフ(嘘発見器)は20世紀の一時期において、欧米の国々で犯罪被疑者の取調べに応用されたこともあったが、『ポリグラフの検査結果』は嘘をついていない人でも嘘をついていると見なしてしまう不正確さがあるので、現在では適正な取調べや裁判の証拠として認められることは少ない。

『あなたは午前2時にその場所に行きましたか』『この写真に写っている人物(女性)を知っていますか』などの直接的な質問項目によって、嘘をついているか否かをポリグラフでチェックしようとしても、虚偽検出のための検査を受けているという状況・認識だけで緊張してしまう人(生理的指標の変化がでてしまう人)が多いからである。

日本の警察機関が犯罪被疑者の取調べを行う時には、直接的な質問項目に対する反応をポリグラフで測定するのではなく、虚実を意図的に織り交ぜたランダムな質問項目に対する反応をポリグラフで測定する『有罪知識質問法(GKT:Guilty Knowledge Test)』が用いられることが多いとされている。

有罪知識質問法(GKT)では、警察が『本当にしたい質問項目』の中に『無意味な質問項目』を混ぜて、それらをランダムな順番で何回も繰り返し質問していくのだが、『被疑者が本当に知っている情報・事実』には常に生理的変化が起こる傾向があるので、その反応によって被疑者がその事実を知っているか否かを推測するのである。

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ポリグラフは『嘘発見器』と翻訳されることも多いが、厳密には被検者(被疑者)が嘘をついているか本当の事を言っているのかを判断するための検査(心理テスト)ではなく、被検者が『事件・事実についての知識』を持っているか否かということについて、ある程度の確実性がある判断材料を提供するものである。

ポリグラフによって得られる『複数の生理的指標の変化』は、飽くまで被検者が質問された項目の内容について知っているかもしれないという可能性を示唆するものであり、実際の犯罪操作や嘘の確認のためには更に踏み込んだ『全体的かつ総合的な分析・調査・判断』が必要になってくるのである。

ポリグラフ検査(嘘発見検査)を実施すれば、その相手が嘘を言っているのか真実を言っているのかが分かるわけではなく、ポリグラフ検査は『分析・調査・判断に役立つ可能性が高い情報(被検者が質問内容について知っているかどうかの情報)』を得るための検査なのである。

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ポリグラフが記録する自律神経系の生理的指標(皮膚電気反応・呼吸・心拍)は、本人の意思に関係なく自動的に変化すると考えられてはいるが、実際には意識的に集中して何かを考えたり、質問と無関係な事柄をイメージしたりすると、ある程度自律神経系の働きが変化することが分かっている。

前述した有罪知識質問(GKT)においても、被検者(被疑者)が本当にその質問内容についての記憶に残っていなければ反応が現れず、『有罪か否かを判定する検査』としての信頼度は高いとは言えない側面もあり、実際の犯罪捜査で応用する場合には『冤罪』を生み出さないように十分な注意(ポリグラフ検査だけで決めつけない態度)が必要である。

アメリカのハーバード大学では、人間の脳で嘘をついたときに検出される特定脳波信号を検出することで、相手が嘘をついているか否かを判別しようとする『特定脳波検出機器』の研究・調査も進められており、ポリグラフと併行して用いることで検査の精度が高まる可能性がある。

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