目標管理(MBO)とOJTの能力開発:ダグラス・マクレガーの『X-Y理論』

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目標管理とは何か?:D.マクレガーの『X-Y理論』、ロックとレイザムの『目標設定理論』

OJTによる能力開発と目標管理のプロセス


目標管理とは何か?:D.マクレガーの『X-Y理論』、ロックとレイザムの『目標設定理論』

目標管理とは『目標設定による管理』のことであり、『MBO(Management By Objectives)』と表記されることもある。目標管理とは、集団の成員(メンバー)がそれぞれ明確な目標と役割を設定して、集団全体のマクロな目標を達成するために(集団全体の問題解決を促進するために)相互に協力して自律的に活動するという経営手法のことである。

企業をはじめとする集団組織は変化する経営環境に適応して利益を上げるために、中長期の経営計画を立案して、その計画に基づいた1年単位(四半期・月の単位)の経営目標を設定していく。集団組織のメンバーは中長期の経営計画の実現のために短期的な経営目標の達成を目指すことになる。集団の成員(メンバー)は、各部門の現状と目標を把握した上で、『自分の能力・役割・職責』に対応した日々の職務遂行を成し遂げなければならないのである。

経営学(経営手法)・心理学(モチベーション論)とも関係する『目標管理(MBO)』という概念を初めに提起したのは、経営学やマネジメントの創始者とも言われるP.F.ドラッカー(Peter F. Drucker 1909-2005)である。ピーター・ドラッカーは目標管理を構成する要素として『組織の要求と個人の欲求の統合・目標設定への参加・セルフコントロール(自己統制)』などを上げている。目標管理の難しさは成員(メンバー)の役割・能力・達成目標を明確にした後にどうやって成員の内発的モチベーション(職務に対する自発的・内的なやる気)を高めるかという点にあり、上位者からの一方的な強制や命令をしてしまうと逆効果になって成員のモチベーションが落ちてしまいやすいということである。

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人間は一方的に命令や強制をされると逆にやる気や主体性を無くしてしまうという経営上の難点を踏まえた行動主義心理学(行動科学)の理論に、アメリカの心理学者ダグラス・マクレガー(Douglas McGregor, 1906-1964)『X-Y理論』がある。

D.マクレガーは著書『企業の人間的側面』の中でX理論とY理論について説明しているが、X理論というのは性悪説・サボタージュの欲求に基づいた『専制主義的・強権的な経営手法』『統制による管理』であり、Y理論というのは性善説・自己実現欲求に基づいた『民主主義的・自発的な経営手法』『目標による管理』である。

“X理論”の前提は、『人間は生来的に怠け者で責任感がないので、強制や懲罰をしないと仕事をしない』という性悪説の人間観である。X理論では従業員のメンバーを働かせて生産性を高めるためには、オペラント条件付け(道具的条件付け)的な報酬と罰則の強化子(刺激)が必要であると考える。企業は従業員がきちんと職務・作業をこなしているかを監視し、『命令と強制・報酬と処罰』などの手法を用いて労務管理をすべきというX理論は、土木建築や工場労働の第二次産業の現場をはじめとする『肉体労働・単純作業』において有効性を発揮した。

賞罰・強制の外発的モチベーションに頼るX理論の限界は、複雑な作業工程や主体的な思考活動(創造性)を必要とする『知識労働・頭脳労働』にほとんど応用できないことである。X理論では従業員(メンバー)の『自発的な労働意欲・内発的モチベーション』を引き出すことが難しく、言われたことをやるだけの人材になってしまいやすいので『創造的な思考・自発的な工夫』にも結びつかないのである。

“Y理論”の前提は、『人間は生来的に働き者で責任感・好奇心もあるので、主体的に動きやすい仕事の権限・役割を委譲されて、やりがいのある職場環境(人間関係)・達成目標が与えられれば積極的に働く』という性善説の人間観である。人間には生得的に何かを創造したいという欲求や何かを知りたいという知的好奇心が備わっているので、罰則や威圧によって仕事を無理やりに強制されると、反対に仕事に対するやる気・興味を失って生産性が落ち込みやすくなってしまう。Y理論ではアブラハム・マズローの欲求階層説における『高次の承認欲求・自己実現欲求』が重視されていると言えるだろう。

自分の頭で主体的に考えて『問題解決・目標達成』を行っていこうとする種類の知的労働(頭脳労働)では、人間の主体性を尊重して自己実現欲求を満たそうとする『目標による管理』のY理論が効果を発揮しやすいのである。もちろん、あらゆる職業分野や業務内容においてY理論がX理論よりも成果がでやすいわけではなく、単純労働の反復や創造性が必要とされない仕事では、X理論に基づく『統制・強制による管理』のほうが効果的になるケースもある。

Y理論の生産性向上の効果が発揮されやすい分野は『創造性・アイデア・知識と思考能力に基づく頭脳労働の分野』であり、Y理論の経営のほうが能力を発揮しやすい人材は『承認欲求・自己実現欲求・知的好奇心・集団適応・責任感』がある程度強い人材である。自分で自分のやるべき仕事の達成目標を設定して、その目標の実現に向けてコツコツと主体的・意欲的に努力できる人材であれば、X理論に基づく『統制・命令・罰則による管理』ではなく、Y理論に基づく『目標・共感・興味関心での管理』を適用すべきということになる。

目標管理に関係する理論としては、E.A.ロックG.P.レイザム『目標設定理論(goal-setting theory)』もある。目標設定理論は自分の現状を引き上げる目標を設定することで、その業務に関するやる気や興味関心といった『内発的モチベーション(内発的動機づけ)』が高められるという理論である。

自分の現状よりも高い目標を設定すると、自分の現在の成績や能力が目標よりも低くなっていることで、自尊感情が傷ついたり自己評価・自己満足感が低下したりする。この不快な自尊心・自己評価の低下を解消するために、人は目標達成のための努力や工夫を必死に行うようになるのである。目標設定理論は、難しい目標に挑戦したこと、知識・技能・経験を身につけたことそのものが『内的報酬』として作用するので、仮に目標を達成できなかったとしてもそれ以上自尊心や自己評価が下がる危険はないと考えられている。

目標設定理論における内発的モチベーションは、以下のような要因によって更に高まるとされている。

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OJTによる能力開発と目標管理のプロセス

『経験者の即戦力(教育・練習しなくても当該業務に精通している人材)』ばかりが求められる現在の日本の労働市場に欠けているのが、職場内教育・実地教育の『OJT(On the Job Training)』である。新卒採用者であれば社会内教育システムの“On the Job Training”を手厚く受けることができるが、特段のキャリアやスキル、資格のない転職者の場合には、その会社に採用される前の段階で『一定以上の当該業務をこなせるスキル・経験の習熟度』が求められるのが厳しい現実になってきている。

OJTでは上司・先輩が、社員の育成・習熟計画に基づいて部下を教育指導していくが、『実際の仕事の現場・内容・やり取り』を通して実際的なノウハウや解決方法、段取り、技術などが学べるので非常に効率的に仕事の習熟度を高めやすいとされている。

職業学校や大学などで仕事に関連する知識・技能を学んで何らかの専門資格を取得することももちろんできるのだが、『学校で学んだ客観的な知識・技術』『仕事の現場で実践的に用いられている知識・技術・ノウハウ』にはかなりの違いがあるので、学校で学んだだけではいくら良い成績を収めていてもすぐに即戦力として働くというわけにはいかないものである。

OJTの目標管理(MBO)における目標設定は、『現在の能力でも実施できる仕事内容・特段の知識や技能がなくてもできる定型的な仕事内容』から始めて、段階的に『新たな知識・能力・ノウハウ・経験・段取りなどを身につけないとこなすことのできない難易度の高い仕事内容』を設定してその目標を達成できるように上司は教育・指導・支援を行っていくことになる。難易度の高い高度で特別な目標になるほど、OJTを通した『能力開発』が必然的に求められることになるが、OJTを通さずに一般的な求職者・無職者が企業が必要とする能力開発を自分だけでやり遂げることはなかなか難しいことである。

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本人が自発的に立案した『業務目標』を達成するためには、その業務達成に必要な『能力開発の目標』も同時に立てなければならなくなる。上司と部下の人間関係を通したOJT的な関わり合い、上司の教育者的な役割としては、『部下の業務目標+能力開発目標』をきちんと把握してその目標を達成できるように相談に乗ってアドバイスしたり、自分の経験や技術の中から教えられそうなものがあれば積極的に教えて仕事の達成を支援することである。

OJTの社内教育には、業務遂行に必要な知識・ノウハウを伝達して共有するという『ナレッジ・マネジメント』の側面も含まれており、上司のOJTの指導・教育が適切に行われることによって『業務遂行のノウハウとポジティブな企業文化・現場の好ましい教育的な人間関係・上司の効果的な教育者としての役割』が維持伝達されるということにもなる。

人事考課では『目標管理を前提とした設定目標の達成度』が評価基準として用いられることが増えているが、効果的なOJT(社内教育)を実現して維持していくためには、『部下を教育する側の上司・先輩の適切な評価基準の確立(自分の時間・労力を惜しまずに部下のために教えてバックアップしている人材を積極的に高く評価する)』『目標管理の評価の基準や結果に対する社員の納得性・意欲の高さ』が非常に重要になってくる。

いくら自分自身の仕事で高い業績や成果を出して、他の同期入社の同僚などより優れている人材に見えても、『部下に対するOJTが上手くできていない・人間性やコミュニケーションに問題があって部下がついてこない(部下をつけると折り合いが悪くなってすぐに辞職してしまい定着しない)・自分の成果ばかり気にして部下を教育して成長させようという意志や負担の引き受けに乏しい』などの問題があれば、『上司・先輩として有能な後進を教育して能力開発を進めていく(未来の組織や社会のメンバーを育て上げていく)という役割』を果たせていないので目標管理における人事考課の査定は低くしなければならないのである。

『目標管理を通したマネジメント』の段階的なステップは以下のような感じで認識されている。

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