ユニバーサル・デザインと知覚研究

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このウェブページでは、『ユニバーサル・デザインと知覚研究』の用語解説をしています。

ユニバーサル・デザインとバリアフリーの思想が目指す社会

ロナルド・メイスの『ユニバーサル・デザインの7原則』


ユニバーサル・デザインとバリアフリーの思想が目指す社会

ユニバーサル・デザイン(universal design)とは日本語に翻訳すれば『普遍的なデザイン・汎用的な意匠や造り』になるが、端的に言えば『誰にでも見やすく使いやすいデザイン』という意味である。利用者の属性としての『年齢・身体能力・精神状態・環境条件・障害の有無』をできるだけ問わない誰にとっても使いやすいデザインがユニバーサル・デザインであり、現在のデザイン分野では『ユニバーサル・デザイン』『バリアフリー(barrier free)』という普遍的な使いやすさ(見やすさ)の概念の実装が非常に重要になってきている。

バリアフリー(barrier free)とは『心身障害・高齢(老人)・未熟(乳幼児)・環境や道具(車いすなど)』のハンディキャップを持った人たちが施設・道路・サービス(商品)を使おうとする時にバリアー(障壁)となるものをできるだけ取り除いていこうとする設計思想であり、ノーマライゼーションの都市設計などに積極的に応用されている考え方でもある。その道具や商品、建物、道路、サービス、ウェブサイトを使えない人がいないようにしようとするバリアフリーを実践していく試みは、結果としてユニバーサル・デザインにつながっていく。

ユニバーサル・デザインの思想や考え方は、1980年代にアメリカのノースカロライナ州立大学のロナルド・メイスによって提唱されたが、ユニバーサル・デザインを実際的に考案して実用化していくためには、『行動科学的・統計学的に検証されたハンディキャッパー(高齢者・障害者)の知覚・行動の特徴』の正しい理解が必要になってくる。このようなデザインが使いやすくていいとかこういった造りにして欲しいとかいった、高齢者・障害者の意見をただ聴くだけでは盲点があるので、『定量的な知覚心理学・行動心理学の実験結果(客観的データ)』なども合わせて活用していくことが望ましい。

バリアフリーは、人と道具(建物)の相互性を妨げたり、その人の行動や目的達成を妨げたりしている『障壁(バリア)』を除去した状態、あるいは除去しようとする考え方を意味する。一般的なバリアフリーの思想では、『物理的バリア(物理的なモノが邪魔になったり動きが妨害されたりするバリア)・社会制度のバリア(健常者だけを対象にしている制度で全ての人が使えない制度になっているというバリア)・文化と情報のバリア(異文化として扱われてしまうことの格差や求めている情報を簡単に手に入れられないというバリア)・意識のバリア(健常者・壮年者と高齢者・障害者とは異なる存在だとして線引きするような意識上のバリア)』という4つのバリアの存在とその除去の目標が設定されている。

バリアフリー思想に基づく社会全体のノーマライゼーション(平準化)に興味のある方は、[バンク・ミケルセンらのノーマライゼーション(normalization)]のウェブページも参考にしてみて下さい。現代のバリアフリーやユニバーサル・デザインでは、その商品やサービス、施設を利用しようとする人の『自意識・自尊心へのそれとない配慮』も重要な構成要素となっており、敢えて『障害者用・高齢者用』と明記されたり区別されたりしているような商品やサービス、建物のデザインはユニバーサル・デザインとしての完成度が劣ると見なされるようにもなっている。

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ロナルド・メイスの『ユニバーサル・デザインの7原則』

ユニバーサル・デザインの思想や価値観の創始者であるロナルド・メイスは、以下のような『ユニバーサル・デザインの7原則』を定義している。

身近にある代表的なユニバーサル・デザインの例としては、『階段ではないスロープ・シャンプーやリンス容器のギザギザ・ノンステップバス・お酒の点字表示・広いスペースがある多機能型トイレ・駅や道路、美術館での音声案内・階段とエスカレーターとエレベーターの自由な選択環境』などがある。ユニバーサル・デザインやバリアフリーの設計思想は特に先進国において注目が高まっているが、それは先進国の少子高齢化の社会現象とも密接な関わりがあり、行動や体力の制約が殆どない若い人たち、健康な大人を基準にしてきた『高度経済成長期の街づくり(都市設計)・モノづくり(工業デザイン)』がユニバーサル・デザインの視点から見直されてきているのである。

看板や説明書きの文字、商品のネーミングやラベルの文字などは、ユニバーサル・デザインの観点からは『誰にでも見やすい(読みやすい)文字』であることが大切になるが、見やすいという特性には『目立つという誘目性(注意喚起)』『何が書いてあるのか読みやすいという視認性』の二つがあることに注意しなければならない。

誘目性(注意喚起)については、知覚のポップアウト現象(文字が飛び出てくるように感じる現象)、注意の前段階にある分凝(ぶんぎょう)に配慮したり、背景の明るさや色、テクスチャー(質感)と文字とのバランスを考えていく必要がある。視認性(文字の読みやすさ)に関しては、色の配色やテクスチャーよりも『文字の大きさ・文字と背景の明るさの対比』のほうが重要になってくるという違いがある。短文の文字のフォントの視認性は、明朝体よりもゴシック体のほうが良いとされ、数字・アルファベットの文字の太さは文字の高さの10~20%くらいが一番視認性が高くなるとされている。

ユニバーサル・デザインでは、視覚で見るだけではなく触覚で触って読むことができる『レリーフ文字(浮き彫りの文字)』が使われることもあるが、その場合には文字の高さは1.6センチから5.0センチの範囲で、文字を背景から最低0.8mm以上は浮かび上がらせることが望ましいと言われている。レリーフ文字で書く時は、日本語であればカタカナが触って読みやすく、アルファベットであれば小文字よりも大文字のほうが触って読みやすい。

高齢者人口が増える高齢化社会に対応するためのユニバーサル・デザインでは、『明るさに対する感度低下(暗い所で文字が読めなくなる)・老眼の進行(近い距離にある小さな文字が読めなくなる)・短波長光(青色光)に対する感度低下』という高齢者の視覚特性の変化(加齢による水晶体の黄化・白濁の影響)にも配慮した、文字の書き方や色の使い方、デザインの方法が必要になってくるだろう。明るさに対する感度が低くなるので、高齢者が読む表示では『黒の背景に青・赤・緑の文字』などでは不適切な読みにくい表示になってしまうが、高齢者に文字を読んでもらう時にはできるだけ照明を明るくするなどの環境調整の配慮も効果的である。

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