ハロウェルとレイティの成人のADHD診断基準・P.H.ウェンダーのユタのADHD診断基準

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ハロウェルとレイティの成人のADHD診断基準

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は長らく『子供に特有の発達障害』と考えられてきたが、1990年代以降のアメリカの統計学的・発達臨床的な研究によって『大人(成人期)のADHD』も存在することが明らかになってきた。

しかし、大人のADHDは思春期・青年期・成人期になって突然発症するものではなく、必ず小児期に『ADHDの既往歴』を持っているという特徴がある。ADHDの中心的症状は大きく分ければ、『多動性』『衝動性』『不注意』の3つのカテゴリーに分けられるが、ここではE.M.ハロウェル(Edward M.Hallowell)J.J.レイティ(John J.Ratey)が作成した『成人期のADHD診断基準』を紹介する。

ハロウェルとレイティの成人のADHD診断基準

A.以下のような障害が慢性的に15項目以上にわたって認められる。

1.(実際に一定の成果がでていても)実力を発揮できていない、目標を達成できていないという感覚がある。

2.計画的な行動(秩序だった一連の行動)や物事の準備が難しい。

3.物事をいつも先延ばしにして、仕事に取り掛かるのが遅い。

4.多くの計画を同時進行するが、大部分を最後までやり遂げることができない。

5.頭に浮かんできたことを、タイミングや状況を考えずにパッと口に出してしまう。

6.頻繁に強い刺激を求める。

7.退屈な状態に我慢できない。

8.すぐに気が散ってしまい、注意の集中が難しい。読書や会話の最中に他のことを考えて上の空になってしまう。(時に異常なほどの集中力を見せることもある)

9.しばしば、創造性や直感、高い知性を示す。

10.決められた方法や適切な手順を守ることが難しい。

11.気が短くて、ストレスやフラストレーション(欲求不満)に耐えられない。

12.衝動性。言葉と行動の両面での衝動性。金銭の使い方や計画の変更、新しい企画や職業の選択における衝動性。

13.際限なく不必要な心配をする。(心配の原因をあれこれ探しながらも、実際の危機に対しては逆に心配しなかったりもする)

14.心もとない不安定感。

15.気分が揺れやすくて変わりやすい。特に親しい人と別れた時や仕事から離れた時に気分が不安定になる。(ただし躁うつ病やうつ病ほどにはっきりとした病的な気分変動ではない)

16.心がそわそわとして落ち着かない感じ。(精神的なエネルギーの高揚・持て余しの現れで、うろうろ歩き回る、指で物をトントン叩く、座っている時に体の位置を変える、仕事場やデスクをよく離れる、じっとしているとイライラするなど)

17.嗜癖・依存症の傾向。(アルコールや薬物など物質嗜癖、摂食や仕事、買い物、ギャンブルなど行為嗜癖、異性関係の恋愛やセックスなど関係嗜癖)

18.慢性的な自尊心の低さ。

19.不正確な自己認識

20.ADHD、双極性障害(躁うつ病)、うつ病(気分障害)、物質乱用、その他の衝動制御障害の家族歴。

B.子供の時にADHDであった。(正式な診断以外にも、過去を振り返った時にADHDのような徴候や症状が思い当たる場合も含む)

C.他の医学的あるいは精神医学的状態では説明がつかない。

※慢性的な障害の各項目は、その行動が同じ精神年齢の大部分の大人と比べて、より頻繁に観察される場合にのみ当てはまると見なす。

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P.H.ウェンダーのユタのADHD診断基準

P.H.ウェンダーのユタのADHD診断基準

Ⅰ.小児期の症状

A、Bいずれかの定義に該当する小児期ADHDの症状が過去に見られた。

A.狭義の基準:小児期のADHDについてのDSM(DSM-Ⅲ-TR,DSM-Ⅳ,DSM-5など)の診断基準を満たす。

B.広義の基準:以下の1と2の症状が両方見られ、3~5の症状のうち一つ以上が当てはまる。

1.多動性:他の児童よりも活動的で、落ち着いて座っていることができず、そわそわ・もぞもぞと体を動かしている。常に何かしている、過剰なおしゃべりがある。

2.注意欠如(注意持続の短さ):注意散漫、夢想、学校の課題・宿題などをやり遂げられない、怠け者の批判を受ける(やる気があればもっとちゃんとできるはずと注意される)、物忘れが多い。ディスレクシア(読字障害)などの一次的な学習障害や知的障害がないのに成績不振に陥る。

3.学校での問題行動:授業中のおしゃべりや徘徊、他の同級生よりも注意される数が多い。授業妨害、放課後の居残り、先生・校長からの注意の多さ(問題児扱い)。

4.衝動性:後先考えずに行動する、順番を待てない、わめいたり暴れたりする、トラブルを起こす、向こう見ずで乱暴。

5.過剰な興奮:すぐに興奮したり短気を起こしたりする、癇癪を爆発させてよく喧嘩をする。

Ⅱ.成人期の症状(※小児期にADHDの診断基準を満たしていることが必須条件)

A.成人期に1(多動性)と2(注意欠如)が同時に見られ、3~7の症状のうち少なくとも2つ以上が当てはまる。(両親もしくは他の人によって認められる)。

1.持続的な多動:落ち着きがなくてリラックスできない、神経が高ぶって活動性が増している、読書・勉強・テレビ・映画などじっと座ってする活動が続けられない、いつも何かをしているなど。

2.注意欠如・注意散漫・集中力障害:他人の話を聴き続けることができない、ノイズの刺激が入ってくることによる注意散漫、読書・勉強などに集中して取り組むことができない、忘れ物や物忘れが多い(財布・鍵などを無くしたり置き場所が分からなくなる)、今しようと思っていたことをすぐに忘れるなど。

3.感情の易変性(変わりやすさ):正常な落ち着いた気分から、抑うつ(落ち込み)や軽躁状態(興奮)へと急に変化してしまう。抑うつ状態は、退屈な気分や不機嫌な感覚として述べられることもある。気分変化は通常、数時間から数日ほど続き、明確な生理的症状は伴わない。

4.短気・かんしゃく(反射的な感情の爆発):思い通りにならないことがあると、感情の統制を失ってキレたりイライラしやすいが、その後にすぐにケロッと収まって忘れてしまうことが多い。

5.無秩序・課題が達成できない:仕事や課題、作業を秩序だててまとめたり手順を整理することができず、最後まで終わらせて達成することができない。

6.ストレス耐性の低さ:些細なストレスやフラストレーションに耐えることができず、注意・集中力を維持できなかったり、怒ってキレたり途中で物事を投げ出したりしやすい。

7.衝動性:思いついたことややりたいと思ったことを、後先考えずにすぐに行動に移しやすい。頭に思い浮かんだことを、相手の気持ちや状況を考えずにすぐに言葉にしてしまう。思い通りにならないと、短気を起こしたり暴れたりする(車の運転で少しでも思い通りにならないと他の運転手に悪態をついたりする)。

B.次の症状が存在しないこと:

1.双極性障害(躁うつ病)、うつ病

2.統合失調症、統合失調型パーソナリティー障害、統合失調質パーソナリティー障害、分裂感情障害、統合失調性スペクトルに見られる奇妙で曖昧、はっきりしない思考・発言。

3.境界性パーソナリティー障害:不安定な対人関係(過度の理想化とこき下ろし)、自傷行為や自殺企図、自己アイデンティティの拡散、慢性的な虚無感や絶望感、見捨てられ不安・孤独不安とそれを避けるための狂気的な努力。

4.反社会性パーソナリティー障害:1年以内のアルコール依存症、薬物乱用、中枢神経刺激薬の乱用など。

C.付随する特徴:結婚生活の不安定さ、知能・教育水準から期待されるよりも低い学業的・職業的な成功の度合い、アルコール依存や薬物乱用など。

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