荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 第5部・黄金の風 1巻(30巻)』の感想

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西暦2001年、空条承太郎(くうじょうじょうたろう)の依頼を受けて広瀬康一(ひろせこういち)は南イタリアのネアポリス空港に飛んでいた。承太郎の依頼は『汐華初流乃(しおばなはるの)』という15歳のハーフの少年を見つけ出し、皮膚の一部を採取してほしいという奇妙なものだった。広瀬はジョルノ・ジョバァーナという汐華初流乃によく似た白タクの男に出会って荷物を盗まれてしまう。その出会いがきっかけとなって、イタリアのギャング組織を交えた『スタンド』を使った激しいバトルに巻き込まれていく。

スタンド使いはスタンド使いと引かれ合うという運命的ルールに導かれるように、広瀬康一の『エコーズACT3』とジョルノ・ジョバァーナの『ゴールド・エクスペリエンス(黄金体験)』は出会うことになる。

ゴールド・エクスペリエンス(黄金体験)というジョルノのスタンド能力は個性的で強力なもので面白い。触ったものに何でも生命を与えることができ、その生命体が攻撃されるとそのまま攻撃を相手にはね返すことができる。ジョルノの決め台詞は『無駄ァァアアッ!』である。広瀬康一のエコーズは、モノ・人をものすごく重たくすることができる重力を増加させる能力(3FREEZEの能力)を持つ。

生きている人間をゴールド・エクスペリエンス(黄金体験)で攻撃すると、『感覚の暴走』を引き起こして『自分・周囲の動き』をスローに見せることができる。感覚が暴走した状態で強い攻撃を受けると、スローにじんわりと襲ってくる苦痛は耐えがたいほどの大きさになってしまう。

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ジョルノ・ジョバァーナは過去に義父から虐待を受けて弱気で卑屈な性格になり、町の悪ガキたちからもいじめられていたが、学校の帰り道に血まみれで倒れていた男を追っ手から救ってあげたことでつらかった毎日が一変した。その男は町を牛耳るギャングであり、命の恩人であるジョルノを影から見守ってくれたお陰で、誰もジョルノに危害を加えたりバカにすることができなくなり、ジョルノに平穏な毎日が戻ってきたのである。

ジョルノはその過去の運命的なエピソードによって、必然的に『ギャング・スター』に憧れるようになるのだが、ジョルノの脳裏にあるのは法律を破って悪事を働き人々を苦しめるギャングではなく、『弱きを助け、強気を挫くタイプ』の侠気・恩讐の行動理念を持った筋を通すギャングである。だがチンピラの『涙目のルカ』を意図せずにスタンド能力の『攻撃のはね返し』で倒してしまったジョルノは、ギャングのボスの報復を受けることになり、ブローノ・ブチャラティという強力なスタンド使いの刺客が送り込まれてくる。

ブローノ・ブチャラティのスタンドは『スティッキィー・フィンガーズ』で、殴ったものにジッパーを取り付けてそのジッパーを開けると空間移動することができ、ジッパーによって異なるモノ同士をくっつけることもできる。ジッパーをくっつけて開くことで相手にダメージを与えることもできるので攻撃能力も高いが、ボスの命令で暗殺しようとしたジョルノに敗れる。

ブチャラティは少年の腕に麻薬を射った痕を見つけてショックを受け、『子供に麻薬を売るようなギャング(ボス)』を許せないと感じてしまい、人道を踏み外したボスを倒して街を乗っ取ると宣言するジョルノに共鳴して『条件付きの仲間(途中でボスに裏切りがばれた時には助けない)』になる。

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ブチャラティの手引きでギャング組織『パッショーネ(情熱)』に潜入してボスを倒す機会を伺うことにしたジョルノは、刑務所内にいるポルポという幹部に入団試験を受けることになる。街・少年を麻薬で汚染する組織を壊滅させる『正義の遂行』のために、敢えて身の危険を冒して組織に潜り込んでいくというスリリングな展開になっている。

ギャングの幹部ポルポは外のシャバに出ても自由に動けないほどの超肥満体だが、刑務所の中では特権待遇を受けて満たされた暮らしを謳歌している。ポルポが出してきた組織に入団するための試験は『信頼』を試すためのもので、ライターの火を24時間のあいだ何があっても絶対に消してはならないとする不可思議なものだった。

手の中に火のついたライターを握りこんで何とか刑務所のボディチェックを通り抜けたジョルノだったが、いろんな人から妨害が入って危うく火が消えそうになる。ジョルノに盗まれたパスポートと財布を探しに来た広瀬康一をやり過ごしたが、階段掃除をしていたおじいさんが水をかけてライターの火を消してしまう。

その火を再点火すると、ポルポの危険なスタンドが姿を現す仕組みになっていて、おじいさんは額に矢のようなものを突き刺されて殺されてしまう。『信頼』を裏切って火を消してしまいそれを再点火すると、『ブラック・サバス』という『向かうべき二つの道(生か死か=選ばれる者への道か死への道か)』を強制する影を使って移動できる死神のようなスタンドが出現する。

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ブラック・サバスは『信頼を守る約束』をきちんと守っているかどうか監視するような役目を担っているスタンドで、いったん約束を破って火を消して再点火すると(再点火を目撃してしまうと)、その相手を口から出る矢で突き刺して殺すまで止まらない機械仕掛けの人形のような遠隔操作系のスタンドである。

影の中を伝わって移動しながらターゲットを殺害するという自動追跡能力のスタンドであるブラック・サバスの弱点は、ドラキュラのように『日光・明るさ』であり、ジョルノと広瀬康一は何とかブラック・サバスを日光の下に引きずり出そうとする。広瀬のエコーズACR3の重たくする能力と連携しながら、ジョルノの仕掛ける頭脳戦が最大の見所になっていて、ゴールド・エクスペリエンス(黄金体験)の生命を与える能力を意外な形で応用している。

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『ジョジョの奇妙な冒険 第5部』は、『正義(仁義)』と『悪(犯罪)』の二つの顔を持つアンビバレンツなギャング・スターが題材として採用されていて、ジョルノの『ギャングスターの恩讐の理念(弱者救済)への憧れ』とその憧れを裏切る『麻薬汚染・弱者の犠牲』が物語を動かす核になっている。ジョルノ・ジョバァーナと広瀬康一とブローノ・ブチャラティの三人が巨大なギャング組織にどのように潜入してどんな能力を持つスタンドと戦っていくのか、先の展開が楽しみな作品だった。

『ジョジョの奇妙な冒険』では家系図や血統が大きな意味を持つことが多いのだが、ジョルノ・ジョバァーナもまた父親『ディオ(DIO)』の血が流れているという設定になっており、本シリーズの宿敵ともいえるディオの強さと危険性を考えれば『ゴールド・エクスペリエンス(黄金体験)』という不思議なスタンドの特性・高い能力にも納得がいくだろう。

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