雨を防いでくれる『レインウェア(rainwear)』は初心者であっても、登山には絶対に持っていくべきアイテムです。レインウェアで重視される機能は『防水性』と『透湿性(とうしつせい)』であり、防水性は外部からの雨を防ぐ機能、透湿性は内部からの汗による蒸れを防ぐ機能です。高温多湿な日本の温暖湿潤気候では『防水性』と同様に『透湿性』も非常に大切な機能であり、透湿性が低いと発汗ででた水蒸気を外に出すことができず、レインウェアの中がぐっしょりと濡れてしまう事も多いのです。
レインウェアの素材で最もポピュラーで信頼感があるのは『ゴアテックス(GORE-TEX)』であり、レインウェアやアウター(ハードシェル)の防水透湿性素材の代名詞にもなっています。アメリカのWLゴア&アソシエイツ社が製造販売しており、『プロシェル・パフォーマンスシェル・アクティブシェル』など様々なグレイドの素材が開発されていますが、ゴアテックスのタグがついているレインウェアを買えばまず一般的な登山に必要な機能面では問題ないでしょう。しかし、ゴアテックス素材のレインウェアは一般に、それ以外の防水透湿性素材のレインウェアよりも価格が高いというコスト面でのデメリットはあります。
ゴアテックス(GORE-TEX)は軽くてカサカサとした触り心地が特徴の素材で、ポリテトラフルオロエチレンを延伸加工したフィルムとポリウレタンポリマーを複合化して製造されています。登山靴も含めて防水性が求められる登山のあらゆる道具に使われていますが、『外からの雨(水)の分子』は通さないが『内からの水蒸気(汗)の分子』は通すというレインウェアに最適な特徴(内部の身体を快適な状態に保ちやすい特徴)を持っています。
ゴアテックス・ファブリクス(ゴアテックスの生地)以外にも、マウンテンハードウェアの『ドライQ』やパタゴニアの『H2No』、ノースフェイスの『ハイベント』、モンベルの『スーパーハイドロブリーズ』、コロンビアの『オムニテック』などの独自の防水透湿性素材がありますので、必ずしもゴアテックスだけがレインウェアのファーストチョイスになるわけではありません。機能的にはゴアテックスが最も優れているとされますが(何時間も豪雨の中を歩くような厳しい登山ではともかく一般的な晴天を狙ってでかける登山ではその性能差を実感することは難しいと思います)、価格的にはゴアテックス以外の素材のほうが何割か安くなりますので、予算に合わせて選択すれば良いと思います。
登山時の服装は複数のウェアを重ね着する『レイヤリング(layering)』が前提となりますが、『レインウェア』を着る時には必ず一番外側に着ることになります。またレインウェアは雨が降っている時だけに着るわけではなく、春~秋にかけての登山では少し肌寒い時の『防寒着』として使うこともでき、『防風性』にも優れているので風の強い尾根などで『ウインドブレーカー(ウインドブラスト)』として着ても良いと思います。
良くある疑問として、同じゴアテックス・ファブリクスを使用している『レインウェア』と『ハードシェル(アウター)』には互換性があるのかという疑問があります。もし互換性があるのであれば、レインウェアを冬場のハードシェルとして使えばお金も荷物も節約できるというわけですが、結論としては『登ろうとする山の高度・厳しさ』に拠るが、低山であればレインウェアをハードシェルの代替として使うことは可能ということになります。
可能ですがレインウェアはハードシェルと比較すると『生地が薄手で耐久性が弱い』ということがありますから、雪が積もっているような本格的な冬山ではやや心もとない感じはあります。秋口から初冬にかけての登山であれば、ゴアテックスのレインウェアでもハードシェルとして十分な機能を発揮しますが、『柔らかい着心地・動きやすさ』の面でもハードシェルに劣るという欠点はあります。逆に冬場にしっかりとした防水性のあるハードシェルを上に着ているのであれば、それとは別にレインウェアを持っていく必要はないので、荷物の重量を減らすこともできます。
登山をする場合に初心者であっても絶対に揃えなければならないアイテムは、『登山靴・ザック(リュックサック)・レインウェア』で、これらを登山の三種の神器と呼ぶこともあります。レインウェアはいったん買うとそれほど頻繁に使うものでもなく、使用後に乾かして撥水スプレーをかけるなどの適切な管理をすればかなり長持ちします。多少価格が高くても、しっかりとした作りで機能性と耐久性に優れたレインウェアを一着買っておくだけで、『もしもの時の防寒着・ウインドブレーカー』としても使えるので便利ですし、あまり派手過ぎない落ち着いた色の商品であれば『(山ではない)普段用のカッパ』としても十分に使えると思います。
現在のレインウェアは上下が別売りになっているものが多いですが、レインウェアは『上のジャケット』以上に『下のパンツ』のほうが雨の中を快適に歩き続ける上で重要になってきますので、上だけ買うのではなく必ず下のパンツも一緒に買うようにしてください。登山用ではない普段用としてレインウェアを買う場合にも、傘を差して歩く時には(傘を差していても下半身は濡れやすいので)、下の防水パンツを穿いておくと『激しい雨』の中でもそれほどびしょ濡れにならずに外を歩くことができます。
“機能性・デザイン・価格”に着目して、レインウェアの商品をいくつか紹介します。
モンベル(mont-bell)の“ストームクルーザージャケット”は、ゴアテックス・ファブリクスのレインウェアの定番であり、ベーシックな一着が欲しい時には信頼できる商品です。全天候型のオールラウンドなジャケットであり、『軽量化・耐久性・活動性(動きやすさ)』に優れているので、雨天でも肌寒い時でも快適に着こなすことができます。生地は『ゴアテックスファブリクス3レイヤーの三層構造』で、表のナイロンは30デニールのほど良い厚さを持つ『バリスティックナイロン・リップストップ』を使用しています。
モンベル(mont-bell)の“トレントフライヤージャケット”は、世界でも最軽量レベル(わずか205g)のレインウェアであり、非常に軽くて着心地の良い動きやすいウェアに仕上がっています。とても小さく折りたたむことができて軽いので、『携帯性・持ち運びのしやすさ』も最高レベルになっています。防水透湿性の生地は『ゴアテックスパックライトRファブリクス』で、表地には12デニールの極薄の厚みを持つ『バリスティック・ナイロン・リップストップ』を使っています。かなり薄いですが防風性・防水性には優れており、レインウェアとして使用するのには全く問題がありません。欠点としては冬場の防寒着を兼ねたアウターとしてはやや薄すぎて頼りないこと、両サイドのポケットがないのでモノを収納することができないことです。
ザ・ノースフェイス(the northface)の“レインテックス・プラズマ”は、最高水準の防水透湿性能を誇るレインウェアであり、長く大切に使い続けたいという人にはうってつけのレインウェアです。軽量ですが生地に一定の厚みがあるので『冬場のハードシェル』としても使い回しをしやすい一着であり、腕を上げやすくするカッティングを採用したことで、上半身の可動性が高まっています。生地にはゴアテックスの中でも高品質なグレイドに相当する『GORE-TEX Proshell(3層)』が使用されており、ナイロンには20デニールの厚みを持たせています。
パタゴニア(PATAGONIA)の“トレントシェルジャケット”は、『H2Noパフォーマンス・スタンダード』の独自素材を採用した2.5層構造のレインウェアとハードシェルの両方の特徴を持っています。ベーシックなレインウェアとしてのパフォーマンスを備えており、50デニールの厚みのある『リップストップ・ナイロン』を使っているので耐久性・防風性にも優れています。レインウェアとしてのみ使うには少し嵩張って携帯性が悪い欠点がありますが、ハードシェルと兼用するレインウェアとしてはコストパフォーマンスの高い一着になっています。
マウンテンハードウェアの“プラズミック・ジャケット”は、デザイン性の高い防水ジャケットで、透湿性と快適性を高めた『ドライQエバップ』という独自素材が採用されています。フードは片手で素早く調節することが可能であり、『袖タブ・裾ドローコード』も使いやすさが重視された作りになっています。 止水ビスロンアクアガードジッパーの採用によって、激しく雨が降っても内部に水が染み込みにくくなっています。
ミズノの“ストームセイバー”は、ノースフェイスに似た感じのおしゃれなデザインとしっかりとした防水性能があるにも関わらず、1万円前後で買えるという圧倒的なコストパフォーマンスが魅力のレインウェアです。カラーバリエーションも豊富なので、自分のお気に入りの色の一着を見つけやすくなっています。高い耐水圧で外からの雨を防ぎ、高い透湿性で内部からの蒸れを防ぐ『ベルグテックEX』というミズノの独自素材が採用されています。100回の洗濯後でも十分な撥水性を維持するという『耐久性』も併せ持っています。
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