フリース(fleece)はユニクロの安価な普及品の影響もあって、現在では一般的な冬場の防寒着の一種になっている。フリースの原義は、羊一頭から刈り取られた一つながりの羊毛(ウール)あるいは羊毛の織物のことであるが、現在では石油やペットボトルのリサイクル繊維から製造された『ポリエチレンテレフタラート(PET)』というポリエステルの化繊が素材として使われている。
フリースの生地の特徴は、『肌触りの良い柔らかい起毛仕上げであること・軽量なのに保温性が高いこと・汚れにくく水分を吸わないこと(ダウンジャケットよりも速乾性があること)・比較的安価であること(登山メーカーの上質なものは1万円以上はするので必ずしも安価ではないが)・洗濯しやすいこと』である。特に登山ではレイヤー(重ね着)のミッドレイヤー(中間着)として用いられることが多い。
1979年に、モールデンミルズ(Malden Mills)社が化繊のフリース素材を開発しており、“Polatec(ポーラテック)”という商標を獲得しているが、パタゴニアやモンベルをはじめとする現在の登山メーカーのフリースにもこのポーラテックが使用されることは多い。
フリースのアイデアは、北大西洋で漁業に携わる漁師が保温着として着ていた『化繊パイルジャケット』にあるとも言われるが、この化繊パイルジャケットのデザインや機能に着想を得て、1985年に開発されたのがパタゴニアの『シンチラ・フリース』という素材である。当時はフリースというよりもシンチラと呼ばれることが多かったというが、1990年代からは『フリース』の化繊の素材名のほうが一般化していった。
フリースの短所として言われるのは、『静電気がおきやすいこと・引火しやすいこと(火花でフリースの表地に穴が開きやすい)・洗濯で毛玉(ピリング)ができやすいこと』であるが、近年はコーネックス(メタ系アラミド繊維)といった難燃素材で燃えにくいフリースも登場している。アンチピリング(毛玉防止)加工で毛玉のできやすさにも対処している。洗濯は洗濯機で洗うと生地が傷んだり機能性が低下しやすいので、洗剤に浸けておいてから軽く押し洗いすることが最も望ましい。
フリースは化学成分を吸着しやすいという特徴も持っているので、保管する時には『防虫剤・芳香剤』などと一緒に保管しないようにすることが大切である。体質や皮膚の弱さによっては、残留した化学物質によって過敏症による皮膚炎やアトピー性皮膚炎を誘発する恐れがある。