ダウンジャケットとは水鳥の羽毛を封入した保温性の高い軽量のジャケットで、現在もっともポピュラーな冬場の防寒着の一種になっている。ダウンジャケットに封入されている綿毛状の水鳥の羽毛は、グース(ガチョウ)やダック(アヒル)のものであるが、高級品とされているダウンはより保温性に優れているとされるグース(ガチョウ)の羽毛である。
ダウンジャケットに使用されるのは、主に水鳥の胸部のフワフワとした綿毛のような羽毛であり、空気をたっぷりと含んで膨らむほどに保温力が高まる特徴を持つ。防風性の強いナイロンのダウンウェアの生地の中にダウン(羽毛)を封入することによって、ダウンジャケットは『防風性・保温性』の長所を発揮することができる。
防風・防水性能を持つ厚手の生地の中にダウンを封入したモデルでは、真冬でもすぐに暑くなるくらいの保温性能を発揮する。そのため、絶えず動いて活動する登山用としてのダウンジャケットは、余り厚手でないもの(動いていて極端に暑くなり過ぎない薄手で軽いもの)が好まれるのだが、大量発汗するようなダウンだと逆に保温性が失われてしまう。
ダウンの羽毛の真ん中に軸(骨)があるものを『フェザー』といい、6.5センチ以上の軸があるものを『フェザー』、6.5センチ未満の軸があるものを『スモールフェザー』と分類している。フェザーは軸(骨)が長いので、表地のナイロンなどの生地を突き破ってしまう危険性があるので余りダウンジャケットには使用されない。『ダウンのロフト(厚みの嵩)』を確保するために、スモールフェザーが10%未満封入されることが多い。
ダウンジャケットの保温性能は極めて高いが、弱点としては『水濡れに対する弱さ(水濡れによる保温性の喪失)』があり、雨や雪のような天候でダウンジャケットを着る時には注意が必要である。高地や厳寒期の登山でも、水濡れに対する防止策を講じておいた方が良い。アウターウェアとして着用することが想定されているダウンジャケットの場合には、耐水性の強い生地が採用されていることが多いので、登山用のダウンジャケットを選ぶ時には『防水性・耐水性・撥水性の有無』をきちんとチェックしておきたい。
ダウンジャケットの保温力を相対的に数値化して表したものが『フィルパワー(fillpower)』であり、フィルパワーの数字が大きいほど保温力が高くなっていく。フィルパワーとは羽毛の復元力を数値化した指標であり、一定の温度湿度の条件下で1オンス(約28.4g)のダウンをシリンダー内で圧縮した時に、そのダウンが何立法インチにまで復元するかで保温力を測定している。
フィルパワーの数字が大きいということは、同じ重量当たりの空気含有量が多いということで、その断熱効果によって優れた保温性が期待できるということになるが、その分、ダウンジャケットの価格も高くなってくる。 ノースフェイスやモンベル、マーモット、マウンテンハードウェアなど、有名な登山ブランドのダウンジャケットは、2万円以上の高価な価格設定のものが多いが、数千円の商品と比較した場合には『保温性・防風性・撥水性・携帯性・耐久性』などの面で相対的に優れたパフォーマンスを発揮できる。
ただし、ユニクロなどの一般的なダウンジャケットでも、登山に絶対に使えないというわけでは当然ない。ダウンジャケットの上にハードシェルを合わせて着るなどすれば、十分に登山用のダウンとしても活用することができるし、薄手のウルトラライトダウンなどは特に『インナーダウン(重ね着で内側に着るダウン)』としての使いやすさがあって良い。
フィルパワーの数字によるダウンジャケットの保温性評価では、一般的に『550フィルパワー以上』が高品質な暖かいダウンとされている。最近では、登山用品の各ブランドの最上位のダウンジャケットは、『990フィルパワーの羽毛』を使用していることも多く、以前よりも格段に暖かいダウンジャケットとして仕上げられている。一般的に、最上級のフィルパワーの基準は、『700~900フィルパワー以上』だとされている。