企業の経営成績や資産状況(財務状況)、キャッシュ(現金)の出入りを一覧できるのが『財務諸表』です。財務諸表は『決算書』と呼ばれることもありますが、決算書の中で最も重要な情報が掲載されているのが『財務三表』です。財務三表というのは以下の3つの表のことですが、財務三表は『簿記・会計・商法・会社法』のルールにのっとって作成されます。
財務三表は、各企業のウェブサイトの『IR情報(Investor Relations, 投資家向けの情報公開)』で見ることが出来ます。金融庁が公開しているEDINETというシステムでも各企業の決算書・株価・IRなどの有益な情報をチェックできます。決算書を適切に読み解くことで企業の経営状況と財務状況を正しく理解することができ、『勤務先・取引先・投資先の企業』を選ぶ際にも役立ってきます。財務諸表には『貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書』だけではなくて、『株主資本等変動計算書・事業報告・個別注記表・附属明細書』などがあります。
ここでは、会社が事業期間にどのくらい儲かっているのか(利益を上げているのか)を知ることができる『損益計算書(P/L)』について簡単に説明していきます。企業が最終的に『利益』を上げているか『損失』を出しているかは、損益計算書の『当期利益(純利益)』を見れば分かります。企業の利益には『本業による利益』と『副業による利益』と『特別な事情による利益』との3つがあります。企業が本業である事業で得た全体のお金を『売上高』といいますが、売上高に各種の利益と費用(損失)を加えていって最後の最後に計上されるのが『当期利益』になります。
以下に、損益計算書の簡単なモデルを示します。
科目 | 金額(単位:100万円) |
---|---|
売上高 | 1,000 |
売上原価 | 700 |
売上総利益(粗利益) | 300 |
販売費・一般管理費 | 130 |
営業利益 | 170 |
営業外収益 | 80 |
営業外費用 | 30 |
経常利益 | 220 |
特別損益 | 20 |
税引前当期利益 | 240 |
法人税・住民税・事業税 | 80 |
当期利益 | 160 |
損益計算書では、以下の『5つの利益』をチェックすることができます。上の損益計算書の数値を見ながら自分で計算してみると、上の表に書かれている通りの計算結果になると思います。
『売上高(営業収益)』というのは本業で製品・サービスを売り上げた金額であり、そこから『売上原価』を引くと『売上総利益』が算出されます。『売上原価』というのは棚卸している商品の仕入原価・製造原価のことで、商品を仕入れたり製造したりするのにかかるコストです。『売上総利益』から『販売費・一般管理費』を引くと『営業利益』を求めることができます。『営業利益』はその会社が一年間の『本業』で稼いだ利益となります。
『販売費』というのは商品・製品を売るために必要であった営業の人件費・広告宣伝費などの経費のことであり、『一般管理費』というのは販売活動と直接関係しない部門の人件費やオフィスの賃貸料、通信費・交際費などのことです。営業・販売・宣伝に直結するコストが『販売費』であり、それ以外の会社全般の活動・維持にかかるコストは『一般管理費』に当たります。
『経常利益』というのは、営業利益に『営業外収益』を加えて『営業外費用』を引いたものであり、その企業の副業・財テクの損益を表すものです。『営業利益』が本業の経営実績だとすれば、『経常利益』は本業と副業を合わせた総合的な経営実績に当たります。『営業外収益』というのはその名前の通り、営業活動ではない受取利息・配当金などから得た経常的な利益のことで、『営業外費用』というのは支払利息などの経常的なコストのことです。
『経常利益』に『特別利益・特別損失(特別損益)』を加えると、『税引前当期利益』を計算することができます。特別損益というのは事業期間に臨時的に発生した損益のことで、『特別利益』としては固定資産売却益・有価証券売却益などがあります。『特別損失』のほうには固定資産売却損・過年度損益修正などがあります。法人である企業も税金を支払わなければなりませんから、『税引前当期利益』から『各種の税金(法人税・住民税・事業税)』を支払ったものが『当期利益(純利益)』となります。
企業の損益計算書(P/L)を見る場合に最も重要なのは『営業利益(本業の利益)』と『経常利益(本業と副業の利益)』ですが、特別利益が極端に大きい場合には『土地・建物・設備など固定資産の整理』で一時的に利益が出ているだけで、本業(営業利益)のほうは不振に陥っていることがあるので注意が必要です。営業利益が出ているのに経常利益が極端に少ないというような場合には、本業が順調なのに副業で何らかの大きな損失を出している可能性があります。
損益計算書の収益には『売上高・営業外収益・特別利益』の3つがあり、費用には『売上原価・販売費-一般管理費・営業外費用・特別損失・税金(法人税・住民税・事業税)』の5つがありますが、収益から費用を引いて計算される利益には『売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期利益・当期利益』の5つがあります。当然ながら、『収益・利益』は大きければ大きいほど企業の経営業績が良いということになり、『費用』は小さければ小さいほど企業の経費削減・コストカットが上手くいっているということになります。