貸借対照表と企業の資産状況の見方

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貸借対照表と資産分類についての解説

企業の資産・負債の状況について正確に理解できる決算書が『貸借対照表(B/S,バランスシート)』です。『資産』というのは、企業が経営・営業に役立てることのできる各種の財産のことです。企業が所有する『資産』には現金、銀行預金、売掛金、不動産など様々なものがありますが、資産は『固定資産・流動資産・繰延資産(くりのべしさん)』の3つに大きく分類することができます。

『繰延資産』というのは少し分かりにくいですが、会社が支出する費用の中でその費用の効果を将来にわたって及ぼすことができるものであり、代表的な繰延資産としては『開発費・開業費・社債発行費』などがあります。

以下に、貸借対照表の簡単なモデルを示します。厳密な貸借対照表は複雑になるので、具体的な数値は表示していません。左半分の表が『資産の部』となり、右半分の表が『負債および純資産の部』となりますが、必ず左右の表の数値が等しくなるという特徴があります。貸借対照表では常に『資産-負債=純資産(資本)』という公式が成り立つというわけです。

B社の貸借対照表
科目金額(単位:100万円)科目金額(単位:100万円)
流動資産XX流動負債XX
固定資産XX固定負債XX
繰延資産XX株主資本合計XX
資産合計1,000負債・純資産合計1,000

貸借対照表の『資産の部』では、流動資産である『現金預金・受取手形・売掛金・製品』というように現金化しやすい資産から順番に記録していきますが、この順番のことを『流動性配列』といいます。『負債の部』では、流動負債である『支払手形・買掛金・CP(コマーシャルペーパー)』など早く負債を返さなければならないものから順番に並べて記載します。

現金・預貯金など以外の『固定資産』は、以下の3つに分けることができます。

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有形固定資産である『土地・建物・設備・車両』などを購入した時には、そのコストは『減価償却(げんかしょうきゃく)』という手法によって会計処理されます。減価償却というのは購入した固定資産の価値が、年々時間が経過するに従って減っていくという考え方であり、『固定資産の価値が減少した分』を毎年、費用として計上することができます。固定資産にかかる毎年の費用を計算する減価償却の計算法は、『法定耐用年数』『償却率』が税法によって定められています。減価償却費の計算法には、未償却の残高に一定の比率を掛ける『定率法』と毎年一定の償却費を計上していく『定額法』とがあります。

『定率法』では、『未償却残高×償却率』の公式によって償却費を計算できます。『定額法』では、『(取得価額-残存価額)÷法定耐用年数』の公式によって償却費を計算できます。

現金化しやすい『流動資産』には、『当座資産・棚卸資産・その他の流動資産』があります。当座資産には『現金・預金・売掛金・受取手形・有価証券』などがあり、棚卸資産には『商品・仕掛品(未完成品)・部品-資材』などがあります。その他の流動資産としては、『前渡金・仮払金・前払費用』などがあります。

流動資産は現金化しやすい便利な資産ですが、現金・預貯金が銀行の倒産によって失われたり、投資している株式・債券の市場価値が下落したり、棚卸資産が不良在庫になってしまったりといった各種のリスクがあります。『資本』には『資本金・資本剰余金・利益剰余金』がありますが、資本剰余金というのは資本準備金とその他資本剰余金から成り立っています。利益剰余金も同じく利益準備金とその他利益剰余金から成り立っていますが、準備金を資本に組み込むためには株主総会の決議が必要です。

資産総額から負債総額を引いたものが『資本(自己資本)』であり、この資本が大きいほど経営基盤が安定していると言えます。買掛金・借入金などの負債のことを『他人資本』といいますが、会社経営は自己資本と他人資本のバランスの上に成立しており、株式会社の自己資本の多くは『株主資本』によって賄われています。貸借対照表を見れば分かるように、『資産=他人資本(負債)+自己資本』の等式は必ず成り立つようになっています。

資産は『借方(左半分)』となり他人資本と自己資本は『貸方(右半分)』になりますが、借方は企業活動で生まれた資産を示し、貸方は会社の資金をどのような方法で調達したかを示します。企業の資金の調達方法には、株主・投資家がいる市場から直接お金を集める『直接金融』と銀行からお金を借りて資金を集める『間接金融』とがあります。

企業が将来、返済義務を負うことになる『負債』にも、一年以上先に支払期限が到来する『固定負債』と一年以内に支払期限が来る『流動負債』とがあります。固定負債には、社債・長期借入金・退職給与引当金などがあります。流動負債には、支払手形・未払金・買掛金・前受金・短期借入金・預かり金・納税引当金・未払費用・前受収益・関連企業の短期債務などがあります。『流動資産』から『流動負債』を引いたものを『正味運転資金(しょうみうんてんしきん)』といいますが、正味運転資金は企業が営業活動を正常に行うために必要な『資金繰り』の状況を意味しています。

貸借対照表を見ると企業の資産・負債状況が分かりますが、流動資産が少なくて固定資産が大きいのに、負債が大きく膨らんでいて純資産(資本)も小さいような場合には、経営状態が危険な状況になっていることを示しています。安定した健全な財務状況というのは、十分な流動資産と純資産を保有している状況のことであり、固定資産を保有するために極端に大きな借金をしていないということを意味しています。

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