キャッシュフロー経営とキャッシュフロー計算書

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キャッシュフロー経営とは何か?
キャッシュフロー計算書の分類とキャッシュフロー経営の必要性

キャッシュフロー経営とは何か?

キャッシュフロー(cash flow)とは、企業にいくらお金が入ってきていくらお金が出て行ったのかという『現金の流れ(現金収支)』のことであり、『現金流量』と訳される。企業活動によって実際に得られた『収入』から、外部に支払うことになった『支出』を差し引いて手元に残った現金の流れがキャッシュフローである。

キャッシュフロー会計では、『現金(キャッシュ)の出入り=現金収支』だけを原則として記録するので、将来的に入る予定になっているが今現金としては持っていない『利益』についてはキャッシュフローに含めない。欧米企業には20世紀後半から『キャッシュフロー計算書(Cash flow statement:C/F)』の作成が義務づけられてきたが、日本でも2000年から上場企業は財務諸表の一つとしての『キャッシュフロー計算書』の作成が法的に義務づけられることになった。

一定期間に流入する現金を『キャッシュ・イン・フロー』、流出する現金を『キャッシュ・アウト・フロー』と呼ぶが、その二つをまとめて『キャッシュフロー』と言っているのである。キャッシュフロー計算書は、キャッシュフロー会計に基づいて作成されることになる。『キャッシュ・フロー会計(cash flow accounting)』というのは、企業の経営業績を『現金・預金の増減(現金が増えたか減ったか)』を中心にして明らかにするキャッシュを重視した会計手法のことである。

企業間の契約では、商品・サービスを販売する契約を締結しても、その場ですぐにキャッシュ(現金)が入金されるわけではなく、多くの場合に1~3ヶ月ほど入金が後ろ倒しになる『掛け取引』が行われている。掛け取引の場合には、まだキャッシュ(現金)として振り込まれていない『売掛金』をそのまま『売上』として計上してしまうので、実際に企業が保有している現金額とのズレが生まれてしまう。

決算書(財務諸表)の『損益計算書』に記載されている『売上高・営業利益・純利益(当期利益)』などの数字は、売掛金(未回収金)を含んでいるので、実際のお金の流れ(実際に持っているお金)と比較するとかなりのズレがあるのである。この現金(キャッシュ)の実際の流れと会計上の利益の違いを指して、『利益は意見(解釈)・キャッシュは事実』という言葉が言われることもある。

損益計算書や貸借対照表から導き出されて記載されている『利益』という概念・数字は、会計上のルールや事務処理に従って計算されたものであり、実際のキャッシュフローとは異なっているので、それらの決算書とは別に『キャッシュフロー計算書』という決算書も作成される必要があるのである。

キャッシュフロー計算書は、『営業活動によるキャッシュフロー』『投資活動によるキャッシュフロー』『財務活動によるキャッシュフロー』『フリー・キャッシュフロー』に分類されている。優良企業のキャッシュフロー計算書では、営業キャッシュフローがプラス(営業成績好調)、投資キャッシュフローがプラス(積極的な設備・人材への投資)、財務キャッシュフローがマイナス(借入金の返済・負債の減少)などの傾向を確認することができるだろう。

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キャッシュフロー計算書の分類とキャッシュフロー経営の必要性

キャッシュフロー経営の参考にされることになる『キャッシュフロー計算書』の各種の概要は以下のようになっている。

1.営業キャッシュフロー……本業の事業活動を介して稼いだお金の流れ。

2.投資キャッシュフロー……設備投資・株式投資(有価証券投資)・人材投資・M&A(企業の合併買収)などを行って支出したお金の流れ。

3.財務キャッシュフロー……増資(配当金支払い)や債務(借金返済)などに伴うお金の流れ。

4.フリー・キャッシュフロー……『営業キャッシュフローのお金の流入』から『投資キャッシュフローのお金の流出』を差し引いたもので、企業が実際に稼いで手元に残っているお金を表したもの。

5.EBITDA(イービットダー,イービットディーエー)……営業キャッシュフローの前提となる税引き前の利益の全体であり、『営業損益+減価償却費』で算出される。“EBITDA”は、“Earning Before Interest, Tax, Depreciation,and Amortization(利払い前+税引き前+償却前の利益の合計)の略である。

キャッシュフロー計算書の基本構造に基づく記載は、『期中のキャッシュの増減額+期首のキャッシュ残高=期末のキャッシュ残高』であり、現金(キャッシュ)をどのように使ったかを項目ごとに分かりやすく整理するために『営業キャッシュフロー』『投資キャッシュフロー』『財務キャッシュフロー』の3つに分類しているのである。

1980年代までの日本経済の高度成長期には、企業は銀行の融資によって資金調達する『間接金融』に依存していたが、1991年のバブル崩壊によって株・不動産などの担保の資産価値が下落して『不良債権問題』が深刻化したため、銀行はハイリスクな事業への融資を渋るようになり、企業も銀行融資に頼らずに金融市場から資金調達する『直接金融』へとシフトし始めた。

国際会計基準ではキャッシュフロー計算書が重要な役割を果たしているが、銀行からの融資(借金)に頼らず、投資ではなく本業の事業で稼いでいる事を明確化するために、企業は本業の売上・利益の増加と株式市場からの資金調達に重点を置いた『キャッシュフロー経営』を推進するようになったのである。

キャッシュフロー経営とは、本業の利益をキャッシュベース(現金ベース)で管理して、経営基盤を安定化させるために『内部留保(現金の蓄積)』を厚くしていこうとする経営姿勢であり、『現金(キャッシュ)は事実であり、利益は解釈である』というお金・利益(会計)の本質論に立脚した経営手法である。損益計算書で示される利益は『実際に企業が持っているお金』そのものを示さないので、企業の経営実態や業績の推移を正確に把握するためにはキャッシュフロー計算書の数字のほうが目的に適っていると言える。

キャッシュフロー経営の具体的方法としては、財務面では『保有株式や不動産の売却・不採算部門の整理や人員削減(リストラ)・新規設備投資の抑制・有利子負債の圧縮』などがあり、生産面では『稼働していない工場など遊休施設の整理売却・商品在庫の圧縮や遊休人員の整理・売れ残りの在庫を減らす試み』などがある。営業面でもキャッシュを増やす試みとして、『売掛金の削減(現金取引の増大)・顧客からの債権回収の効率化や強化・営業職の給与への成果給や年俸制の導入(基本給の削減)』などがある。

キャッシュフロー経営は、『ストック(含み益に頼った資産運用・リスク投資・借入金)』から『キャッシュ(現金ベースの収入につながる本業の売上の重視)』への企業経営の本質の転換を意味している。

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