ピーター・センゲの『学習する組織(learning organization)』

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ピーター・センゲの『学習する組織(learning organization)』の概念とその定義

学習する組織の5つの構成技術(Fifth Discipline)

ピーター・センゲの『学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)』の概念とその定義

アメリカのマサチューセッツ工科大学の経営学教授のピーター・センゲ(Peter Senge)は、“組織論のバイブル”と呼ばれた著作『最強組織の法則――新時代のチームワークとは何か』を書いたことで知られる。『最強組織の法則――新時代のチームワークとは何か』の原題は、“The Fifth Discipline, 1990”である。

『最強組織の法則――新時代のチームワークとは何か』が書かれた1980年代の時期のアメリカ経済は、日本経済に対する競争優位を失って低迷し自信を失いかけていたが、このP.センゲの著作に示された『学習する組織(learning organization,ラーニング・オーガニゼーション)』というコンセプトが、アメリカ企業の新たな組織力と競争力を再構築するための気づきとなったのである。

『学習する組織(learning organization)』という概念そのものは、1970年代にハーバード大学の教育学・組織行動学の教授であったクリス・アージリスドナルド・シェーンが提唱したものである。クリス・アージリスは『学習する組織』の定義を、『学習と成長意志を持つ人間に対して、成長の機会を与えながら自らも学習して進化する組織』としていた。

クリス・アージリスやドナルド・シェーンの『学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)』の概念に対して、ピーター・センゲはその『全体的な概念』『構築の方法論(実現手段・構成技術としてのディシプリン)』を提示した。ピーター・センゲがアメリカ企業が学習する組織として発展していく必要性を説いた背景には、急速に変化する社会構造・国際経済と今までとは比較にならない知識・情報が瞬時に駆け巡る『情報化時代』の到来があった。

“理想主義的な現実主義者(リアリスト)”を自称するピーター・センゲは、アメリカ企業の競争優位を高めるために『学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)における個人と集団の双方の継続的学習』こそが必要であると訴えたのである。

ピーター・センゲの学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)の定義は、以下のようなものである。

1.人々が継続的に学習してその能力を拡張することで、望むものを創造したり、普遍的な概念や新たな発想を成長させたりする場所。

2.人々が高いモチベーション(意欲)を持って、共通の目標(ビジョン)の実現のために、コミュニケーションの方法を学習しながらシステマティックなアプローチをしていく組織・チーム。

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学習する組織の5つの構成技術(Fifth Discipline)

ピーター・センゲが学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)の実現手段として上げた『5つの構成技術(Fifth Discipline:フィフス・ディシプリン)』とは以下のようなものである。

1.自己マスタリー(personal mastery)

向上心を持った一人一人が自己研鑽して、『自分のビジョン(目標)』を達成(創造)できるように技能・知識を高めたり精神・現実認識を成長させたりする。

2.メンタルモデルの克服(mental models)

人々の間で『固定観念・先入観』として凝り固まっている硬直的かつ固定的な物事の考え方(=メンタルモデル)を修正・変革して克服していく。あるいは、マネジャーに集団組織の価値観や革新的な理念を支えるような新たなメンタルモデルを構築させていく。

3.共有ビジョンの構築(shared vision)

集団組織に所属しているすべての人間が、『企業の未来像・事業の目的性・仲間と支え合う共同体意識』を共有して、それらの共有されているビジョンを実現できるように努力する。

4.チーム学習

チーム学習の方法としては、『ダイアログ(dialogue:対話)』と『ディスカッション(discussion:討議)』という異なる2つの相互補完的な集団コミュニケーションを使い分けていく。ダイアログは問題点や気づきをどんどん意見として出していく『対話(意見交換)』であり、ディスカッションとは集団組織の共有ビジョンの実現のために『将来の意思決定・選択肢の絞り込み』を進めていく討議のことである。

5.システム思考

上記した4つの構成技術(ディシプリン)を統合していく相互作用を前提とした思考方法がシステム思考である。あらゆる問題や事象が時間・空間を隔てながらも相互作用していると考え、『ダイナミックかつ機能的な相互作用』の視点から全体のビジョン・目的の実現と創造を考えていく。

ピーター・センゲが定義した『学習する組織』の実現手段であるディシプリン(構成技術)は、個人と集団組織の相互作用を通した学習と成長のための技術であり、この学習は実践的プログラムとして生涯にわたって常に継続進展していくものとして仮定されている。P.センゲのいう学習の本質とは、『旧弊的な固定観念・先入観としてあるメンタルモデルを変革・克服する学び』のことであり、ただ仕事上で必要な知識・技術を学べばよいという意味での学習ではない。

20世紀半ばまでのマネージャーが従業員を組織的に監視・指示していく『管理する組織』の対極にあるものが『学習する組織』であり、すべてのメンバーの意欲と学習能力を高められる学習する組織こそが、最終的に『集団組織で共有された大きなビジョン・目標』を創造的に達成していくことが出来るのである。

旧弊的な固定観念に塗れた非創造的な思考・行動のパターン(=メンタルモデル)を克服するために、それぞれのメンバーが自分の知識・技能を高めながら集団組織の空気をオープンにしていくことが『自己マスタリー』である。すべての人が共有可能な集団組織の『共有ビジョン(共有される目標・価値)』を設定し、その共有ビジョンの実現のために個人と組織が相互作用しながら学んで前進していくことが『チーム学習』となる。自己マスタリーでメンバーが能力を高めて、共有ビジョンとチーム学習が成り立つ組織は、最終的にすべての構成要素が相互連関する『システム思考』によって、創造的かつ革新的な目標達成を成し遂げられる可能性が高まるのである。

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