企業の経営戦略(ビジネス戦略)を立案するためには、まず競争市場における自社の状態と自社を取り巻く環境の条件を正確に知らなければならない。“自社のステータス”と“競争市場の環境”についてシンプルかつ的確に知るための分析のフレームワークが『SWOT分析』と呼ばれるもので、アメリカのビジネススクールのMBA(経営学修士号)の履修課程においても経営戦略の基本前提になっている。
SWOT分析のSWOTとは以下の項目の頭文字であり、これらの要因を分析して組み合わせることによって、経営戦略・ビジネス戦略を明らかにしていくことができる。
S(Strength)……強み
W(Weakness)……弱み
O(Opportunity)……機会
T(Threat)……脅威
“S(Strength)”と“W(Weakness)”は、自社の強みと弱みを総合的に分析していく『自社分析』のフレームワークである。自社分析に関係する要素には『人材の有能性・資金力・技術力・設備の充実度・ビジネスモデル・情報とノウハウの蓄積・組織的ネットワーク』などがある。
“O(Opportunity)”と“T(Threat)”は、競争市場の環境における機会と脅威を総合的に分析していく『環境分析』のフレームワークである。環境分析に関係する要素には『経済環境(ビジネス環境)の変化・社会情勢の変化・ライフスタイルの変化・法律改正や規制緩和・業界構造や企業間の競争力の変化』などがある。
SWOT分析における“S(Strength)”と“W(Weakness)”の自社分析というのは、競合他社と比較した場合の自社の相対的な強みと弱みのことである。“O(Opportunity)”と“T(Threat)”の環境分析というのは、自社を取り巻く競争市場の環境や社会経済情勢の変化がどのような影響を及ぼしてくるかということである。
自社分析の強み・弱みと関係する項目である『人材の有能性・資金力・技術力・設備の充実度・ビジネスモデル・情報とノウハウの蓄積・組織的ネットワーク』などを列挙していき、その中から戦略立案上(ビジネスの目的達成上)で重要なものを1~2つ選んでその強み・弱みを検討していく。
環境分析の機会・脅威と関係する項目である『経済環境(ビジネス環境)の変化・社会情勢の変化・ライフスタイルの変化・法律改正や規制緩和・業界構造や企業間の競争力の変化』などを列挙していき、その中から市場競争上(ビジネスの環境適応・競争優位の観点)で重要なものを1~2つ選んでその機会(チャンス)・脅威(リスク)を検討していく。
SWOT分析を行った後には、『横軸(X軸)に強み(S)と弱み(W)+縦軸(Y軸)に機会(O)と脅威(T)』を配置したマトリックスの四象限の分類図式が書かれることが多い。このSWOT分析のマトリックス図式では『右上(S+O)=最大のビジネスと市場の機会』『右下(S+T)=各種の経営戦略によって環境の脅威に対抗可能』『左上(W+O)=自社の弱みを強みに変えるような経営戦略によってビジネスの機会』『左下(W+T)=企業間競争や環境適応における最大の脅威』という4つの象限に分けて考えることができる。
一般的には、『S+Oの象限=最大のビジネスと市場のチャンスで積極的に事業展開すべき』『S+Tの象限=多角化戦略の有効性がある』『W+Oの象限=事業転換戦略の有効性がある』『W+Tの象限=最大のビジネスと市場の脅威で撤退戦略・事業縮小を検討すべき』という風にマトリックスは解釈されている。
SWOT分析の有効性は、自社分析と環境分析(外部環境分析)を組み合わせることによって、ビジネス戦略の方向性と種類を明らかにしやすくなるということで、『自社の強みをどう伸ばせるか+自社の弱みをどうカバーできるか』や『市場や社会変化の機会をどのように有効活用できるか+市場や社会変化の脅威をどのように回避できるか』という視点から、何度も繰り返しこれから有効になりそうなビジネス戦略を練り直していかなければならない。
ファミリーレストラン・チェーンがSWOT分析を行ってみて、『自社の強み(S)=ハンバーグやパスタを中心とした豊富な洋食メニュー』『自社の弱み(W)=高価格帯の高級感のあるメニューが少なく軽めの和食メニューが少ない』『市場・環境の機会(O)=利益率の高い高価格帯のメニューを導入して売れれば営業利益が拡大する』『脅威(T)=高級和牛のメニューを導入したいが同じ地域にステーキに力を入れている小規模な人気チェーン店がある』という分析結果が得られたとする。
この場合に採用可能な経営戦略・ビジネス戦略には、どのようなものがあるだろうかと考えていくわけだが、ここで取り得る戦略の選択肢としては『高価格帯の高級メニューを導入するに当たって高級和牛のステーキに力を入れるのか、マグロやウニの入った刺身定食のような和食セットに力を入れるのか(=どちらのほうが品質の良い食材を安く仕入れられるルートを開拓しやすそうか・顧客のビッグデータから肉と魚のどちらに需要がありそうか等)』といったことを考えることができるだろう。
SWOT分析というのは、『自分(内部)の強み・弱み』と『環境(外部)のチャンス・脅威』との4つの要因の分析を進めていくシンプルなものである。そして、このSWOT分析に基づく戦略的な意思決定は、『企業の大規模なビジネス戦略』だけではなく『個人のキャリアプランや経済人生の設計+小規模な事業者のニッチ市場における経営戦略』などにも幅広く応用することが可能なものなのである。
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