『M&A(企業の合併・買収)』の解説とアライアンス

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M&Aとは何か?:M&AのメリットとM&Aを実施するための方法(株式売買・株式譲渡)


M&Aにおける『合併・営業譲渡・第三者割当増資』についての説明


M&Aの歴史とM&Aが増加傾向にある理由


M&Aの増加要因についてのまとめ:生産人口減少・経営者高齢化・ベンチャー企業


アライアンス戦略:企業間の連携とアライアンスのレベル

M&Aとは何か?:M&AのメリットとM&Aを実施するための方法(株式売買・株式譲渡)

M&A(エムアンドエー)とは“Mergers and Acquisitions”の略であり、『企業の合併・買収』を意味しています。『合併(Mergers)』とは複数の企業が一つの企業に合同することであり、『買収(Acquisitions)』とは一方の企業が他の企業の株式あるいは事業を買い取って子会社化したりすることをいいます。

現代の企業ではグローバルな経営戦略の一環としての『M&A』の必要性・重要性がますます高まっていますが、M&Aを実施することによって得られるメリットは大きく以下の3点にまとめることができます。

M&Aというとドラマ『ハゲタカ』などの影響もあって、相手側の意向を無視して、力づくで無理やりに買収する『敵対的買収』の悪いイメージが強いのですが、実際のM&Aでは合意に基づく友好的買収も多くなっています。広義のM&Aには、経営権までは移転させずに、企業間で相互利益を得られそうな協力関係を構築する『資本提携・業務提携』も含まれていますので、『M&A=企業の力ずくの乗っ取り』というイメージは正しいものではありません。

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M&Aを実施する場合の具体的方法としては、主に以下の5つを想定することができます。

株式の売買によるM&Aはお互いの会社が合意の上で、現金によって株を売買する方法があります。株式の売買では『TOB(株式公開買付け)』という方法もあり、TOBでは株式の『現時点の時価を上回るプレミアム価格』で株式を買い取ることを宣言・公表して買い手を募ることになります。TOBには相手側の同意を取り付けた上で行う『友好的買収』もあれば、相手側が反対しているのに一般投資家などから高い価格で株を大量に買い集めて経営権を奪おうとする『敵対的買収』もあります。

『株式譲渡(譲受)』のM&Aでは、譲渡側と譲受側で合意した条件に基づいて契約を締結し、その契約によって譲渡側から株式を譲受側に譲渡して『譲渡の対価』を支払うことになり、理想的な友好的買収のケースになってきます。

双方の合意に基づく株式の売買や株式譲渡によるM&Aには、『譲受側(買収する側)』と『譲渡側(買収される側)』のそれぞれに以下のメリットがあります。

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M&Aにおける『合併・営業譲渡・第三者割当増資』についての説明

M&Aを実施するための方法である『合併(mergers)』は、規模の大きな企業が中小企業・新興企業を飲み込む吸収合併が多いですが、この時には、双方の会社の一株当たりの価値を評価して、ほぼ等しい価値の比率に換算してから株式(株数)を交付することになります。

合併は大きく、『水平的合併(対等な企業間の合併)・垂直的合併(小さな会社の子会社化)・製品拡大型合併(テクノロジーやノウハウで製品の価値を強化する合併)・市場拡大型合併(競合他社の製品を吸収して市場シェアを拡大する合併)・コングロマリット型合併(大企業同士が市場の寡占を強化するために行う合併)』に分類することができます。

『営業譲渡』によるM&Aでは、事業部(部門)の一つなどに対象を絞り込んだM&Aであり、『資産・負債の一部だけの売買』によって成り立つもっとも手軽なM&Aとなっています。

『第三者割当増資』は、売り手の企業が新たに新株を発行して、買い手がその新株を引き受けるというもので、売り手側は財務基盤を強化することができます。反対に、敵対的なM&Aの防衛策として『第三者割当増資』をして買い手側の保有株数を希釈化することもあります。

アメリカでは1960年代に最初のM&Aのブームが発生して、現在にもつながる巨大企業群が形成されましたが、現在のアメリカでは『事業・技術の将来性』があるのに『株価が割安なままで放置されている企業』が敵対的買収の標的になりやすくなっています。敵対的買収では、経営陣を入れ替えて企業の経営権を掌握するというオーソドックスなものもありますが、不採算部門(赤字部門)を売却することで企業価値・株価を高めて売り抜けるという『短期の利益獲得』を目的とするものも多くあります。

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M&Aの歴史とM&Aが増加傾向にある理由

1980年代には、日本の景気と株価が過熱する『バブル景気』が起こったが、日本企業は『円高・貿易摩擦の激化(アメリカの圧力強化)のリスク』を回避するために、積極的な海外進出(米国進出)をしながらM&Aを活発化させていった。

バブル景気がピークに達した1989年には、ソニーによるコロンビアピクチャーの買収、、三菱地所によるロックフェラーセンタービルの買収といった、アメリカの主要な大企業を買い叩くM&Aが実施されて、日本企業の資本力(経営体力)の強さが世界に印象づけられたが、同時にアメリカ人による『ジャパン・バッシング』も激しくなっていった。

しかし1991年に日本のバブル経済が崩壊すると、日本企業は海外企業を買収するほどの経営体力を失い、逆に不採算部門や子会社を売却して企業延命を図る『リストラクチャリング(事業の再構築)』の一環としてM&Aを活用する事例が目立ち始めたのです。 企業経営のグローバル化やM&Aの件数増加により、1997年の独占禁止法の改正、1999年の株式交換・株式移転制度の導入、2006年の会社法施工、2007年の三角合併の解禁など、M&A関連の法律改正・制度改革が相次いで行われました。

しかし、2008年のサブプライムローン危機からのリーマンショック、2011年の東日本大震災の発生によって、日本のM&Aの水準は会社法の施工以前の水準にまで減少しました。近年は、再びM&Aの実施件数は増加傾向にありますが、それは買収する側の企業と買収される側の企業の双方にM&Aをする要因とそのメリットがあるからです。

買収する企業の要因としては、2013年以降はアベノミクス(量的金融緩和)の影響もあって、日本の景気が堅調に拡大し続けていることがあり、業績を高めて内部留保を増やしてきた企業の財務状態が良いという要因があります。将来の少子高齢化による『労働力不足・市場縮小の不安』が高まっており、新技術や新商品の導入によって業績の拡大をしておきたいという企業がM&Aを熱心に行っている背景もあります。

買収される企業の要因としては、『経営者の高齢化・事業承継の問題』があり、中堅企業・中小企業の経営者の平均年齢が上がっているのに後継者がいないという問題があり、その現実的な解決策として合意の上のM&Aが行われやすくなっています。中堅中小企業の合意のあるM&Aは、敵対的な乗っ取りや刹那的なマネーゲームなどではなく、きちんと事業を継承して発展させてくれそうな企業に売りたいという具体的な問題解決策として実施されることが多いのです。

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M&Aの増加要因についてのまとめ:生産人口減少・経営者高齢化・ベンチャー企業

2010年代以後の日本企業において『M&Aが増加する要因』をまとめると以下のようになります。

1.少子高齢化による人口減少(労働者人口・消費者人口の減少)

未婚化・少子化の進展により、日本における生産年齢人口(15歳~64歳)は年々減少しており、特に『建設業・運輸業・飲食業の人材難』が深刻化しています。地方の中小企業は人材不足によって経営を維持することが困難になっており、経営体力が残っているうちに、経営権を信頼できる第三者に適正価格で譲渡したいというニーズが高まっているのです。

2.経営者の高齢化と後継者不在

地方の中堅・中小企業の高齢者の平均年齢が60代半ばを越え始めていますが、そういった会社の多くが後継者が不在の状況(子・孫が別会社や役所に勤めていたり子・孫がそもそもいないなど)にあり、経営者が自分の死後に会社がどうなるのかについて不安を募らせています。自分の体と頭がまだ元気なうちに、経営権を信頼できる第三者に適正価格で譲渡したいというニーズが高まっているのです。

3.業界の寡占化と生き残るための市場シェア確保

小売店・飲食店・ドラッグストア・ガソリンスタンドなど各業界において、市場シェア拡大のためのM&Aが相次いで行われており、『業界の寡占化・資本力のある大企業の市場独占』によって地方の中小企業は生き残りが困難になってきています。大企業のシェア拡大と中小零細企業の独自経営の限界が折り合った時に、M&Aが行われる確率は高くなってくるでしょう。

4.ベンチャー企業のイグジット戦略

近年、IPO(新規株式公開)の件数が回復基調にありますが、新興ベンチャー企業のイグジット戦略(出口戦略)として『IPO』と『M&A(会社売却)』のいずれかが選ばれることが多くなっています。アメリカでは新興ベンチャー企業のイグジット戦略として、M&Aで自社を高額で売却することが一般的に行われていますが、今後日本でもそういった新興企業のM&Aが増えてくると予測されます。

買収する企業にとってのM&Aの最大のメリットは、企業の新規事業への進出や新テクノロジーの開発にあたって、『時間コスト』を大幅に短縮することができるということです。買収される企業(譲渡する企業)にも事業のリストラクチャリングによって、不採算部門や自社に不要になった部門を売却して資金を得られるメリットがあり、『選択と集中』によって経営状況を立て直しやすくなります。

M&Aの本来の目的は、『企業価値の向上+企業価値の低下の抑止』でなければなりません。その観点からすれば、買い占めた株を会社に高値で買い戻しさせようとしたり、買収後に経営に関知せずにただ資産をバラバラにして売却したりするようなM&Aは有害無益であり、社会的利益の増進にはつながらないでしょう。『株価操作(一時的な株価上昇を誘発してサヤ取りをする)』だけを目的とするM&Aは、法律に違反する可能性もある『不正なマネーゲーム』に過ぎず、『企業価値の向上・市場の公正性・関係者の満足度』の基準からしても正当性を保つことはできないでしょう。

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アライアンス戦略:企業間の連携とアライアンスのレベル

企業間の合併・買収であるM&Aでは、複数の企業・部門が一つの企業に統合されるので一方の企業の独立性は失われます。それに対して戦略的提携と訳される『アライアンス(alliance)』であれば、各企業の意思決定の独立性を保ったままで、緩やかな結びつきを作ることができます。

企業間のアライアンスのニーズは、市場の需給や価格に基づくその都度の取引よりも『安定した取引関係・信頼関係』を作るということにあります。かつての日本の大手メーカーと下請け企業の継続的な安定した取引関係が、最も拘束度(安定感)の強いアライアンスの事例になりますが、『安定した長期の取引関係(すぐに取引がなくなるリスクがない信頼関係)』というのは、仕事を依頼する側にも請け負う側にも双方の利益(メリット)があることが多いのです。

近年は、同じ業界で競争している企業であっても様々なアライアンスを結ぶことが普通になっており、トヨタはGMやフォルクスワーゲンともアライアンスを結んでいるし、世界の家電メーカーはマイクロソフトやインテル、IBMなどと様々な契約内容のアライアンスを結んでいるのです。アライアンスが増加している背景には『各市場の競争激化』があり、無駄な競争(駆け引き)のコストを削減して効率的な生産体制やサービス提供体制を整えられるというメリットがあるからです。

アライアンスには様々な契約内容がありますが、アライアンスの一体感や拘束度のレベルが高いものから順番に並べると以下のようになります。

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