資本主義経済には、株式会社や有限会社をはじめとするさまざまな形態の会社(法人)があり、それぞれ決められた条件のもとに資金を集めて事業を行っています。また、資本主義経済にも、利潤追求を目的としない公益性の高い事業を営む法人(学校法人・宗教法人・NPO,NGO・財団法人など)があります。
営利法人の法人形態には、『株式会社・有限会社・合資会社・合名会社・相互会社』があり、それぞれ以下のような特徴(最低資本・構成員数・経営者責任)を持っています。ここでは、株の発行で事業資金を集める株式会社のシステムを中心にして企業活動を見ていきます。
注記:2006年中に「会社法」が施行された場合には、有限会社は廃止され、現在ある有限会社は「特例有限会社」という形態に移行します。また、会社の所有と経営が一体化した有限責任社員による「合同会社(LLC:Limited Liability Company)」という新しい会社形態が誕生します。会社法施行後には、合同会社と合資会社、合名会社は「持分会社」のカテゴリーに分類されるようになり、持分会社はまとめて同じ法律の適用を受けるようになります。
法人形態と特徴 | 株式会社 | 有限会社 | 合資会社 | 合名会社 |
---|---|---|---|---|
設立時の最低資本金 | 1,000万(起業支援の特例あり) | 300万円 | 1円 | 1円 |
経営者責任 | 有限責任 | 有限責任 | 無限責任 | 無限責任 |
設立時の最低社員数と責任 | 有限責任社員 | 有限責任社員 | 無限責任社員(1名)と有限責任社員 | 無限責任社員(2名) |
取締役 | 3名以上 | 1名以上 | 不要 | 不要 |
監査役 | 1名以上(事業規模による) | 不要 | 不要 | 不要 |
特徴 | 多額の資金を株式市場で集められ、社会的信頼度が高い。 | 株式会社ほどの資本と事業規模を持たない中小企業。 | 個人事業主が事業規模を拡大した感じの法人。 | 個人事業主の協同といった雰囲気の小規模な法人。 |
法人を設立して起業をしようと考えている人の場合には、自分たちの資金繰りをどうするのか、事業規模や社員数はどれくらい必要なのかを考えて、無限責任と有限責任の違いを理解した上で法人設立の手続きを進めたほうがいいでしょう。
但し、2005年7月26日に公布された新しい会社法では、株式会社と有限会社が統合されて一本化されます。現在の有限会社は、会社法施行後は、商号中に有限会社という文字の使用を義務付けられる『特例有限会社』に変更され、決算公告や会計監査の義務が免除された株式会社の一形態となる予定です。
ここで、株式会社(a joint-stock corporation)とは何かを考えてみると、事業資金を株の発行によって集める企業、証券市場(株式市場)で事業資金を準備する法人という事ができます。株式を売買する市場のことを、証券市場(株式市場)といいますが、株券とは「株式会社に出資することで獲得した配当金や株主優待の権利を証券化したもの」と考えることが出来ます。株式会社の株券を買ってくれる個人は、出資者であると同時に投資家ですから、株式会社は集めたお金で事業を展開して利益を上げるように努力しなければなりません。
株式会社が株の発行で集めたお金で事業活動を行い、余剰な利益が出た場合には、出資してくれた個人の出資額に合わせて「配当金」を支払います。一般的に、株を長期保有して業績に応じた配当金を受け取る個人を「出資者」と呼びます。反対に、株を長期に保有する意志がなく、株価の動向を見ながら高くなった時に売却して短期利益を得ようとする個人を「投資家」といいます。
最近(2006年時点)流行っている、インターネットを使った株のオンライン取引を頻繁に時間単位で行う人を、デイ・トレーダーと呼んだりします。デイ・トレーダーの大部分は、短期的なキャピタル・ゲイン(株の売却益)を狙った投資家と言えるでしょう。
とはいえ、英語では投資家も出資者も“investor”と言いますから、両者の境界線は明瞭ではありません。特定企業を長期的に応援する出資者であった人が、ある時には、その株の配当金を無視して売却益のみを狙う投資家になったりします。お金を出して株を買う人の心理的側面に着目すると、出資者は『特定の企業の理念や商品・サービスに共感して応援したいとする心理』が強い人であり、投資家は『今後の成長や利益拡大が期待できる企業を見つけ出して、何とか大きな売却差益を得たいとする心理』が強い人であると言えます。
資本主義経済の典型的な特徴が最もよく表れるのが株式市場であり、『お金を持っている人がお金を出し、仕事のアイデアや能力を持っている人がそのお金を預かって仕事をする』というのが株の基本的な理念です。資本主義とは、お金(資本)を投資して事業活動を拡大して利潤を増やしていこうとする経済体制のことを意味しますから、株式市場を通じて何とかして『投資したい人達のお金と将来性のある事業のアイデア・能力』を結びつけようとするのですね。
株式会社の株の所有者のことを株主といい、株主はその出資した金額に応じてその会社を所有していることになります。株式会社の仕組みを考えると、会社の所有者は、厳密には、会社を起業した社長(代表取締役)やそこで働く社員ではなく、その会社の所有権を分有している株主であるという事になります。株主は会社の所有者としての権利を持ちますから、会社に関する重要な決議(経営方針・事業の説明・役員人事)が行われる株主総会へ出席でき、会社の経営に対する発言権を持っています。法的には、株主総会において、取締役の経営方針に納得できない株主が過半数である場合、その辞任を求める不信任決議を為すことが出来るのです。
株主の権利には、『株主総会への参加・発言の権利』と『会社の業績に応じた四半期ごとの配当金(インカム・ゲイン)や株主優待を受け取る権利』などがあります。会社に要求できる権利とは別に、株主は所有している株券を証券市場で自由に売却することができ、買った時の差額によって売却差益(キャピタル・ゲイン)を獲得することができます。しかし、当然、預貯金などと違って元本保証はされず、株価は絶えず変動していますので、買った金額よりも値段が下がってしまうリスクを孕んでいます。
証券会社は、投資家(出資者)と証券市場(東証など)の間の売買を仲介して手数料を徴収することで利益を上げている会社です。政府は、株主の証券取引に、有価証券取引税やキャピタル・ゲイン税などを課税して歳入を増やしていますが、証券市場に関する規制はかなり緩和されてきています。ライブドアショックによって株式ブームやデリバティブ(金融派生商品)への関心に少し水が差されましたが、今後も、「金融・株式市場における自己責任の資産運用」は多くの人の関心を集めると見られています。