規制緩和の影響と産業構造の変化

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日本経済では、国内の基幹産業や伝統産業を保護するという名目の下、多くの産業分野に官庁の許認可を必要とする保護的な規制(護送船団方式の規制)が掛けられていました。しかし、国際競争への適応や諸外国からの市場開放の圧力によって、各産業分野の規制緩和が続々と行われていきました。その結果、今では多くの分野で特殊な規制や保護が廃止されてきており、誰もが自分の行いたいビジネスを自由に行える方向への法的整備が進められています。

「規制緩和」というのは、それまで官公庁の法規制や保護的措置で保っていた経済秩序を、民間の競争原理に基づく自律的秩序に転換しようとする新自由主義(ネオリベラリズム)的な改革の側面を持っています。もちろん、官が主導権を握る保護経済にも、競争力の弱い事業者を保護したり、競争に適さない公共性の高い分野の信頼性を担保したりという良い面もあるので、全ての産業分野を規制緩和しさえすれば経済が良くなるというわけではありません。

規制緩和による競争激化と価格破壊

しかし、1992年の大規模小売店舗法(大店法)の改正や食糧管理法(食管法)の規制緩和によって、日本の産業構造は大幅に変化し、資本力とブランドイメージ、アイデアのある強い企業が、資本力やブランド力、アイデアの乏しい弱い企業を圧倒する競争経済の時代が到来しました。全国に大型店舗を持ち、高いブランド力を持つような小売店は、地方都市へもその店舗を広げて、地元の小さなお店の営業を圧迫したりもしましたが、消費者の利益や利便性は上がりました。

規制緩和によってコンビニエンス・ストアでもお酒・タバコ・切手・葉書などあらゆる商品を取り扱えるようになったので、セブンイレブンやローソン、ファミリーマートなどに代表されるコンビニ業界の売上は規制緩和後に大きく伸びました。現在では、店舗数が多くなり過ぎて、地域によってはコンビニが供給過剰となって赤字になる店舗も増えているようですが、規制緩和によって、日本各地にコンビニの店舗が拡散しました。

日本の流通販売業界における大変革がもたらしたものは、各社の競争による安売りの強化による「価格破壊」と消費者の需要を喚起する為の「商品アイテム数の増加(商品の選択肢の増加)」でしたが、競争についていけない小規模な店舗には閉鎖に追い込まれるところも少なからずありました。経済の自由化を推進すると、競争力のある企業や個人の収益はますます増え、競争力のない企業や個人の収益が減少するという傾向がありますから、政府は競争から零れ落ちた企業や個人に対する雇用保険や企業再生などのセーフティ・ネットを十分にはりめぐらして仕事や就職の再チャレンジを支援する必要があるでしょう。

市場の自由化を推進する規制緩和には、消費者の利益を促進する良い面もありますが、過剰競争によって企業利益が一時的に縮小したり、競争についていけない個人や企業の経済的安定を困難にするという余り良くない面があります。その自由経済の良くない面が表面化してくることを、小泉政権を長きにわたって『構造改革に伴う痛み』と呼んできましたが、痛みに応じた利得を得られた人とそうでない人との格差が拡大しているという問題の指摘もあります。

構造改革については、規制産業の開放という面だけではなく、企業経営におけるコーポレート・ガバナンスの変革といった面もあり、それまで日本企業では余り取り入れられてこなかった時価会計主義ROE(株主資本利益率)重視の経営会社の経営と所有の分離などが言われるようになりました。

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日本の大まかな産業構造の変化

日本経済の産業構造は、『戦前の繊維産業など軽工業』から『戦後の鉄鋼・造船・機械など重化学工業』へとシフトし、高度経済成長が終わる時期までの日本経済を重化学工業が支えました。しかし、1973年の第一次オイルショックあたりから、日本の重化学工業部門のコストが非常に高くなり、人件費のコスト削減のためにその生産拠点を中国や東南アジアの外国に移転しました。

日本経済は、1970年代後半くらいから重化学工業や製造業といった「ハードの部門」からサービス業や情報集約産業といった「ソフトの部門」へとその産業構造を転換しましたが、その流れはその後もますます加速し、現在では、日本の従業員数とGDPに占める比率でも「第三次産業(サービス産業・情報技術産業)」が大部分を占めています。

小泉政権になってからは、「金融制度改革・行財政改革・規制緩和の推進」という構造改革が経済政策で推し進められ、金融・産業・行政の分野における自由化が進んでいます。その市場経済の自由化を後押しするような形で、ビジネスを効率化・スピード化するIT革命が同時に遂行されました。

情報化社会と呼ばれるようになった現代では、誰でも簡単に情報の受発信を行えるインターネットの普及と企業と消費者(Business to Consumer)、企業と企業(B to B)をつなぐe-コマース(電子商取引)の発展によって、産業構造に革新的なパラダイム・シフト(経済的な枠組みの転換)が起きました。つまり、それまで必要だった複雑な流通経路を介さずに最小限のコストで、直接、自社で取引先や顧客を探して、即座に契約を成立させられるようなインターネットのシステムが構築され始めたという事を意味します。

また、e-コマースの典型的な成功事例であるAmazonに見られるように、インターネットのバーチャル・ショップは『店舗面積の制約がないので、膨大なアイテムを取り揃えて、多種多様な顧客の趣味や要求に応えられるというメリット』を持っていて、実際の店舗では人気薄な商品でもとりあえず陳列することができます。そういったマイナーな商品を求めてくる顧客も、全国では無視できない数に上るので、小さなリスクで大きな利益を得ることがインターネットでは可能なケースが多くあります。一つ一つの商品の需要は小さくても、膨大な商品の種類を揃えることで、その売上総額は相当に大きなものになることがあり、これをWEBのビジネスでは『ロングテール(売上曲線に見られる人気薄商品の延々と続く長い尾)』現象と呼んだりしています。

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