株式ニュースを理解するための基本的な株式用語
株の具体的な売買方法
株を実際に売買するためには、日々の株式・経済ニュースを理解できる程度の基礎知識が必要ですが、具体的な株価の上げ下げに関連する用語としては『四本値(よんほんね=始値・終値・高値・安値)』を知っておくと良いでしょう。株式ニュースに頻繁に出てくる株式用語はそれほど多くないので、まずは以下のような基本的な用語を覚えておくと良いと思います。最初はテレビや新聞の株式ニュースを耳にして、株価がどのように動いているのかを大まかにイメージできれば十分ですが、更に安全で効果的な株取引をするためにはファンダメンタルズ分析やテクニカル分析の知識・経験が必要になってきます。
株式市場には『急速な暴落・暴騰のリスク』を抑制するために『値幅制限(ねはばせいげん)』があるので、値幅制限の範囲内で『ストップ高・ストップ安』の値段が決まってきます。値幅制限は『株価』によって異なり、『100円未満の株で上下30円・100円以上200円未満で上下50円・200円以上500円未満で上下80円・1000円以上1500円未満で上下200円・1500円以上2000円未満で上下300円……5000万円以上で上下1000万』というようになっています。
株式会社には『発行済み株式数』による区分があり、『大型株・中型株・小型株』に分類することが出来ます。『大型株』は発行済み株式数が2億株以上の株であり、『中型株』は6000万株以上2億株未満の株、『小型株』は6000万株未満の株のことですが、一般的に発行済み株式数の多い企業ほど資本規模の大きい大企業になっています。
企業の規模が大きく株主数が多い株が『大型株』ですが、大型株は流動性(発行済み株式数)が大きいので株価の変動が小さい傾向があります。反対に、企業の規模が小さく株主数が少ない株が『小型株』であり、小型株は流動性が小さいので株価の値動きが大きくなります。一般的には、安定経営が為されている大企業の大型株は、長期投資(長期保有)に適した貯蓄性向の高い株(ローリスク・ローリターンの株)であり、新興企業などが多い小型株は、短期投資やデイトレードに適した投機性向の高い株(ハイリスク・ハイリターンの株)であると言われます。
しかし、大型株・中型株・小型株の区別に関わらず、株式市場での株価は市場で実際に売り買いされている『浮動株の量(流動性)』に大きく左右されますから、浮動株が多くて活発に売買されている銘柄ほど値動きが激しくなります。短期的にキャピタルゲイン(株価売却益)によるリターン(利益)を得たい場合には、大型株よりも中型株・小型株のほうが適していますが、大きな投資金額を長期的に投資したい場合には大型株のほうが向いている部分があります。
とはいえ、実際に投資する場合には、大型株であるか中型株・小型株であるかよりも、その企業の財務諸表や業績予測、商品・サービス情報、マクロな経済要因のほうが重要であることは言うまでもありません。株式の分類方法としては、株価水準(株価の値段)によって分ける『値がさ株・中位株・低位株』という分け方もありますが、株価が何円の株が値がさ株なのかという具体的な基準があるわけではなく、一般的には単位株数が大きく一株当たりの株価が数千円以上の株を指して『値がさ株(値嵩株)』と呼んでいます。成熟産業である鉄鋼・造船・化学などには低位株と中位株が多い傾向があり、成長力が高い新興ベンチャー企業や急速な値動きを見せているハイテク企業(IT系・バイオテクノロジー系)に値がさ株が多い傾向があります。
一定のリスクがある株式投資は自己責任で行わなければならないので、『自分(家計)のリスク許容度』を考えて『損失を出しても大丈夫な余剰資金』で行う必要があります。日常生活を継続するために必要な『生活費』や、子どもの生活費や住宅ローンのための備えなど『将来必要になる資金』を株式投資に回すことはリスクが高すぎますので、それらを除いた余剰資金の範囲内で『リスク資産への分散投資』を行うことが賢明であると言えます。個人(家計)で出来るリスクヘッジ(リスク回避)としては、複数の銘柄・業種・金融商品に投資する『分散投資』だけではなくて、事前に利益と損失の『確定ライン』を決めて積極的に『利益確定・損切り』を行う回避策があります。
株式投資をスタートさせるには、まず証券会社(銀行の仲介)で『証券口座』を開設する必要があります。株式の実際の売買はすべてこの証券口座を介して行われますが、証券口座には2003年から『一般口座』と『特定口座』の二種類が出来ました。一般口座とは、『株取引の損益計算』をして『株式の譲渡・配当所得の確定申告』を自分でしなければならない口座のことであり、節税の自由度などのメリットがあることもありますが、一般的な個人投資家の場合には一般口座よりも特定口座を選んだほうが便利です。
『特定口座』とは、損益計算が面倒な確定申告を簡略化した口座の制度であり、特定口座を選ぶと証券会社が損益計算額や源泉徴収額が記載された『年間取引報告書』を自宅に送付してくれます。この『年間取引報告書』があれば確定申告の記載を簡単に行うことができ、株式売買によって得た利益・損失をそのまま証明することが出来ます。
また、確定申告に行くのが面倒だという投資家の場合には、特定口座で『源泉徴収あり』を選択すれば、証券会社が株式売買で利益が出るたびに源泉徴収して納税してくれるので、自分で確定申告をしなくても良くなります。確定申告に一切の手間と時間を掛けたくないという人は、『特定口座で源泉徴収あり』を選ぶことが最善だと言えますが、一年間の株式取引で得た利益が『20万円以下(無職者・デイトレード専従者であれば38万円以下)』である場合には、本来払わなくて良かった税金を自動的に源泉徴収で払ってしまうという損失が生まれてきます。証券会社が作成してくれる年間取引報告書があれば、確定申告はそこに書かれた『株取引による利益額(年間の利益額)』を書き込むだけで簡単ですので、プロバイダ料金などの経費を正しく計上したいという投資家の場合には『特定口座で源泉徴収なし』を選んでも良いと思います。
証券会社を通して株式を売買する方法には大きく分けて『ネット取引』と『窓口取引』がありますが、パソコンや携帯電話でインターネットにアクセスできる環境が整っているのであれば、いつでも手軽に取引できて売買委託手数料も安い『ネット取引(ネット証券)』のほうがお薦めです。ただ、電話や窓口で売買注文を出す『窓口取引』にも、証券会社の担当者から専門的な投資のアドバイスを受けられるなどのメリットもあり、頻繁に株を売買せずに長期保有するような人であれば窓口取引でもそれほど不便はないかもしれません。
反対に、毎日株を売買するデイトレードなどはネット取引が適しており、ネット証券には『口座管理料』が無料で『売買委託手数料』が割安というメリットがあります。証券会社(ネット証券)や注文方法によって売買委託手数料の金額は異なりますので、複数の証券会社の手数料を調べてみて、自分が納得できる料金体系を持っている証券会社に証券口座を開きましょう。大体、一回の株取引で1000円前後の手数料を取るというネット証券が多いようですが、2000円~3000円程度の価格帯で一日で何度でも取引できる『定額制』を採用しているネット証券もあります。
開設した証券口座(MRF)に、資金を入金すれば『株式売買』が可能な状態となり、『注文・取引成立(約定)・受け渡し(決済)』によって株式の売買代金決済が完了します。注意すべき点としては、株を売却してもその場ですぐに『現金』が証券口座に振り込まれるわけではなく、『4営業日後』に振り込まれるということです。営業日が連続していれば最短で三日後に現金が振り込まれますが、休日(土・日・祝祭日)を2日挟んでいる場合には最長で五日後に現金が振り込まれます。
株の売買注文の成立には、『価格優先の原則・時間優先の原則』という二つの原則があり、価格優先の原則では、売る時には最も安い値段が優先され、買う時には最も高い値段が優先されます。売買注文の金額が同じ時には、早い時間に注文を出したほうが優先されますが、これを時間優先の原則といいます。売り注文と買い注文の条件(値段)が上手く一致すれば株式売買が成立(約定)しますが、その売り手と買い手が同意した値段を『約定値段(やくじょうねだん)』といいます。株式売買の注文方法には大きく分けて、『指値注文(さしねちゅうもん)』と『成行注文(なりゆきちゅうもん)』がありますが、銘柄と株数だけを決めて売値・買値を指定しない成行注文のほうが売買が成立する可能性が高くなります。
反対に、銘柄・株数・売値・買値をあらかじめ指定して注文する指値注文の場合には、うまく条件が一致すれば自分の希望通りの条件で株を売買できるという明確なメリットがあります。一般的に、ネット証券で株取引をする場合には、『銘柄・株数』を指定して注文が出されますが、その時に『指値注文・成行注文』を選択することが出来ます。株取引のリスクヘッジに、損失額を確定して株が『塩漬け(保有しているだけで売るに売れない状態)』になることを防ぐ『損切り(そんきり)』がありますが、投資家の中には『もしかしたら、また元の株価まで上がるかもしれない』ということでなかなか損切りが出来ない人もいます。
しかし、必要に応じて『損切り』をしないと株を売るに売れない塩漬け状態に陥るので、資金効率が低下して『機会損失(他の株や金融商品を買う可能性を失うリスク)』が大きくなってしまいます。特に、積極的に資金効率を高めて小さな利益を積み重ねていくデイトレードのような短期投資手法では、いかに素早く損切りをすることができるか、次の利益の出そうな投資対象に資金を回せるかが重要になってきます。思い切った損切りをして損失の被害を最小限に抑え、次の投資機会を確実に掴むためには、『○%以上の株価下落で損切りをする・株価が何円まで落ち込んだら損切りをする』というように機械的に従う自分なりのルールを前もって決めておくことが重要になります。最近では、機械的に利益確定と損切りを行うために、『指定の値段以上で買う・指定の値段以下で売る』という『逆指値(ぎゃくさしね)』という注文方法もあり、逆指値を使えば利益と損失を半ば自動的にコントロールすることが可能になります。
株価下落時のリスクヘッジ手法として『ナンピン買い』というものがありますが、ナンピン買いというのは『保有している銘柄の株価』が下がった時に、更にその株を買い増しして『平均購入単価の引き下げ』を行う手法です。1000円の株を10株買った場合には10000円の代金が必要ですが、この株が500円まで下落すると株の評価額は5000円となり、5000円の損失が生じます。普通であれば、ここで更にこの株を買い増しすることは危険に思えますが、ここで更に500円になったこの銘柄を10株買い増しすると、『10000円+5000円=15000円(20株)』の購入資金を使ったことになります。しかし、株価が大きく値下がりしているので、一株当たりの単価は『15000円÷20株=750円』へと大きく下がっています。ナンピン買いをすれば、次に株価が750円以上のラインまで戻ってくれば、売却して利益を出すことが可能になりますが、初めの状態だと株価が1000円以上になるまで元手を取り返すことが出来ません。
しかし、株価が500円よりも更に低いラインへと下落していった時には、保有している株式の『含み損』が非常に大きくなるハイリスクな手法でもあります。反対に、株価が1200円まで急騰するようなことがあれば『1200円×20株=24000円』となり、投資に費やした15000円から9000円の利益を引き出せることになるので、株価が反転して上昇するという見込みが十分にあるのであれば、『ナンピン買い』は有効な投資判断ということになります。とはいうものの、『下手なナンピン怪我のもと』という格言があるほどで、投資を始めたばかりの初心者や資金に余裕のない投資家、長期的に株価の回復を持てない短期投資家にはお薦めできない手法です。
自分の手持ちの資金で株を売買することを『現物取引』といいますが、証券会社に委託保証金を入れて投資資金を借りながら株を売買することを『信用取引』といいます。信用取引は、自分の手持ち資金以上のお金を動かして大きなキャピタルゲイン(株価売却益)を狙える手法であり、『株価の下落局面』で証券会社から株を借りて利益を出せる『空売り(信用売り)』が出来るというメリットもあります。しかし、株価下落による損失幅が非常に大きくなり、委託保証金で損失を補填できなければ、更に『追い証(おいしょう)』という保証金を積み立てなければなりません。信用取引は株価変動に大きな影響を受けるハイリスク・ハイリターンな投資手法ですので、初心者や手持ち資金以上の損失を出したくない人は、信用取引をすることは控えたほうが良いでしょう。