所得税は、納税者が自身の所得(収入-経費)から直接税金を納める『直接税』であり、直接税というのは、納税者の所得水準や各種事情(控除項目・扶養家族)を考慮して納税額が決定されるところに特徴があります。日本の直接税としての所得税は、国民全員が同じ税率で税金を支払う『比例的な課税』ではなく所得が大きい人ほど高い税率の税金を支払う『累進的な課税』が制度的に実施されています。日本の累進課税率は以下のようになっています。
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
330万円以下 | 10% | 0円 |
330万円超から900万円以下 | 20% | 33万円 |
900万円超から1,800万円以下 | 30% | 123万円 |
1,800万円超 | 37% | 249万円 |
例えば、1月1日から12月31日までの年収(所得)が400万円の個人であれば『400万×0.2-33万=47万円』となり、実際には各種の控除を引かれるのでもっと安くなりますが、控除がなければ47万円の所得税を課されることになります。所得金額を申請する確定申告の受付時期は、所得を得た翌年の2月16日から3月15日となっています。給与から天引きされて所得税を源泉徴収されているサラリーマン(会社員・公務員)は、原則として自分で確定申告をする必要はなく年末調整によって納税事務が完了したと見なされます。
アフィリエイトや内職など副収入の納税義務に関しては、給与所得者であれば『20万円以上の年間所得(収入-経費)』で納税義務が発生し、無職者であれば『38万円以上の年間所得』で納税義務が発生します。定期的な収入が見込めず、一時的に課税最低限度額を超えた場合にも『雑所得』で確定申告する必要があります。税金の確定申告をしなかったり納税義務が有ることに気づかなかった場合には『無申告加算税』という高い税率のペナルティを受けますが、期限後であっても自主的に速やかに申告すれば加算税率が15%から5%に下がります。所得を実際より少なく申告した場合には『過少申告加算税(10%・15%)』、隠蔽工作や粉飾決算など悪質な意図を持って所得税を免れようとした場合には『重加算税(35%・40%)』が課されます。
なお、平成19年分の所得に課税される所得税は、以下のように累進課税率が変更され、課税される最低水準の分類がより細かくなり(195万円以下と330万円以下の区分)、1,800万円以上の高額所得者の税率が37%から40%に引き上げられ、控除額が249万円から279万6千円になります。
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超から330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超から695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超から900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超から1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 | 40% | 2,796,000円 |
所得税には、全ての所得を合計した上で課税する『総合課税』と個別の所得を特別な税率で課税する『分離課税』がありますが、一般的な仕事(事業)をして得た給与所得(事業所得)は『総合課税』によって税金を科されます。所得税(総合課税)の課税対象となる所得項目には、『給与所得・事業所得・不動産所得・配当所得・雑所得・一時所得・譲渡所得』などがあります。分離課税で課税される所得項目には、『利子所得・山林所得・退職所得・株式等の証券取引による所得・不動産や株式の譲渡所得』などがあります。
所得税は、『収入-経費』の所得に科されるものですが、所得税を計算する際には『損益通算』といって、『不動産所得・山林所得・事業所得・譲渡所得で生まれた赤字分』を所得から引くことができます。故に、損益通算をして総合所得が赤字でマイナスになれば(赤字経営をしている個人事業主など)、生活(家計)そのものを維持できない危険がありますが、所得税は課されないということになります。各所得の合計金額を損益通算した金額が、所得税の対象となる『総所得金額』になります。
所得税の基本的な計算方法としては、『(総所得金額-所得控除金額)×所得に応じた税率-税額控除(上記表参照)』となります。『所得控除』というのは課税される総所得金額から引いて、所得税の対象となる金額を安くできる項目であり、所得控除を引いたものを『課税総所得金額』といいます。実際の所得税(税率)は、この課税総所得金額に対してかけられ、そこから税額控除や定率減税(廃止)が引かれるわけです。
所得控除は全部で15種類あり、『雑損控除・医療費控除・社会保険料・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・損害保険料控除・寄付金控除・障害者控除・老年者控除・寡婦(寡夫)控除・勤労学生控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・基礎控除』という控除項目があります。家族を持っている一般の個人事業主などが利用する可能性の高い控除項目としては、『基礎控除・配偶者控除・扶養控除・社会保険料・生命保険料控除・損害保険料控除』などがあります。