マオリの神話:天空神ランギ・大地母神パパ

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マオリ神話における天地創造:天空神ランギと大地母神パパ

オーストラリアの先住民が『アボリジニー族』で、ニュージーランドの先住民は『マオリ族』であることはよく知られている。しかし、マオリ族がニュージーランドに定住するようになってからの歴史は浅く、マオリ族が東ポリネシアのソサエテ諸島のタヒチやクック諸島、マルケサス諸島からニュージーランドに移住してきたのは11世紀頃の話である。

ポリネシアの島々の中でも、ニュージーランドにマオリ族が住むようになった時期は最も遅く、マオリ族の神話物語が作られた時期も11世紀前後だと推測されている。神話で説かれている原初の世界は『混沌と無の世界』であり、暗闇の中でのポーといううめき声に合わせて世界の動きが起こり、そこから光・熱・湿気が生み出され、世界最初の二神である天空神ランギと大地母神パパが出現したのである。

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天空神ランギと大地母神パパは、その他の神々や天地の間にある万物を創造したが、二人があまりに親密で仲良くしっかりと固く抱き合っていたため、天と地が近づきすぎて光が届かずずっと暗闇に覆われたままであった。二人が生み出した子供の神々、タネやタンガロア、ロンゴらは、世界に光と昼を取り戻すためには、親である二人を引き離すか殺すかしかないと考え、森の神タネの『天空を遥か上にして、大地を足元に置くため、二人を無理やりにでも引き離そう』という提案に賛成した。唯一、嵐と風の神であるタウヒリだけが、父母を引き離すことに反対していた。

密着してがっちりと抱き合っている天空神ランギと大地母神パパを引き離すことは簡単ではなかったが、森の神タネが頭を母の大地に押し付けて、足で父の天空を激しく蹴り上げることによって何とか二人を引き離した。父母は引き離された悲しみを訴えて泣いたが、二人が引き離されたことで、暗闇の世界に光が差して昼の時間が回復されたのである。母パパの嘆きの溜息は霧となって天空(夫)へと上がり、父ランギの涙は大雨になって大地(妻)に降り注いだのである。

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森の神タネの妻探しと女性の創造・夜明けの女神ヒネ・ティタマ

森の神タネは妻(嫁)を探していて、母親の大地母神パパに良い女性はいないかと相談してみるが、パパはつれない態度で拒絶してきた。タネは自力でいろいろなタイプの女性を探し出して子供を作ってみたが、生まれてくる子供は草・石・山・爬虫類などでまともな神の子供には全く恵まれなかった。

森の神タネは自分にふさわしい良い子供に恵まれる女性が欲しいと思い、精霊のいる祖先の故郷の土地であるハワイキに赴いて、その浜辺の赤土で女性を創造して生命の息吹を吹き込んだのである。赤土で創られた女性はヒネ・ハウ・オネと名付けられ、タネはこのヒネ・ハウ・オネと結婚して妊娠させ、娘である『夜明けの女神』ヒネ・ティタマが生まれることとなった。

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森の神タネは更に、自分の娘であるヒネ・ティタマも妻にしてしまった。自分の夫が父親でもあることを知ったヒネ・ティタマは激しいショックを受けて羞恥心に襲われ、地下にある闇の世界ポーへと逃げていってしまった。父親であり夫でもある森の神タネがポーにまで追いかけてきたが、ヒネ・ティタマはタネの説得には応じず『私はこの世界での絆を断ち切って闇の世界へ行き、子孫もまた冥界へ連れていきます』と宣言し、この時から『死』が始まることになったのだという。

ヒネ・ティタマは『夜明けの女神』であるだけではなく『暗黒の女神・死の女神』としての顔も持っており、その後に女神ヒナという名前で呼ばれるようになり、多くの地域で女神ヒナが崇拝されるようになっていった。女神ヒナはタヒチでは航海神ルーの姉妹になっていて、兄のルーと一緒に航海に出た時に立ち寄った島で、パンの樹木からタパ(樹皮布)を作ったので『タパ打ちの神』になったのだともいう。

女神ヒナはカヌーで満月にまで漕いで行って、その月がいたく気に入って月に留まるようになった『月の女神』でもあり、月の上でタパ打ちをしながら『世界の監視者・航海者の守り神』としての役割を果たしてもいるのである。

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