このウェブページでは、『インターネットのコミュニケーション(ウェブ・コミュニケーション)』の用語解説をしています。
インターネットのコミュニケーションであるCMC(Computer Mediated Communication)の特徴
インターネットのコミュニケーションを説明する理論群
インターネットが普及してウェブサービスが進化したことによって、人間のコミュニケーションは『量的・質的に不可逆的な変化』を受けることになった。
インターネットを介したコミュニケーションは『テキストベース(文字ベース)のコミュニケーション』と『音声・映像を伴うコミュニケーション』とに大きく分けられるが、現在においてもインターネットのコミュニケーション(ウェブコミュニケーション)の中心は、前者の『テキストベース(文字ベース)のコミュニケーション』である。
『テキストベース(文字ベース)のコミュニケーション』と『音声・映像を伴うコミュニケーション』の代表的な方法やウェブサービスを挙げると以下のようになる。
テキストベース(文字ベース)のコミュニケーション……電子メール,各種SNS(SNSの要素を持つスマホアプリ),チャット,掲示板,ブログのコメント欄,ソーシャルブックマーク(SBM)など。
音声・映像を伴うコミュニケーション……Skype,YouTube,IP電話,Ustreamなど。
コンピューターを介したコミュニケーションのことを『CMC(Computer Mediated Communication)』と呼んでいるが、CMCはパソコンやスマートフォン、フューチャーフォン(ガラケー)を用いるインターネットのコミュニケーション(ウェブコミュニケーション)のことでもある。
インターネットのコミュニケーションであるCMCに対して、ウェブ社会以前の個人と個人が実際に顔を合わせて直接的にコミュニケーションする形態を『FtF(face to face,フェイス・トゥー・フェイス)』の対面コミュニケーションと言う。
FtF(face to face)の相手の顔や身体が見える直接的なコミュニケーションにはない、CMC(Computer Mediated Communication)の特徴としては以下のような点が上げられている。
表面的な匿名性……インターネットでは実名を用いずに匿名(HN・ハンドルネーム)でやり取りすることが多く、匿名であるが故のメリット(自由な発言・多様な出会い)とデメリット(無責任で攻撃的な発言・犯罪的行為への悪用)が生じやすい。しかし、インターネットの匿名性は表面的なものであり、ISP(プロバイダー)や携帯電話キャリアの協力を得られれば、IPアドレスによって『実名の個人』を特定することが概ね可能である。
フレーミング(flaming)……感情的に興奮したやり取り,誹謗中傷や脅迫・威圧を含む攻撃的なやり取りが起こりやすい。
利他的な無償のコミュニケーション……フレーミングとは逆にインターネットでは『見知らぬ他人』に対して、現実社会以上に共感・同情・応援・慰撫する発言が起こりやすい。『匿名掲示板(Q&Aサイト)』では何の利益が得られないにも関わらず(対人的な承認欲求・自己顕示欲求・知識開陳の欲求などはあるにしても)、『長文の有益なアドバイス・情報提供』などが無数に行われていて、中には専門家の知識に相応するような内容の助言もある。
発言者の立場のフラット化・平等性……インターネットでは『現実社会の地位・権威・立場』などが通用しない場が多く、『誰が発言したか』より『何を発言したか』が重視されやすい。近年は顕名性(固定URI)のSNSやTwitterが普及したために、『フォロワーやフレンドの多いユーザーの発言の影響力』は格段に高まっているが、それでも現実社会のように地位や肩書きだけで『権威者のほうが正しい』とする同調圧力がかかることはまずなく、基本的には誰が誰に対して話しかけても良い(匿名者・非著名人の発言に返信があるかは分からないが)。
サイバーカスケード(cybercascade)……インターネットでは『政治・思想・マナー違反・宗教』などの意見対立において、どちらか一方の極に偏ったコメントが殺到しやすい傾向があり、滝が流れ落ちるような激しい勢いで『極端で攻撃的な意見・主張』が集まってくるが、これをサイバーカスケードという。サイバーカスケードは『意見の集団極性化(group polarization)』という概念で説明されることもある。
インターネットのコミュニケーションであるCMC(Computer Mediated Communication)の特徴を、『メディア(媒体)の持つ物理的・機能的な要因』に求める理論には以下のようなものがある。
1.メディア特性論
2.技術決定論
メディア特性論は、『視覚情報の手がかりの少なさ(FtFの対面コミュニケーションと比べた時の伝達不可能な情報の多さ)』というインターネットのメディア特性が、CMCのコミュニケーションに影響を与えているという理論である。視覚情報の乏しさは、相手が本当にそこに存在しているという感覚である『社会的存在感(social presence)』を低下させる。
インターネットのコミュニケーションでは、相互的な非言語的コミュニケーション(表情・態度・動作の確認)ができなかったり社会的手がかりがないことによって、『対人配慮(対人的な距離感)の不足』や『自分の発言に対する責任感の低下』を招いてしまう。対人配慮が低くなっていて、自分の発言に対する責任感も弱まっている状況では、『フレーミング(感情的な攻撃・暴言・中傷)』などが起こりやすくなるのである。
技術決定論は、インターネットの技術やウェブサービスのUI・機能性などによって、人間の対人コミュニケーションの可能性と限界が決定されるという理論である。インターネットではキーボードやタッチパネル、ボタンなどで文字を打ち込んで他者と会話するという『テキストベース(文字ベース)のコミュニケーション』が主流であるが、これもインターネットやパソコン・スマホの技術的性格によって規定されている枠組みである。
スマホが開発されて普及したことによって、かつてよりも『SNS(LINE)・テレビ電話(IP電話)を通したコミュニケーション』が簡単になって活発化してきたが、技術決定論は今までなかった情報デバイス(情報端末)や新規アプリが開発されて登場・普及することによって、人間のコミュニケーションも不可逆的な影響を受けるという考え方でもある。
インターネットのコミュニケーションであるCMC(Computer Mediated Communication)の特徴を、『コミュニケーションをするメンバー・社会的な場の状況や性格などの社会的要因』に求める理論には以下のようなものがある。
1.社会的文脈論
2.社会構成論(社会構成主義)
社会的文脈論では、インターネット世界あるいはウェブ社会において、持続的なコミュニケーションが展開される中で、参加しているメンバー(固有名のHN)それぞれに社会的アイデンティティーが形成されていき、その社会的アイデンティティの性質・一貫性に対応したやり取りが行われるようになるというものである。
実名制のfacebookなどでは社会的文脈論に該当するコミュニケーションが多くなってくるが、顕名性(HN)のmixiやTwitterなどでも参加しているメンバーそれぞれの社会的アイデンティティーが確立してきて、『親しい人と親しくない人との間におけるコミュニケーションの質的・量的な差異』が目立ってくる傾向がある。参加メンバーの社会的アイデンティティが強化されるほど、一つの方向の偏った意見が集まる『サイバーカスケード(意見の集団極性化)』が起こりやすくなる。
社会構成論(社会構成主義)とは、複数の個人が相互作用する社会的な状況・立場・自己認識によって、自分の意見や価値観が形成されていくという考え方に立った理論のことである。ウェブ社会では『自分自身の主体的な意見・価値観』に基づいた書き込みだけが為されるわけではなく、『社会的な文脈・立場・自己認識』などによって自分の意見・価値観が構成されていくといった視点が有効なシチュエーションは多いのである。
インターネットのコミュニケーションでは、『社会的文脈・関係性』によって社会構成主義的なメカニズムでコミュニケーションの性格や方向性が規定されていったり、メディアの持つ特性(限界・可能性)によってコミュニケーションの形態や内容が影響を受けやすくなっている。
ウェブにおける対人関係のはじまりの初期においては、『相手に対する視覚情報・非言語的情報の手がかりの少なさ(cuelessness)』から対人配慮が不足したり、意見の対立に対して不寛容・攻撃的になりやすくなる。また、『社会的情報処理モデル』では人間関係の進展や密度が深まれば、より社会的文脈・社会的アイデンティティーの影響が現れやすくなると考えられている。
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