[Identified Patient][IPRトレーニング(InterPersonal Relationship Training)],[一次過程(primary process)・二次過程(secondary process)・一次変化(first-order change)]

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Identified Patient・IPRトレーニング(InterPersonal Relationship Training)


一次過程(primary process)・二次過程(secondary process)・一次変化(first-order change)

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Identified Patient・IPRトレーニング(InterPersonal Relationship Training)

Identified Patient(アイデンティファイド・ペイシエント)

アイデンティファイド・ペイシエントとは、家族療法や家族システム論において用いられる概念で、『患者とみなされた者・不適応の指標となる者』といった意味である。

基本的に、家族療法では、家族の訴えで問題があるとみなされているクライアントのみが、病的であるとか異常であるとは考えない。家族は、相互に作用し合う家族成員から構成される機能的で統合的なシステムであるから、家族の一人に問題行動や精神症状が起こった場合にも、彼(彼女)一人に問題や原因があるわけではないことが多い。

家族システム論を前提とした家族療法を行う場合には、不登校や家庭内暴力、児童虐待、嗜癖(依存症)、抑うつ感などの不適応行動や精神症状の原因を抱えた人をとりあえず患者(来談者)と見なして『アイデンティファイド・ペイシエント』と呼ぶのである。

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そして、家族構成や家庭の生活状況、家族成員それぞれの性格や行動の特徴、家族成員の社会的属性と家庭内での役割などを綿密に聴取しながら、個人に様々な問題が起きている原因を家族全体のシステム的な原因として捉えていく。家族のメンバーに起こってくる心理的問題や暴力、依存症、摂食障害、ひきこもり、不登校などの症状には、多くの場合、家族相互の人間関係や感情的葛藤が関与している。

つまり、IP(患者とみなされた者)だけに問題や悩みがあるわけではなく、家族の行動、発言、振る舞いに対する反応としてその症状や問題行動が維持されているという見方を家族療法は取るのである。

家族のメンバーに何らかの心理的問題や行動の異常が現れた場合には、その人だけを治療したりカウンセリングしても十分な効果を得ることが難しい。家族は相互作用して機能するシステムであるから、IPに相互的な影響を与える家族一人一人が自分自身の行動や性格を振り返り、IPの問題を解決していく方向へと自分自身の行動や考え方を変容させていかなければならない。

家族のIPに対する対応が適応的に変容すれば、本人も良い方向に変化するし、本人が回復してくれば、家族のシステムも正常に機能し始めるのである。

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IPRトレーニング(InterPersonal Relationship Training)

1970年に早坂泰次郎が考案した、ST(感受性訓練)の一種で集団療法的な側面を持つものである。

個人対個人の人間関係の軋轢の原因を探り、個人対集団組織の適応的な問題の本質を探る為に利用され、擬似体験的な対人関係状況を通して問題の原因を吟味していく事となる。

IPRトレーニングの実施形態としては、基本的な合宿形式の基礎トレーニング(4泊5日)と、その数ヵ月後に行われるフォローアップのための1泊2日のトレーニングがある。

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一次過程(primary process)・二次過程(secondary process)・一次変化(first-order change)

一次過程(primary process)・二次過程(secondary process)

シグムンド・フロイトが創始した精神分析学では、男根期(4~6歳頃)に至る発達早期の心的過程を『一次過程(primary process)』と呼んで、一次過程は快楽を志向して不快を回避する快楽原則に基づくとした。

生まれたばかりの新生児や母親との一体感が強く自他未分離な乳幼児は、「幻想的な全能感」「幼児的な万能感」「魔術的思考」という独自の精神活動を行っていて、快楽原則以外の方法で自己の欲求や願望を満たすことが難しい。母子の共生段階にある発達早期では、即時的に快楽を満たして苦痛を避けようとする『一次過程』によって子どもの行動は説明できる。

一次過程は、青年期の人間や成年の社会人にも見られる心的過程であり、親密な甘えられる相手と一緒の時や感情的になって適切な判断が下せない時に、一次過程を踏んだ行動が起きやすくなる。

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一次過程に続く『二次過程(secondary process)』は、母親(養育者)との分離個体化によって生まれる『自我意識』が実現する心的過程で、エスの本能的衝動の充足を現実的に延期することが出来る精神機能を含んだものである。

また、二次過程は、エディプス・コンプレックスの去勢体験(幼児的万能感の挫折)で形成される『超自我(善悪を分別する規範意識・倫理観)』によって起こる心的過程である。人間は善悪を分別する超自我の機能によって、その状況に相応しい行動とそうでない行動を判断し社会的な責任ある行為を出来るようになる。

一次過程は快楽原則に従うエス(動物的本能・本能的欲求)を中心とした内面の過程であり、二次過程は現実原則に従う自我と超自我を中心とした内面の過程である。

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(家族システム論の)一次変化(first-order change)

ベルタランフィ『一般システム理論』を踏まえた家族療法では、家族システムの正常性を維持する為の『一次変化=自己制御性』と新たな適応的システムを再構築する為の『二次変化=自己組織化』を考えてカウンセリングを行っていく。

家族療法には複数の学派や技法があるが、家族システム理論に基づいて、家族構成員の相互的関係を改善していくカウンセリング技法という認識が一般的である。『家族』を、全体性を持った相互作用し合うシステムと見なして、家族の一人一人を「システムの要素」と捉え、家族間でどのようなコミュニケーションが行われているのかを観察する。

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家族間の相互的なコミュニケーションが、それぞれの成員にどのような作用を与えているかを考え、問題を持続させている悪循環を断ち切るような介入をしていくことになる。家族の発言や行動、無関心はその人一人の問題ではなく、他の家族成員への刺激となって新たな反応を生み出すことになる。

家族システム論でいう一次変化とは、家族の構成員に今まで見られなかった問題や異常が起こった時に発生する変化で『問題・異常・変化をとりあえず元に戻そうとする家族の働きかけ』のことである。

家族の心理的・行動的・社会的な問題を可逆的なものと考えている段階での変化であり、ひきこもりの子どもを外に出るように説得しようとしたり、アルコール依存症の父親に注意を促したりする行動を指す。一次変化で、問題が解決に向かいそうにないことが明らかになれば、家族システムそのものを新しいシステムに変更する二次変化が必要となってくる。

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