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医学心理学(medical psychology)
『医学心理学(medical psychology)』とは応用心理学の一分野であり、臨床・病理・生理・解剖など医学領域の知見と異常心理・心理アセスメント・心理治療(カウンセリングや心理療法)など心理学領域の知見を総合することを目的とした学際的分野である。
体型気質理論で著名なエルンスト・クレッチマーが構想した医学心理学は、臨床医学分野において、診断・治療に役立つ人間理解と心理研究を深めることを目標としていた。例えば、医学心理学では、心因性の身体疾患(心身相関の心身症)に対する適切な心理査定を行い精神療法を実施しようとしたが、現在では臨床心理学がその役割を担うようになってきている。
また、精神機能(精神病理)を『中枢神経系の情報伝達機能』に還元しようとする脳神経科学の周辺領域が急速に発展したことを受けて、医学的な心理理解は『脳の構造と機能の相関の理解』に移行している。
脳科学の進歩と普及を踏まえると、クレッチマーの時代に存在した古典的な医学心理学は、現在では神経生理学・生理心理学・神経心理学などにその役割を移譲していて、「思弁的な心的器官」ではなく「観察可能な身体器官」を基にした新しい形の医学的な心理学が構想されている。
19世紀から20世紀に至る医学心理学では、内省を用いて心理機能を解剖することで、心的器官(エス・自我・超自我など)の仮説を形成していったが、現在の医学領域では内省的な概念や内観的な仮説はあまり省みられることがなくなっている。
エルンスト・クレッチマーは、精神機能の解剖生理を研究し心的器官を仮定して、その発達史的構成や体質・気質・性格・欲動などの発達分化を考えたが、こういった医学心理学の知見は、心身症やストレス疾患に対する心理学的対処で応用することが可能である。
広義の医学心理学は、心身医学の分野と深い関係があると考えられ、身体疾患に対する情緒的反応への対処、致命的疾患による死の恐怖の緩和と死の受容過程、心身症の疼痛緩和(催眠療法の応用)、薬剤性の心因反応、医原病に対する注意喚起、病気による身体機能の喪失に対する心理的支援、心身症を予防するストレス・コーピング(ストレス対処法)の指導などの役割を期待することが出来る。
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